ドローンレベル2で飛ばせるなら3.5は不可
このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。
将来はともかく、現時点では「レベル2で飛ばせるなら3.5は不可」…というのが当局のスタンスのようです。立入管理負荷から解放されたい…そんな動機を受け止めては貰えても、許可となると厳格です。先日、自然の季節変化を記録する空撮業の方のケースでは、前に進めませんでした。冒頭の理由です。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) September 3, 2024
なぜ3.5の申請が厳格なのか、なぜ「レベル2で可能ならば3.5で」となるのか、その理由や背景そして実際に申請を考える際のポイントを解説します。
このページで分かること
飛行レベルのおさらい
まずは、ドローンの安全な飛行のために定められた「飛行のレベル」について、簡単におさらいしましょう。
レベル1~4の分類
ドローンの飛行は、リスクに応じて以下の4段階に分けられています。
- レベル1: 目視内での操縦飛行(指定空域等を除く)
- レベル2: 目視外での操縦飛行(指定空域等を除く)
- レベル3: 無人地帯における目視外飛行(補助者なし)
- レベル4: 有人地帯における目視外飛行(補助者なし)
そして、特に実務で重要なのが、「立入管理措置」という考え方です。
2と3/3.5の核心的な違い
今回のテーマであるレベル2とレベル3/3.5は、この「立入管理措置」を行うかどうかで決定的に分かれます。
- レベル2: 人や物件の近くなど、通常リスクが伴う空域・方法でも「立入管理措置を確実に行う」ことで安全を確保して飛行する区分。
- レベル3.5: 有人の存在可能性を否定できない地帯で、特定の条件を満たし、かつ厳しい対策を講じることで「立入管理措置を行わない(または最小限とする)」目視外飛行を目指す区分。
つまり、レベル2は地上で安全対策をしますが、レベル3.5はそれが難しい代わりに他の手段で安全を確保しよう…という考え方です。
なぜレベル3.5は高い壁?
事業者「立入管理負荷の解放」
ドローンを使って仕事をする上で、レベル2で必須とされる「立入管理措置」は大きな負担です。
飛行範囲への補助員の配置、コーンやロープでの区域設定、住民への周知や声かけなど、人手も時間もコストもかかります。
特に都市部や広範囲の撮影では、物理的・現実的に実施が難しいケースも少なくありません。
「この手間がなくなれば…」という願いが、レベル3.5への期待を生んでいます。
当局「より低リスクの方法優先」
しかし、現行制度下でのレベル3.5飛行の承認は、非常にハードルが高いのが実情です。
これは、当局(航空局)が「安全の確保」を最優先しており、「申請された飛行目的は、最もリスクの低い方法で安全に実現できないか?」という視点を重視しているからです。
つまり、「立入管理措置(レベル2)を講じることで安全に目的が達成できるのであれば、まずはその方法を選んでください」というスタンスです。
単に「立入管理が大変だから」という理由だけでは、リスクの高いレベル3.5の許可は原則として認められません。
理由を深掘り
2の立入管理措置が安全の要
レベル2で求められる立入管理措置(補助員の配置、区域設定、周知など)は、シンプルながらも地上の第三者をドローンの危険から物理的・人的に遠ざけるための、現時点では最も確実な安全策の一つです。
機体トラブルなど予期せぬ事態でも、地上の安全を確保できる可能性が格段に高まります。
3.5のリスク:「予期せぬ第三者」への対応策が鍵
一方、レベル3.5は立入管理をしないため、都市部などでいつどこから人が現れるか分からないというリスクに直接対応できません。
この「予期せぬ第三者の立ち入り」による接触・墜落時の被害リスクが、レベル3.5が本質的に抱える高いリスクです。
そのため、レベル3.5の承認には、立入管理に代わる、あるいはそれ以上の安全対策(型式認証を受けた高安全性の機体、国家資格を持つ操縦者、厳格な運行体制、リスクに応じた技術的・運用的な具体的な対策など)を講じ、それが有効であることを徹底的に証明する必要があります。
申請審査の壁は代替可能性
私のXの投稿で触れた「自然の季節変化を記録する空撮業の方」のケースのように、申請者が「広範囲で立入管理が難しいからレベル3.5で」と考えても、当局は「撮影ポイント周辺だけでも最低限の立入管理はできませんか?それならレベル2で目的達成できますよね?」と判断する可能性が高いです。
申請者は、単に手間の問題ではなく、「なぜレベル2ではダメなのか」「レベル3.5でなければならない理由」「レベル3.5でどう安全を確保するのか」を、客観的かつ論理的に説明する高い証明責任を負います。
3.5を目指すなら知るべきこと
どうしてもレベル3.5が必要な場合や、将来目指したい場合は、以下の高い壁があることを理解しておきましょう。
前提条件:機体と資格、体制
- 機体
国の型式認証を受けた、極めて安全性の高い機体(第二種または第一種型式認証無人航空機)が必須です。
既存の市販機では基本的にハードルは高く、取得には莫大なコストと開発期間が必要です。 - 操縦者
国の無人航空機操縦者技能証明(国家資格)の二等または一等が必須です。
学科・実地ともに難易度が高く、専門の登録講習機関での受講が必要な場合もあります。 - 運航体制
安全管理規程やリスクアセスメント手法など、非常に厳格な運航体制の構築と遵守が求められます。
徹底したリスク対策の証明
これらの前提に加え、申請する飛行ごとにあらゆるリスクを洗い出し、それぞれに対する具体的な安全対策(技術的・運用的)を詳細に、説得力を持って記述する必要があります。
「〇〇の場合は、△△の機能で安全を確保する」といった具体的な対策の提示が不可欠です。
まとめ:現実的選択と専門相談
現時点では、多くの場合「レベル2で目的が達成できないか検討する」のが最も現実的で、許可取得への近道です。
レベル2の立入管理は手間ですが、地上の安全確保という点で有効な手段だからです。
将来的にレベル3.5、そしてレベル4は広がっていくでしょうが、それは型式認証機や国家資格保有者の普及、技術進展が大前提となります。
もしあなたの飛行がどうしてもレベル3.5でなければならない、あるいは真剣にレベル3.5を目指したいという場合は、必要な機体・資格の準備と並行して、徹底的なリスク分析と具体的な安全対策の検討が不可欠です。
ドローン飛行の許可申請は複雑で専門知識が必要です。
「自分のケースはどうなる?」「レベル3.5の可能性は?」など、迷ったらドローン専門の行政書士にご相談ください。
行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。
全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。
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