ドローン運航の判断設計・体制構築

ドローン都内1000M、基地との交渉術

 

 


ドローンを飛行させる際、特に高度が高くなったり、航空施設に近い空域を利用したりする場合には、航空法に基づく許可・承認だけでなく、航空交通管制機関や自衛隊といった関係機関との綿密な調整が不可欠です。

この調整は、時に一筋縄ではいかない、リアルな交渉の場となります。

先日、私自身が経験した都内でのドローン飛行の申請事例は、まさにその複雑さを物語るものでした。

目標は高度1000Mへの飛行。

離発着地点は自衛隊基地の管制圏内にありましたが、飛行する高高度空域は管制圏外という計画でした。

しかし、この計画に対し、自衛隊側からは厳しい意見が出されました。

※このような案件は、空域の問題だけでなく「その条件で本当に成立するか」の整理が必要です。
全体の判断軸は
目視外飛行の成立条件と判断整理|矢野事務所
をご参照ください。

この場所で事故にならずに運航できるかは、条件によって変わります。

飛行条件を確認する

高高度飛行の厳しい現実

東京都内での1000Mという高高度でのドローン飛行は、航空法上の150m以上の特定飛行に該当するだけでなく、場所によっては高層ビル群が立ち並び、航空交通量も多い都市部の特性から、極めて高い安全管理レベルが求められます。

特に自衛隊基地周辺の空域は、その運用上の特性や安全保障上の重要性から、一般の管制空域以上に厳しく管理されています。

交渉のリアルと「正門」理論

この申請に対する自衛隊側との具体的な交渉のやり取りは、まさにリアルな対話でした。

  • 基地側の主張: 「管制圏境界でも圏内は圏内だから✖︎」
    これは、法的な線引きが境界線であっても、基地としてはその安全マージンや管轄の厳格さを譲れない、という強い姿勢を示しています。わずかな部分でも管制圏にかかることを許容しない、という厳しさです。

  • 申請者(私)の提案: 「離陸のまま水平移動し圏外脱出後に上昇するから」
    これに対し、私は、航空法上のルールやリスク低減策に基づき、ドローンが管制圏内で垂直上昇せず、安全に圏外へ移動してから高高度を目指すという、具体的な飛行手順を提示しました。

  • 基地側の再反論: 「圏外でもそこは基地への正門の様な空域だから高高度は✖︎
    この言葉は、法的な管制圏の線引きを超えた、基地の運用上の「聖域」とも言うべき考え方を示しています。実際の航空機(特にヘリコプターなど)の離着陸経路や、基地の安全保障上の重要性が背景にあると推測されます。ここは、基地の運用上、絶対に譲れない「正門」のような空域であり、ドローンに高高度飛行されるのは困る、という切実な声でした。

このやり取りは、ドローンの飛行許可申請が、単なるルール適用だけでなく、関係機関の運用上のリアルな側面や、彼らの使命を理解する必要があることを示しています。

粘り強い交渉と解決策

基地側の強い反論に対し諦めませんでした。

  • 申請者(私)の交渉: 「空域が空く時間帯ないか」
    相手の運用上の制約を理解しようとする姿勢で、具体的な解決策、すなわち基地側がドローンの高高度飛行を「説得可能」な時間帯がないか、と打診しました。これは、問題解決に向けた交渉術です。

  • 基地側の回答: 「17時〜翌8時なら基地内説得可能」
    この問いかけに対し、基地側は、航空機の運用が比較的少ない夜間から早朝であれば、基地内部を説得し、ドローンの高高度飛行を容認できる可能性を示しました。これは、粘り強い交渉と、相手の運用実態への理解が引き出した譲歩と言えるでしょう。

  • 最終合意: 「では4時で。」
    この合意により、厳しい条件下の高高度飛行許可取得への道が開かれました。

※条件上は飛行できそうに見えても、実務では成立しない案件があります。
その典型例は
申請不要でも成立しないケース(道路上空)
で整理しています。

許可取得への示唆

今回の事例は、ドローンの高高度飛行許可取得、特に基地周辺のような複雑な空域での申請において、以下の重要な示唆を与えています。

  • 法令知識だけでは不十分
    航空法上の境界線だけでなく、関係機関の運用実態や安全保障上の懸念を深く理解することが不可欠です。
  • 交渉力と柔軟性
    相手の立場を理解し、具体的な代替案を提示する交渉能力、そして計画の柔軟性が求められます。
  • 信頼関係の構築
    真摯な姿勢で対話し、安全確保への強い意志を示すことが、厳しい条件下の調整を可能にする鍵となります。

ドローン産業の発展には、このような複雑な調整能力を持つプロフェッショナルが不可欠です。

まとめ

東京都内1000Mという高高度飛行は、自衛隊基地の管制圏内外をまたぐ複雑な空域調整を伴います。

管制圏の境界線だけでなく、基地への「正門」のような空域という運用上の特性が、申請を難しくする要因でした。

しかし、今回の事例が示すように、基地側の運用上の制約を理解した上での粘り強い交渉と、具体的な代替案の提示により、困難な許可も取得可能となることを実証できました。

ドローンが安全に空を共有するためには、法令知識に加え、関係機関との真摯な対話と交渉術、そして微細なズレも許さない正確性が不可欠であることを学びました。

許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません

ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。

  • 第三者管理は維持できますか?
  • 監視体制は機能しますか?
  • 中止判断は定義されていますか?
  • 関係者への説明は通りますか?

これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。

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