
空港周辺ドローン飛行の実務判断|矢野事務所
空港周辺でのドローン飛行は、航空法上の許可承認を取得すれば終わりではありません。
実務では、飛行位置と高さ制限の確認、空港事務所や空港管理者との調整、離着陸場所の管理、第三者との分離状態、補助者機能、中止条件まで整理する必要があります。
さらに、新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、大阪国際空港、関西国際空港、福岡空港、那覇空港の8空港では、小型無人機等飛行禁止法上の対象空港として、別の規制も確認しなければなりません。
問われるのは、許可があるかだけではありません。
なぜその条件で運航が成立すると判断できるのかです。
このページで分かること
空港周辺飛行で最初に押さえるべきこと
行政書士の実務として最初に整理するのは、「航空法上の許可承認」と「現地での運航成立」は別問題であるという点です。
たとえば、
- 航空法上の許可承認は取得しているが、空港側との調整が整理されていない
- 空港周辺空域には該当しないと考えていたが、実際には高さ制限や空港側確認が必要だった
- 飛行位置は整理できているが、離着陸場所の管理者確認が終わっていない
- 第三者の接近や航空機の運航状況が変化した場合の中止条件が決まっていない
といった状態では、許可があっても運航全体を説明できません。
空港周辺では、飛行位置、飛行高度、調整先、第三者状態、中止条件を一体として整理し、なぜ成立すると言えるのかを示すことが必要です。
航空法上の空港周辺空域
航空法では、空港等の周辺において、航空機の離着陸の安全を確保するための空域が設定されています。
飛行場所によっては、進入表面、転移表面、水平表面などとの関係を確認し、その場所で飛行できる高さを整理する必要があります。
空港の近くに見えるかどうかだけで判断することはできません。
飛行地点の緯度経度、飛行範囲、最高高度、離着陸地点を特定し、空港等の周辺の空域に該当するかを確認します。
境界付近や高さ制限が明確でない場合は、空港等の設置管理者や空域を管轄する機関への確認が必要になります。
また、航空法上の空港周辺空域に該当しないことだけを理由に、他の確認が不要になるわけではありません。
小型無人機等飛行禁止法、土地管理、第三者管理、空港側との運用調整は、それぞれ別に整理します。
8空港はイエローゾーンの対象
次の8空港は、小型無人機等飛行禁止法上の対象空港に指定されています。
- 新千歳空港
- 成田国際空港
- 東京国際空港
- 中部国際空港
- 大阪国際空港
- 関西国際空港
- 福岡空港
- 那覇空港
対象空港では、空港の敷地または区域の上空だけでなく、その周囲おおむね1,000メートルの対象施設周辺地域の上空も規制対象になります。
対象空港の敷地または区域は、一般にレッドゾーンと呼ばれます。
その周囲おおむね1,000メートルの対象施設周辺地域は、一般にイエローゾーンと呼ばれます。
したがって、空港敷地の外側だから小型無人機等飛行禁止法に関係しないとは判断できません。
飛行地点だけでなく、飛行経路と離着陸地点を対象区域図に重ね、レッドゾーンまたはイエローゾーンに入るかを確認する必要があります。
航空法と小型無人機等飛行禁止法は別制度
航空法上の空港周辺空域と、小型無人機等飛行禁止法上の対象施設周辺地域は、同じものではありません。
航空法上の許可承認を取得したことによって、小型無人機等飛行禁止法上の手続が完了するわけではありません。
反対に、小型無人機等飛行禁止法上の同意や通報を行っても、航空法上の高さ制限や飛行方法の条件を満たしたことにはなりません。
8空港の周辺では、少なくとも次の事項を分けて確認します。
- 航空法上の空港周辺空域への該当性
- その場所で飛行可能な高さ
- 小型無人機等飛行禁止法上の対象区域への該当性
- 空港管理者の同意の要否
- 都道府県公安委員会等への事前通報
- 海域が関係する場合の海上保安庁への通報
- 離着陸場所の管理者確認
- 第三者状態と現地の運航管理体制
どれか一つの手続を終えたことを理由に、運航全体が成立すると判断することはできません。
対象空港で飛行を検討する場合の手続
対象空港のレッドゾーンまたはイエローゾーンで飛行を検討する場合は、最初に飛行が法令上認められる例外に該当するかを確認します。
そのうえで、必要に応じて空港管理者の同意を得ます。
さらに、原則として飛行開始の48時間前までに、対象施設周辺地域を管轄する警察署を経由して、都道府県公安委員会へ通報します。
対象施設周辺地域が複数の都道府県や複数の警察署管轄にまたがる空港では、実際の飛行範囲に応じて通報先を整理する必要があります。
海域を含む対象区域で飛行する場合は、海上保安庁への通報が必要になることもあります。
ただし、空港管理者の同意や警察への通報は、航空法上の飛行許可そのものではありません。
航空法上の許可承認、空港側との調整、土地または水域の管理者確認も、それぞれ別に行います。
どこに連絡すべきか
空港周辺飛行で重要なのは、制度ごとの確認先を混同しないことです。
実務上は、主に次の関係先を整理します。
- 空港管理者・空港運営会社
- 空港事務所・航空局関係機関
- 対象区域を管轄する警察署
- 海域が関係する場合の海上保安庁
- 離着陸場所の土地・施設管理者
- 道路、河川、港湾、公園などの管理者
空港管理者と空港事務所は、同じ役割を担っているわけではありません。
また、警察への通報は、空港管理者の同意や航空法上の申請とは目的が異なります。
どこへ、何を、どの順番で説明するのかが整理されていなければ、必要な協調形成を進めることができません。
空港周辺では、単に連絡先を知ることではなく、各関係先が何を確認する立場なのかを分けて整理することが重要です。
対象8空港ごとの実務整理
対象8空港は、同じ小型無人機等飛行禁止法の対象空港であっても、対象区域、空港周辺の土地利用、警察署管轄、海域の有無、第三者の流入状況が異なります。
個別空港ごとの実務整理は、次のページをご確認ください。
- 新千歳空港周辺ドローン飛行の実務整理|矢野事務所
- 成田国際空港周辺ドローン飛行の実務整理|矢野事務所
- 東京国際空港周辺ドローン飛行の実務整理|矢野事務所
- 中部国際空港周辺ドローン飛行の実務整理|矢野事務所
- 大阪国際空港周辺ドローン飛行の実務整理|矢野事務所
- 関西国際空港周辺ドローン飛行の実務整理|矢野事務所
- 福岡空港周辺ドローン飛行の実務整理|矢野事務所
- 那覇空港周辺ドローン飛行の実務整理|矢野事務所
一覧記事だけで判断を完結させず、実際に関係する空港の個別記事まで確認することが重要です。
空港周辺で運航成立性を左右する論点
空港周辺飛行では、次のような状態になると、運航成立性の説明が難しくなります。
- 飛行位置と空港周辺空域の関係が明確でない
- 飛行可能な高さが特定されていない
- 航空法と小型無人機等飛行禁止法を混同している
- 空港管理者と空港事務所の役割を区別していない
- 警察への通報先が特定されていない
- 離着陸場所の管理者確認が終わっていない
- 航空機が接近した場合の中止条件が決まっていない
- 第三者の流入を監視する体制が整理されていない
焦点は、申請書を提出したかどうかだけではありません。
空港周辺の条件が変化した場合にも、安全側へ移行できる運航体制になっているかが問われます。
第三者状態と補助者機能
空港周辺では、航空機との関係だけでなく、地上の第三者との分離状態も維持する必要があります。
周辺道路、住宅地、事業所、駐車場、駅、商業施設、港湾、海岸など、空港によって第三者の流入経路は異なります。
第三者や車両が飛行範囲へ接近した場合、誰が発見するのか。
誰が操縦者へ伝えるのか。
どの時点で中止するのか。
この流れを飛行開始前に決めておく必要があります。
補助者は、人数を配置するだけでは足りません。
監視、連絡、誘導、航空機の接近把握、第三者の流入把握、中止判断の補助という機能が、現地で実際に成立することが重要です。
中止条件と運航体制
空港周辺飛行では、飛行開始前に中止条件を明確にする必要があります。
中止条件は、天候や風速だけではありません。
- 航空機の接近
- 空港管理者や航空関係機関からの要請
- 第三者や車両の流入
- 無線または映像伝送状態の悪化
- 補助者との連絡不能
- 飛行可能な高さを維持できない状態
- 対象区域や飛行経路の変更
- 事前に設定した分離状態の崩壊
これらも中止判断の対象になります。
誰が中止を判断するのか。
誰が操縦者へ伝えるのか。
誰が空港側や発注者へ説明するのか。
誰が飛行再開の可否を判断するのか。
この責任分担まで決めておかなければ、運航管理体制として十分とはいえません。
よくある誤解
空港周辺飛行では、次のような誤解が多く見られます。
- 航空法上の許可承認があれば飛行できる
- 空港敷地の外側なら小型無人機等飛行禁止法に関係しない
- 高さ制限以下なら空港側への確認は不要である
- 警察へ通報すれば空港管理者の同意は不要である
- 空港管理者の同意があれば航空法上の手続も完了する
- 小さい機体や軽い機体なら対象外である
これらは、制度ごとの役割を混同した整理です。
空港周辺では、航空法、小型無人機等飛行禁止法、空港側調整、警察通報、土地管理、現地運航管理を分けて確認する必要があります。
空港周辺飛行で残しておきたい資料
空港周辺案件では、申請書や許可書だけでなく、判断と調整の経過を後から説明できる資料を残すことが重要です。
実務上は、次のような資料を整理します。
- 飛行地点、飛行経路、離着陸地点を示す図面
- 飛行高度と空港周辺空域の関係を示す資料
- 対象空港のレッドゾーン・イエローゾーンとの位置関係
- 空港管理者や空港事務所との調整記録
- 警察および海上保安庁への通報記録
- 離着陸場所の使用承諾または管理者確認記録
- 第三者との分離状態を維持する方法
- 補助者の配置と役割分担
- 航空機の接近を含む中止条件
- 指揮命令系統と緊急連絡体制
資料を増やすこと自体が目的ではありません。
なぜその飛行位置、高度、体制、停止条件で運航が成立すると判断したのかを説明できる状態にすることが目的です。
空港周辺ドローン飛行の実務判断
空港周辺でのドローン飛行は、単に飛行可能かどうかを確認する作業ではありません。
飛行位置と空域。
対象空港のレッドゾーンとイエローゾーン。
空港管理者の同意。
警察や海上保安庁への通報。
離着陸場所の管理。
第三者との分離状態。
補助者機能。
中止条件と判断権限。
これらは、それぞれ別の成立条件です。
一つの許可や一つの通報だけで、運航全体が成立するわけではありません。
なぜこの場所で飛行するのか。
なぜこの高度を選んだのか。
なぜこの体制で第三者との分離状態を維持できるのか。
どの状態が崩れたら中止するのか。
誰が中止と再開を判断するのか。
空港周辺飛行では、これらを後から説明できる判断構造を事前に設計することが重要です。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています

