
レベル3.5は操縦者要件で決まる|矢野事務所
ドローンのレベル3.5飛行では、操縦者に求められるものが通常の許可承認申請とは大きく異なります。
単に技能証明を持っているだけでは足りません。
レベル3.5では、目視外で遠隔監視を行い、補助者を配置しない前提で飛行を成立させるため、操縦者自身に追加基準への適合が求められます。
特に重要なのは、遠隔操作技術と10時間以上の訓練実績です。
これは、単なる飛行時間の積み上げではありません。
カメラ情報から異常状態を評価し、異常事態下で最も安全な運航方法を判断し、その判断に基づいて遠隔操作できるかが問われます。
つまり、レベル3.5の操縦者要件は、「操縦できるか」ではなく、遠隔環境で運航判断を維持できるかの問題です。
このページで分かること
レベル3.5飛行は資格だけでは成立しない
レベル3.5飛行は、ドローン物流、インフラ点検、災害調査など、補助者を置くことが現実的に難しい運航を想定した制度です。
ここで重要なのは、レベル3.5が「人がいる場所を自由に飛ばせる制度」ではないという点です。
レベル3.5は、目視外飛行でありながら、飛行経路直下に第三者がいないことを遠隔監視等によって確認し、補助者なしで飛行を成立させることを目指す制度です。
したがって、制度の中心は「操縦できるか」だけではありません。
遠隔から第三者の立入りを把握できるか。
異常時に中止・回避・着陸を判断できるか。
その判断を運航体制として説明できるか。
ここまで含めて操縦者要件を見る必要があります。
技能証明だけでは足りない理由
レベル3.5飛行では、一等無人航空機操縦士などの技能証明が重要な前提になります。
しかし、技能証明を持っていることと、レベル3.5飛行を安全に成立させられることは同じではありません。
レベル3.5では、操縦者に対して追加基準が求められます。
その追加基準では、通常の操縦技能だけでなく、遠隔監視を前提とした異常把握、判断、操作が求められます。
つまり、レベル3.5の操縦者要件は「資格を持っているか」では終わりません。
資格を前提に、実際の運航場面でどのような異常を読み取り、どのように判断し、どのように安全側へ操作できるかを資料で示す必要があります。
遠隔操縦技能で問われること
レベル3.5では、操縦者が機体を直接目視できない状況を前提にします。
そのため、操縦者はカメラ映像、機体情報、通信状況、周辺状況をもとに、遠隔で安全判断を行う必要があります。
審査上、特に重視されるのは、次のような能力です。
- カメラ情報から異常状態を評価する能力
機体の姿勢、進行方向、周辺状況、飛行経路直下の状態を映像から把握し、異常の有無を判断する力です。 - 異常事態下で最も安全な運航方法を判断する能力
通信不良、映像伝送不良、機体異常、第三者接近などが発生した場合に、継続・中止・帰還・着陸のどれを選ぶべきか判断する力です。 - 判断した方法で遠隔操作する能力
安全側の判断をしただけでは足りません。その判断を実際の遠隔操作で実行できることが求められます。
この三つは、単なる知識問題ではありません。
実際に訓練し、記録し、必要に応じて資料として説明できる状態にしておく必要があります。
10時間以上の訓練実績は時間だけでは足りない
レベル3.5操縦者には、10時間以上の訓練実績が求められます。
ここでいう10時間は、単にドローンを飛ばした時間を積み上げればよいという意味ではありません。
レベル3.5で求められるのは、遠隔監視・異常時判断・目視外での操作に関する実効性のある訓練です。
例えば、次のような内容を訓練実績として整理しておく必要があります。
- カメラ映像をもとに機体状態や周辺状況を確認する訓練
- 映像伝送不良や通信不良を想定した対応訓練
- 第三者接近時の中止判断訓練
- 帰還・緊急着陸・安全側への退避操作訓練
- 遠隔監視者や運航管理者との連携訓練
重要なのは、訓練をしたかどうかではありません。
何を想定し、どのように判断し、どのように操作したかを説明できることです。
飛行経歴は資料で示す必要がある
レベル3.5申請では、操縦者の飛行経歴や訓練実績を資料で示す必要があります。
飛行日誌、訓練記録、使用機体、訓練場所、訓練内容、異常時対応の想定、操縦者の役割などを整理しておくことが重要です。
単に「経験があります」と説明しても足りません。
航空局が確認するのは、操縦者の経験がレベル3.5飛行に必要な能力と結びついているかどうかです。
そのため、飛行経歴は時間数だけでなく、内容が重要になります。
どのような環境で、どのような目視外飛行を行い、どのような異常対応を訓練し、誰がどの役割を担ったのか。
ここまで整理して初めて、操縦者要件の説明資料として意味を持ちます。
記録を後から説明できる形で残す考え方は、ドローン運航は『文書化』で成立する|矢野事務所でも整理しています。
操縦者要件は運航管理体制と一体で見る
レベル3.5では、操縦者だけを見ていても運航は成立しません。
なぜなら、レベル3.5は補助者を置かない代わりに、遠隔監視、通信、機体情報、運航判断、中止基準を組み合わせて安全を確保する制度だからです。
したがって、操縦者要件は、運航管理体制と一体で整理する必要があります。
誰が飛行開始を判断するのか。
誰が通信不良時の中止を判断するのか。
誰が第三者接近を確認するのか。
誰が記録を残し、次回以降の運航条件へ反映するのか。
このような運航全体の整理がなければ、操縦者の知識・技能・経験だけを示しても不十分です。
レベル3.5のような高度な運航では、飛行ごとの判断を属人的に済ませず、ドローンは操縦でなく運航管理|矢野事務所として整理しておく必要があります。
補助者なしだからこそ確認構造が問われる
レベル3.5では、補助者を置かない前提で運航する場面があります。
しかし、補助者を置かないことは、確認を省略することではありません。
むしろ、補助者が担っていた確認機能を、遠隔監視、機体情報、通信、運航管理体制で代替できるかが問われます。
飛行経路直下に第三者がいない状態をどう確認するのか。
第三者が現れた可能性をどう把握するのか。
カメラ映像や通信情報に異常が出たとき、どの条件で中止するのか。
ここが整理されていなければ、補助者なし目視外飛行は成立しません。
つまり、レベル3.5は「人を減らせる制度」ではありません。
補助者機能を別の確認構造で置き換える制度として見る必要があります。
資料化できない経験は審査で弱い
実務上、操縦者本人は「経験がある」と考えていても、それを資料として説明できないケースがあります。
しかし、レベル3.5申請では、経験そのものではなく、経験をどう資料化できるかが重要です。
訓練日時、訓練場所、訓練内容、使用機体、想定異常、判断内容、遠隔操作内容、結果を記録しておかなければ、審査上は説明しにくくなります。
特に、カメラ情報からの異常評価や、異常事態下での最も安全な運航方法の判断は、通常の飛行日誌だけでは伝わりにくい部分です。
そのため、レベル3.5を見据える場合は、日頃の訓練段階から「後で説明できる記録」を残しておく必要があります。
飛行日誌と事後説明の関係については、飛行日誌は『事後説明』の証拠|矢野事務所でも整理しています。
まとめ
ドローンのレベル3.5飛行では、操縦者に対して技能証明だけでなく、追加基準への適合が求められます。
特に重要なのは、遠隔操作技術、10時間以上の訓練、カメラ情報からの異常評価、異常時の安全判断、その判断に基づく遠隔操作です。
これらは、単に経験として持っていればよいものではありません。
訓練実績、飛行経歴、判断内容、操作内容を資料として説明できる状態にしておく必要があります。
レベル3.5申請では、「操縦できるか」だけでなく、「異常時に判断できるか」「その判断を遠隔操作で実行できるか」「その実績を資料で示せるか」が問われます。
矢野事務所では、レベル3.5飛行のような高難度運航について、操縦者要件だけでなく、目視外飛行、補助者なし運航、運航管理体制まで含めて、申請前の判断構造を整理しています。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています
