
証明書不携帯で引返した機長に学ぶドローン
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
【技能証明不携帯】に気づき旅客機が名古屋空港に引返しました。操縦者は技能証明と身体検査証明を乗務時には携帯する義務。出社時に彼らは「技能証明保持や健康状態他」を卓上に置いた現物で相互確認するそうです。デジタル時代に紙の携帯…。エアマンシップの尊さの一方で、色々考えさせられます。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) February 16, 2025
ドローンを安全かつ適法に運用するためには、その操縦者が適切な資格を有し、それを証明する書類を常に携帯していることが不可欠です。
この「携帯義務」は、ドローンに限らず、空を飛ぶあらゆる航空機の安全運航における根幹をなす原則です。
そしてその重要性やそれを支える厳格な確認体制には、私たちが学ぶべき多くの教訓が隠されています。
先日、Xに投稿しましたが、驚くべきことに、旅客機が操縦者の「技能証明不携帯」に気づき、名古屋空港に引き返したという事例がありました。
これは一見すると単純な「不携帯」というミスが、航空機の安全に関わる重大な事態として、いかに大きな影響をもたらすかを示しています。
有人航空機の操縦者は、乗務時に技能証明と身体検査証明を携帯する義務があり、出社時には「技能証明保持や健康状態他」を卓上に置いた現物で相互確認するそうです。
デジタル化が進む現代において「紙の携帯…」と疑問を抱くかもしれませんが、そこには「エアマンシップ」という航空のプロ意識が息づいています。
このページで分かること
旅客機引き返しの教訓
旅客機が技能証明不携帯という理由で出発空港へ引き返すという事態は、航空業界では極めて異例であり、その影響は甚大です。
- 運航への多大な影響
大きな遅延が発生し、それに伴う他のフライトへの波及、航空管制への影響、燃料の無駄な消費など、運航全体に大きな支障をきたします。 - 経済的損失
航空会社にとって、運航の遅延や中止は多大な経済的損失に直結します。 - 乗客への影響
乗客は、予期せぬ遅延により移動計画が狂い、負担を強いられます。 - 信頼問題
航空会社の安全管理体制に対する社会的な信頼が問われかねない、深刻な事態です。
このような事態の原因が、書類の「不携帯」という、基本的なルールの欠落であったことは、私たちドローン操縦者にとっても、法令遵守の徹底がいかに重要かを再認識させる重い教訓となります。
「携帯義務」と「相互確認」の徹底
有人航空機のパイロットは、航空法(航空法施行規則第58条等)により、乗務時に「技能証明」(操縦士免許)と「航空身体検査証明」を常に携帯することが義務付けられています。
これは、彼らがその飛行を行う資格と健康状態を、いつでも公的に証明できるようにするためです。
そして、その携帯義務を実効性のあるものとするのが、航空業界の厳格な「相互確認」の習慣です。
投稿にもあったように、パイロットたちは「出社時に彼らは『技能証明保持や健康状態他』を卓上に置いた現物で相互確認」したり見せ合ったりというプロセスを徹底しています。
- ヒューマンエラーの防止
操縦者同士が互いに確認し合うことで、うっかりミスを防ぐ「最後の砦」となります。これは、安全に対する意識を集中させ、見落としを防ぐための「指差し呼称」など、長年培われた安全文化の一部です。 - 責任の共有
相互確認は、安全をチーム全体で担保するという意識を醸成し、個々の責任感を高めます。
この厳格な確認体制は、「絶対にミスを許さない」という航空安全への強い意志の表れです。
デジタル時代における「紙」の意義
「デジタル時代に紙の携帯…」という問いかけをしましたが、有人航空業界において、いまだ「紙の証明書」の現物確認が重視される背景には、以下のような実用的な意義があると考えられます。
- 確実な認証性
紙の現物であれば、電源やネットワーク環境に左右されずに、いつでも確実に資格を証明できます。デジタルトラブルのリスクがありません。 - 視覚的な確認のしやすさ
現場での迅速な相互確認において、紙の書類は視覚的に分かりやすく、直感的に情報を把握できます。 - 歴史と慣習
長年の航空安全の歴史の中で培われ、信頼性の高い確認プロセスとして定着している側面もあります。
ドローンに関する証明書も、現在はDIPS(ドローン情報基盤システム)でデジタルデータ化されていますが、飛行許可・承認書や機体登録証明書、国家資格の技能証明書などは、依然としてその写しを含め、携帯が求められる場面があります。
将来的には完全なデジタル化が期待されますが、その際には、オフラインでの確実な提示方法やセキュリティの確保が課題となるでしょう。
ドローン業界への示唆
旅客機の事例は、私たちドローン事業者にも多くの示唆を与えます。
- ドローン操縦者の携帯義務: ドローン操縦者にも、以下のような書類を携帯する義務があります。
- 国土交通大臣の飛行許可・承認書(その写しを含む)
- 機体登録証明(記号の機体本体への標示)
- 国家資格の技能証明書(その写しを含む) これらの携帯義務は、有人航空業界のそれと同じく、ドローンの安全運航を担保する「最後の砦」です。
- 相互確認の導入: ドローン事業者やチームで飛行を行う場合、フライト前の機体、操縦者、そして書類の「相互確認」体制を導入することは、ヒューマンエラーを防ぎ、安全性を高める上で非常に有効です。
「エアマンシップ」という意識
航空業界には、パイロットや客室乗務員、整備士など、航空従事者全てに求められる高度なプロ意識、責任感、安全への揺るぎないコミットメントを表す「エアマンシップ」という概念があります。
単なる技術的なスキルだけでなく、法令遵守、常に安全を最優先する倫理観、そして予期せぬ事態に対応できる判断力といった、多面的な資質を含みます。
ドローン操縦者も、この「エアマンシップ」の精神を持つことが強く求められます。
自らの操縦が社会に与える影響の大きさを自覚し、法令遵守と安全への意識を常に高く持つことこそが、真のドローンのプロフェッショナルを形作り、ドローン産業の健全な発展を支える基盤となるでしょう。
まとめ
旅客機引き返しという事例は、航空安全における「携帯義務」の絶対性と、それを支える厳格な確認体制の重要性を明確に示しました。
この教訓は、ドローン業界にもそのまま当てはまります。
ドローン操縦者も、飛行許可・承認書や技能証明書などの携帯義務を徹底し、フライト前の相互確認体制を導入するなど、有人航空業界の「エアマンシップ」に根ざした安全文化を取り入れることが不可欠です。
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