
レベル3.5とDIDの実務判断|矢野事務所
【3.5の飛行マニュアル】にこのほどDIDが加わりました。一瞬驚きましたが、経路の一部にDIDが出現するケースに現実対応したものです。『問い合わせ先を明示した上で上空を飛行することを事前に周知する事を含め、第三者の上空を飛行させない適切な安全措置を講じること』…との義務が記されています。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) October 30, 2025
レベル3.5は、無人地帯での補助者なし目視外飛行です。
そのため、マニュアルにDIDが出てきたと聞くと、「DIDでもレベル3.5で飛ばせるようになったのか」と受け取られがちです。
しかし、そこは違います。
今回の整理は、DID飛行を解禁した話ではありません。現実の地形や航路の中で、どうしても経路の一部にDIDが触れてしまうケースに制度側が対応したというのが本質です。
つまり問われているのは、DIDを含むかどうかそのものではなく、第三者上空を外したまま、その飛行をどう成立させるかです。
この記事では、レベル3.5にDIDが出てきた意味と、実務でどこが判断の分かれ目になるのかを整理します。
このページで分かること
結論|DIDが入っても原則は変わりません
結論はシンプルです。
レベル3.5にDIDが登場しても、「第三者上空は飛ばさない」という原則は変わりません。
- DIDに触れること自体を認めたのではない
- 避けきれないDID区間への現実対応である
- 成立条件は、周知・立入管理・航路設計・中止判断で決まる
つまり、マニュアル改訂の意味は緩和ではなく、安全措置の明文化です。
なぜレベル3.5にDIDが出てきたのか
レベル3.5は、もともと次の性格を持っています。
- 無人地帯での飛行が前提
- 第三者上空の飛行は禁止
- 補助者なし
- 目視外飛行
ところが実務では、地図上できれいに無人地帯だけをつないで飛ばせる案件ばかりではありません。
- 河川沿いにDIDがかかる
- 谷地形の両岸がDIDになる
- 避けようとすると不自然な高度上昇や長距離迂回になる
このようなケースでは、形式的にDIDを完全回避することが、かえって安全性を下げる場合があります。
今回の整理は、そうした避けきれないDID区間について、制度の原則を崩さずに現実対応したものと理解すべきです。
追加された義務の本質は「周知しても第三者上空は禁止」という点です
マニュアルで押さえるべき中心は、次の考え方です。
問い合わせ先を明示した上で上空を飛行することを事前に周知し、第三者の上空を飛行させない適切な安全措置を講じること
ここで読み違えやすいのは、周知さえすれば飛べるという理解です。
違います。
周知は条件の一つにすぎず、第三者上空を飛ばさないという原則はそのまま残ります。
つまり、DID区間を通るなら、
- 周辺住民や関係者への周知
- 問い合わせ先の明示
- 第三者が入らない経路設計
- 侵入時の中止判断
まで含めて組まなければ成立しません。
実務でまずやるべきは「DID通過」ではなく「安全回廊」の設計です
このテーマで重要なのは、DIDの上をどう飛ぶかではありません。
DIDの中で、第三者を外した回廊をどう作るかです。
基本方針
- 河川敷、堤防、緑地帯、農用地などを優先する
- 家屋密集域の直上は避ける
- 滞空・ホバリングを避け、通過型で組む
- 公共空地をつなぐように安全回廊を形成する
つまり、地図上のDID境界を見るだけでは足りません。
重要なのは、経路下に第三者が入り得る構造かどうかです。
この考え方は、ドローン運航の判断設計とは何かと同じです。飛ばせるかではなく、後から説明できる状態に組む必要があります。
DID区間では「事前周知」が実務上の必須論点になります
周知は形式作業ではありません。
実務では、第三者が予期しない飛行を避けるための安全措置として扱うべきです。
周知の例
- 自治会や地域回覧での周知
- 掲示板や看板での明示
- 関係施設や管理者への通知
- 問い合わせ先、飛行日時、飛行理由の記載
ここで重要なのは、何を周知したか、どの範囲に周知したかを後で示せることです。
周知はやったと言うだけでは弱く、記録が必要です。
立入管理区画は「DIDだから広げる」ではなく、落下リスクから決めます
レベル3.5でDIDが絡む場合でも、考え方の中心は第三者管理です。
そのため、立入管理区画は、
- 飛行高度
- 飛行速度
- 風速
- 機体特性
から、落下距離を見て設定する必要があります。
重要なのは、距離の数字そのものではありません。
その区画内に第三者が入らないよう維持できるかです。
ここは、立入管理区画の設計と判断基準と直結します。線を引くだけでは足りず、実際に保てることが必要です。
緊急着陸地点は「ある」ではなく「そこへ持っていける」ことが必要です
DID区間を含むレベル3.5では、異常時対応の現実性が強く問われます。
そのため、河川敷、緑地帯、公共空地などを緊急着陸地点として複数設定する考え方自体は有効です。
ただし、ここでも重要なのはリストアップではありません。
- その地点まで本当に退避できるか
- 自動帰還で第三者上空に入らないか
- 異常発生時に操縦者が判断を切り替えられるか
つまり、緊急着陸地点は「書いてある」だけでは弱く、実際にそこへ持っていく運航設計が必要です。
通信・監視体制は「高性能だから安心」ではなく「壊れたら止める」まで必要です
超広角カメラ、夜間対応カメラ、通信二重化、運航管理システムなどは、DID区間を含む3.5では有力です。
しかし、実務で本当に重要なのは装備の豪華さではありません。
カメラが不鮮明になった、通信が不安定になった、その瞬間に中断できるかです。
つまり、監視体制の評価は、平常時の性能ではなく、異常時に止まれる構造になっているかで決まります。
この考え方は、目視外飛行一般の成立条件とも同じです。
→ 目視外飛行の成立条件と判断整理
レベル3.5とDIDで一番危ない誤解
DIDが入った=DID飛行が解禁された
違います。第三者上空禁止の原則はそのままです。
周知すれば飛ばせる
違います。周知は条件の一部でしかありません。
落下距離を計算すれば十分
違います。その区画を維持できるかが本体です。
DID区間は短ければ気にしなくてよい
違います。短くても、第三者上空の問題があれば成立しません。
まとめ
今回のレベル3.5マニュアル改訂は、DID飛行の緩和ではありません。
避けきれないDID区間に対し、どう安全措置を組むかを明文化したものです。
- 第三者上空は禁止のまま
- 周知義務が加わる
- 安全回廊の設計が必要
- 立入管理と中止判断が本体になる
つまり、DIDが経路に出てきた時点で大事なのは、「通ってもよいのか」ではなく、第三者を外したまま、その飛行を説明可能な構造で成立させられるかです。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません
ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。
※飛行許可申請「のみ」のご相談にも対応しています

