
鉄道点検ドローンは3.5か2か|矢野事務所
鉄道の保守点検をLv3.5で…との申請依頼がありました。確かに長距離にわたる点検飛行には3.5は有用です。ただ鉄道会社からの依頼ならば線路上の飛行は可能で更に許可があれば車両走行時の上空も可能性あるので、3.5以前にLv2の選択肢もあります。2で可能なら2で…という方針の国交省に要相談です。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) December 14, 2024
鉄道の保守点検にドローンを使う場合、最初からレベル3.5を目指せばよいとは限りません。
長距離の点検飛行では、レベル3.5が有用に見える場面があります。
補助者を多数配置せず、目視外で広い範囲を飛行できれば、鉄道点検の効率は大きく上がります。
しかし、鉄道会社からの依頼で、線路上空を飛行する場合には、レベル3.5以前にレベル2で成立する可能性もあります。
つまり、問題は「鉄道点検だから3.5」ではありません。
その飛行が本当に目視外・補助者なしでなければ成立しないのか。
鉄道会社の管理協力によって、レベル2で安全に成立するのか。
ここを申請前に整理する必要があります。
目視外飛行の基本的な判断については、まず目視外飛行の成立条件と判断整理で確認しておく必要があります。
このページで分かること
鉄道点検でドローンが期待される理由
鉄道インフラの保守点検は、安全な運行を支える重要な業務です。
線路、架線、橋梁、法面、トンネル周辺、駅間設備など、確認対象は広範囲に及びます。
従来は、人が現地を歩き、目視で確認し、必要に応じて高所や危険箇所へ近づく必要がありました。
そのため、人員、時間、夜間作業、安全管理の負担が大きくなります。
ドローンを使えば、上空から線路や周辺構造物を確認でき、作業員が危険箇所へ立ち入る場面を減らせる可能性があります。
特に長距離の巡視点検では、ドローンの活用価値は高くなります。
レベル3.5が有用に見える場面
鉄道点検でレベル3.5が検討される理由は、長距離飛行との相性です。
通常の目視内飛行では、操縦者が機体を直接確認できる範囲で飛ばす必要があります。
長い線路を点検する場合、操縦者や補助者を複数地点に配置する必要が出てきます。
飛行範囲が長くなるほど、人員配置、連絡体制、立入管理、列車運行との調整も重くなります。
そこで、補助者なし目視外飛行を前提とするレベル3.5が候補になります。
レベル3.5が成立すれば、遠隔監視を前提に、より少ない人員で長距離点検を実施できる可能性があります。
ただし、補助者なし目視外飛行は、人員を減らすための便利な抜け道ではありません。
補助者が担っていた安全確認を、何で代替するのかが問われます。
補助者なし目視外飛行の考え方については、補助者なし目視外飛行の考え方で整理しています。
レベル2で成立する可能性もある
鉄道点検では、レベル3.5を検討する前に、レベル2で成立するかを確認する必要があります。
理由は、鉄道会社からの依頼であれば、線路上空の管理関係を整理しやすい場合があるからです。
鉄道会社が管理する線路上空で、飛行範囲を限定し、操縦者が機体を目視できる範囲で飛行するなら、レベル2で成立する可能性があります。
さらに、必要な許可や安全管理が整えば、車両走行時の上空についても、条件次第で検討余地が出る場合があります。
もちろん、これは簡単に飛ばせるという意味ではありません。
列車運行、架線、駅周辺、第三者立入り、作業員配置、運行管理者との連絡体制などを具体的に整理する必要があります。
それでも、目視内で安全に成立するなら、無理にレベル3.5へ上げる必要はありません。
「2で可能なら2で」という考え方
国土交通省との実務上のやりとりでは、「レベル2で飛行できるものはレベル2で」という考え方が重要になります。
これは、単に低いレベルの方が簡単だからという話ではありません。
必要以上に高い飛行レベルを使わず、現場条件に見合った申請構造を選ぶという考え方です。
レベル3.5は、補助者なし目視外飛行を成立させるための制度です。
したがって、目視内で成立する飛行までレベル3.5で処理しようとすると、制度趣旨との関係で説明が難しくなります。
鉄道点検でも同じです。
長距離だから3.5、鉄道だから3.5、効率化したいから3.5、という順番ではありません。
まず、レベル2で成立する範囲がどこまであるのかを確認します。
そのうえで、どうしても目視外・補助者なしでなければ成立しない範囲について、レベル3.5を検討します。
鉄道会社の管理協力が判断を左右する
鉄道点検では、鉄道会社の関与が非常に重要です。
鉄道会社から正式に依頼されているのか。
飛行範囲が鉄道会社の管理区域内なのか。
列車運行情報を共有できるのか。
作業時間帯や運行停止時間帯を調整できるのか。
現地作業員や保安要員との連携が可能なのか。
これらによって、レベル2で成立するのか、レベル3.5が必要になるのかが変わります。
鉄道会社の管理協力がある場合、第三者の立入り管理や運行調整を組み込めるため、目視内飛行で整理できる範囲が広がる可能性があります。
一方で、管理協力が弱いまま長距離目視外を行う場合は、レベル3.5としても説明が難しくなります。
車両走行時の上空飛行は別論点
鉄道点検では、線路上空の飛行と、車両走行時の上空飛行を分けて考える必要があります。
線路上空を飛行することと、走行中の車両上空を飛行することは、リスクの意味が異なります。
走行中の車両がある場合、落下時の影響、運行停止判断、乗客・乗務員への影響、鉄道会社側の安全管理責任が重くなります。
そのため、「鉄道会社からの依頼だから可能」と単純には言えません。
どの時間帯に飛ぶのか。
車両走行中なのか、運休・保守時間帯なのか。
飛行経路下に第三者や乗客をどう評価するのか。
異常時に列車側とドローン側でどのように連絡・停止判断を行うのか。
ここまで整理して初めて、車両走行時の上空飛行を検討できます。
レベル選定は申請前に相談すべき
鉄道点検では、申請書を書き始める前に、飛行レベルの選定を行う必要があります。
具体的には、次の点を整理します。
- 飛行距離はどの程度か
- 操縦者が機体を目視できる範囲か
- 補助者配置で対応できるのか
- 補助者なしでなければ成立しないのか
- 鉄道会社の管理協力はどこまで得られるのか
- 走行中車両の上空を含むのか
- 第三者上空や第三者立入りをどう評価するのか
この整理をせずに、最初からレベル3.5で進めると、制度趣旨に合わないと判断される可能性があります。
逆に、レベル2で整理できるのに、必要以上に高い申請構造を選んでしまうと、時間も費用も無駄になります。
運航管理体制として成立するか
鉄道点検は、単なる飛行許可の問題ではありません。
鉄道会社、操縦者、補助者、運行管理者、現地作業員が関与する運航管理の問題です。
誰が飛行開始を判断するのか。
誰が列車運行情報を確認するのか。
誰が第三者立入りを確認するのか。
誰が異常時に飛行中止を判断するのか。
誰が鉄道側へ連絡するのか。
誰が実施記録を残すのか。
これらを整理しなければ、レベル2でもレベル3.5でも運航は成立しません。
鉄道点検のような公共性の高い運航では、飛行ごとの判断を属人的に済ませず、ドローン運航管理体制として説明できる状態にしておく必要があります。
矢野事務所での実務上の整理
矢野事務所では、鉄道点検の相談を受けた場合、まずレベル3.5ありきでは整理しません。
最初に確認するのは、レベル2で成立する範囲です。
線路上空の飛行なのか。
車両走行時の上空を含むのか。
鉄道会社の管理協力があるのか。
操縦者の目視範囲で飛べるのか。
補助者配置で対応できるのか。
それでも目視外・補助者なしでなければ成立しないのか。
この順番で整理して初めて、レベル3.5申請を検討します。
鉄道点検では、飛行レベルを高くすればよいのではありません。
現場条件に合った最小限かつ説明可能な申請構造を選ぶことが重要です。
まとめ
鉄道点検にドローンを使う場合、長距離点検だからといって、直ちにレベル3.5が必要になるわけではありません。
鉄道会社からの依頼で、線路上空を管理された範囲で飛行できるなら、レベル2で成立する可能性があります。
一方で、長距離の目視外飛行や補助者なし運航が必要になる場合には、レベル3.5を検討する余地があります。
重要なのは、最初からレベル3.5を選ぶことではありません。
レベル2で可能なのか、レベル3.5でなければ成立しないのかを、現場条件・鉄道会社の管理協力・第三者管理・運航体制から判断することです。
鉄道点検では、「どの許可を取るか」ではなく、「どの飛行レベルなら運航として説明できるか」が問われます。
◆ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する◆
許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません
ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。
※飛行許可申請「のみ」のご相談にも対応しています
