レベル3.5:歩行者上空横断と立入管理:矢野事務所

レベル3.5:歩行者上空横断と立入管理

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。

ドローン「レベル3.5飛行」とは?

2023年3月、ドローン飛行の新たなカテゴリーとして「レベル3.5飛行」が導入されました。

これは、これまでのレベル3飛行(無人地帯における目視外飛行)をさらに発展させ、「立入管理措置を講ずることなく、補助者なしに特定区域の上空を飛行する」ことを可能にするものです。

具体的には、これまで立入管理が必要とされていた、ビルや工場といった構造物の上空や、橋梁・送電線などのインフラ設備周辺での飛行が、一定の条件下で立入管理措置なしにできるようになりました。

このレベル3.5飛行の導入は、ドローンを活用した産業インフラの点検や、物流などの分野において、より効率的かつ柔軟な運用を可能にし、ドローンの社会実装を加速させることを目的としています。

しかし「立入管理措置が不要」という言葉だけが先行し、その真の範囲や適用条件について誤解が生じやすい側面もあります。

一時的な横断に限定した理由

Xの投稿にもあるように、レベル3.5飛行では「移動車両等の上空を一時的な横断に限って飛行する」ことが可能になります。

これは、道路という公共空間を横断する際の制約を緩和するための措置です。

しかし、なぜ「一時的な横断」に限られるのでしょうか。

国土交通省の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(以下、審査要領)」や「特定飛行に関する一般共通基準(以下、一般共通基準)」において、無人航空機の飛行にあたっては、第三者の身体及び物件に衝突するおそれがないよう、必要な措置を講ずることが求められています。

この「移動車両等の上空横断」は、道路交通の流れを妨げず、かつドローンの滞空時間を最小限にすることで、万が一の事態におけるリスクを極力低減するための措置とされています。

あくまで道路を「通過する」という前提であり、道路上空に長時間滞空したり、道路に沿って飛行したりする運用は想定されていません。

第三者の定義と歩行者上空の禁止

レベル3.5飛行において最も重要な誤解の一つが、「立入管理措置が不要になったから、人の上も飛べるようになった」というものです。

完全に誤った認識であり、歩行者など第三者の上空での飛行は、レベル3.5飛行においても依然として認められていません。

「審査要領」及び「一般共通基準」では、無人航空機の飛行にあたっては、「第三者の上空を飛行させないこと」が原則として定められています。

この「第三者」には、歩行者、自転車に乗っている人、停止している車両に乗っている人、屋外で作業している人などが含まれます。

レベル3.5飛行が適用されるのは、あくまで「立入管理措置を講ずることなく、補助者なしに特定区域の上空を飛行する」場合であり、第三者のいる場所での立入管理措置が不要になるわけではありません。

「移動車両等」は、あくまで特定の条件下の「物件」としての扱いに限定されており、通行する「人」とは明確に区別されています。

したがって、飛行経路内に一人でも歩行者などの第三者が存在する可能性がある場合、その上空を飛行することは禁止されており、別途、適切な立入管理措置が講じられる必要があるのです。

歩行者がいる場合の立入管理措置

飛行経路に第三者(歩行者など)の存在を排除できない場所が含まれる場合には、補助者や看板などの立入管理措置が必ず求められます。

レベル3.5飛行の適用範囲外の原則であり、安全確保のために不可欠な対策です。

国土交通省の「無人航空機の飛行の安全に関する教則(以下、教則)」や「安全確保対策に関するガイドライン」では、具体的な立入管理措置の例が示されています。

  • 補助者の配置
    飛行範囲やその周辺に補助者を配置し、第三者の侵入を監視・制止します。補助者は、ドローンの飛行状況を常に把握し、危険を察知した場合には、操縦者と連携して適切な措置を講じることが求められます。
  • 看板・バリケード等による表示
    飛行区域を示す看板を設置したり、コーンやバリケード等で飛行エリアを物理的に区画したりして、第三者が危険区域に立ち入らないよう明確に示します。
  • 声かけ・アナウンス
    ドローン飛行中であることを周囲に声で周知したり、スピーカーなどでアナウンスを行ったりして、注意を促します。
  • ウェブサイト等での事前告知
    飛行場所や日時などを事前にウェブサイトなどで告知し、不必要な接近を避けるよう呼びかけることも有効です。

これらの措置は、飛行場所の特性や周囲の状況に応じて適切に組み合わせて実施する必要があります。

重要なのは、第三者を飛行空域から完全に排除すること、あるいは第三者が危険区域に進入する可能性を限りなくゼロにすることです。

誤解が招くリスクとペナルティ

「レベル3.5だから大丈夫」という安易な認識は、重大な事故や法規違反に繋がりかねません。

歩行者の上空を無許可で飛行させた場合、航空法違反となり、50万円以下の罰金刑が科される可能性があります。

また、万が一、ドローンが落下して第三者に危害を加えた場合には、刑事責任だけでなく、多額の損害賠償を請求される民事責任も発生します。

ドローン運用における法令遵守は、単に罰則を避けるためだけでなく、社会からの信頼を得て、健全なドローン産業の発展に寄与するために不可欠です。

まとめ

レベル3.5飛行は、ドローンの活用範囲を広げる画期的な制度ですが、その適用範囲や「第三者」の定義については、正確な理解が不可欠です。

特に、「移動車両等の一時的な横断」は可能でも、歩行者など「第三者の上空飛行」は依然として禁止されているという点を強く認識する必要があります。

飛行経路に第三者が存在する可能性がある場合は、補助者の配置や看板設置など、適切な立入管理措置を必ず講じなければなりません。

国土交通省のガイドラインを熟読し、常に最新の情報を把握することで、誤解に基づく法規違反や事故を未然に防ぎ、安全かつ適正なドローン運用を心がけましょう。

ドローンを活用するプロフェッショナルとして、法令遵守の意識を常に高く持ち、社会からの信頼を築き上げていくことが求められています。

申請事例&ブログ一覧はこちら

行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。

全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。

 

【免責事項】
○当サイトのコンテンツや情報において可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、 誤情報が入り込んだり古くなったりすることもあり必ずしもその内容の正確性および完全性を保証するものではございません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害について、一切責任を負うものではございませんのであらかじめご了承ください。
○当サイトから移動された先のホームページは、当サイトが管理、運営するものではございません。移動先サイトで提供される情報の真偽、サービス等につきましても一切の責任も負いませんのでご了承ください。なお、予告なしに内容が変更または廃止される場合がございます。