鉄道点検ドローン、飛行レベルは3.5か2か:矢野事務所

鉄道点検ドローン、飛行レベルは3.5か2か

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。

「鉄道の保守点検にドローンを導入したいが、Lv3.5の申請が必要か?」

このようなご相談を受けることがあります。

確かに、長距離にわたる点検飛行にはLv3.5(補助者なし目視外飛行)が非常に有用です。

しかし、実はLv3.5よりも、現在のLv2(目視内飛行)が最適な選択肢となるケースも少なくありません。

国土交通省は、「より低い飛行レベルで安全が確保できるなら、そのレベルで」という方針を持っています。

これは、費用や手続きの負担を抑えつつ、安全を確保するための重要な考え方です。

今回は、鉄道点検におけるドローンの活用を例に、Lv2とLv3.5それぞれの特徴と、状況に応じた最適な飛行レベルの選び方について解説します。

鉄道点検とドローン

鉄道インフラの保守点検は、安全な運行を支える上で不可欠な業務です。

広範囲にわたる線路や構造物の点検には、これまで多くの時間と人手、そしてコストが投入されてきました。

点検の現状と課題

鉄道の点検は、そのほとんどが人手による目視点検です。

広大な範囲を定期的に確認するには、多くの作業員が危険な場所で長時間作業する必要がありました。

これには、人件費の高騰や作業員の安全性確保、そして夜間作業による効率の課題が常に伴います。

ドローンの登場は、この鉄道点検に新たな可能性をもたらしました。

上空からの迅速な広範囲確認、高所の精密点検、作業員の安全確保など、多くのメリットが期待されます。

Lv3.5の魅力と必要性

Lv3.5飛行は、長距離・広範囲の巡視点検において、大きなメリットをもたらします。

長距離点検の課題

従来のLv2飛行では、操縦者の目視範囲内でドローンを飛行させるため、長距離の点検には多くの操縦者や補助者を配置する必要がありました。

例えば、全長10kmの巡視では、電波状況の確認や安全確保のため、7〜8名もの補助者が必要となるケースもあります。

Lv3.5の効率性

Lv3.5飛行が可能になれば、この課題を大きく解決できます。

補助者なしでの目視外飛行が認められるため、操縦者1名と補助者1〜0名で長距離の巡視を自動飛行で行うことが可能です。

これは、日当1万円の人件費が8分の1に圧縮される可能性を秘めています。

この劇的なコスト削減は、これまでドローン導入に慎重だった鉄道会社や自治体にとって、外部委託を進めやすくなる大きな後押しとなるでしょう。

Lv2で可能ならLv2で

ここで重要となるのが、国土交通省の基本方針です。

一見、Lv3.5の方が万能に見えるかもしれませんが、そうではありません。

国交省の基本方針

国土交通省は、ドローンの飛行許可申請において、「より低い飛行レベルで安全が確保できるなら、そのレベルで申請すべきである」という基本方針を持っています。

これは、必要以上に高いレベルの許可を求めるべきではないという考え方です。

Lv3.5の許可取得には、厳格な機体認証や操縦ライセンス、そして詳細な飛行マニュアルと安全管理体制が求められます。

これは、その分、申請プロセスや準備に多大な時間とコストがかかることを意味します。

Lv2で可能な飛行

鉄道の保守点検において、全ての飛行がLv3.5を必要とするわけではありません。

  • 線路上空の飛行
    鉄道会社からの依頼であれば、管理された線路上空の飛行は可能です。これは、線路がドローンの飛行範囲となり、鉄道会社が管理者として安全管理に関与することで、特定の条件下での飛行が容易になることを意味します。
  • 車両走行時の上空飛行
    さらに許可があれば、車両走行時の上空も飛行できる可能性があります。これも鉄道会社との連携や、運行スケジュールへの影響を最小限に抑える具体的な安全対策が必要です。

これらは、操縦者がドローンを目視できる範囲であれば、Lv2の範疇で申請・実施できる可能性があります。

Lv2であれば、Lv3.5に比べて申請手続きも比較的簡素です。

申請前の重要確認

ドローンを用いた鉄道点検を計画する際は、Lv2とLv3.5のどちらが最適かを慎重に検討することが重要です。

飛行計画の整理

まずは、計画している点検飛行の具体的な内容を整理しましょう。

  1. 飛行距離と範囲
    長距離・広範囲で、目視外での自動飛行が必須か。
  2. 飛行場所
    線路上空のみか、線路外の構造物も含むか。
  3. 周辺環境
    人口密集地の上空を通過するか、障害物の有無など。
  4. 鉄道会社との連携
    鉄道会社からの正式な依頼であり、安全確保体制に協力を得られるか。
  5. コストと時間
    Lv3.5取得に伴うコスト(機体、ライセンス、申請)を許容できるか。

これらの要素を考慮し、最も効率的かつ安全で、コストも抑えられるレベルは何かを判断します。

国交省への事前相談

「Lv2で可能ならLv2で…」という国交省の方針を踏まえ、申請前に必ず国土交通省への事前相談を行うことを推奨します。

具体的な飛行計画を提示し、どのレベルの飛行許可が適切か、必要な安全対策は何かを確認できます。

これにより、無駄な労力や時間を費やすことなく、最適な申請へと進むことが可能となります。

専門家活用の勧め

ドローンを用いた鉄道点検は、その公共性の高さから、特に厳格な安全性が求められます。

行政書士のサポート

ドローン関連の許認可を専門とする行政書士は、皆様のドローン事業を強力にサポートします。

  • 最適な飛行レベルの選定
    鉄道点検の具体的なニーズをヒアリングし、Lv2とLv3.5のどちらが最適か、適切なレベルを判断します。
  • 申請書類の作成支援
    複雑な許可申請書類の作成をサポートし、航空局の審査基準に合致するよう調整します。
  • 鉄道会社との連携支援
    鉄道会社との調整や、特例的な飛行条件に関する相談を支援します。
  • 安全管理体制のアドバイス
    飛行マニュアルの作成や、緊急時対応計画など、実効性のある安全体制構築について助言します。

安易に高レベルの許可を目指すのではなく、事業内容とリスクに見合った最適なレベルで安全を確保することが、持続可能なドローン事業の鍵です。

鉄道点検という重要な分野でドローンを安全かつ効率的に活用するため、許可申請はぜひ専門家へご相談ください。

行政書士矢野法務事務所は「高難度の申請を専門とする事務所」です。

全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。

 

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