
ドローン安全責任、運航者は背負い切れるか
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
【公共の空域】を使用する安全責任は運航者が全てを背負い切れるものでしょうか。運航計画や許可申請など煩雑な準備手続き等は、ある意味他者の為の行為でもありその運航者だけが背負うには大きな負荷と言えます。この観点からも、飛行計画のリアルタイム承認や安全調整を実現するUTMが急がれます。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) January 21, 2025
ドローンが社会の様々な分野で活躍の場を広げるにつれて、運航者が負う安全責任の重みも増しています。
ドローンが使用する空域は、鉄道や道路と同じく公共の空間であり、その安全確保は社会全体の課題です。
しかし、「公共の空域を使用する安全責任は運航者が全てを背負い切れるものでしょうか」という問いは、ドローン産業の成長において避けて通れない、根源的な問題ではないかと思うのです。
私自身の意見として投稿しましたが、「運航計画や許可申請など煩雑な準備手続き等は、ある意味他者の為の行為でもあり、その運航者だけが背負うには大きな負荷」とも言えるのではないでしょうか。
この負荷の限界を認識し、その解決策としてUTM(無人航空機管制システム)の導入が不可欠であると感じています。
このページで分かること
「公共の空域」と運航者の責任
ドローンが利用する空域は、航空法で定められる管制空域、人口集中地区(DID)、そして特定のイベント上空など、多岐にわたります。
これらは、不特定多数の人が地上で活動し、あるいは航空機が航行する、まさに「公共の空域」です。
この共有の空間をドローンが使用する際、その安全確保に関する最終的な責任は、操縦者を含む運航事業者(運航者)に課せられています。
しかし、その責任の重さに対して、運航者一人が、あるいは一つの事業体だけで全てを「背負い切れるもの」なのでしょうか。
準備手続きは「他者の為の行為」
ドローンの運航計画の策定や、飛行許可・承認申請といった準備手続きは、非常に煩雑であり、膨大な時間と労力を要します。
- 飛行計画書の作成
飛行の目的、日時、場所、経路、機体、操縦者、補助者、安全対策、緊急時対応などを詳細に記述します。 - リスクアセスメント
飛行場所の環境や、飛行方法に伴うリスクを洗い出し、それに対する具体的な対策を講じます。 - 関係機関との調整
航空局だけでなく、空港事務所、自衛隊、警察、自治体、土地管理者など、多数の関係機関との事前調整が必要となる場合があります。 - DIPSへの入力・管理
これらの情報をドローン情報基盤システム(DIPS)に入力し、最新の状態を維持します。 - 飛行日誌の記録
飛行後の記録義務も課せられます。
これらの手続きは、単に自身の飛行の許可を得るためだけではありません。
他の航空機との衝突を防ぎ、地上の人々の安全を守り、空域全体の秩序を維持するという、社会全体の公共の利益に資する側面を持ちます。
つまり、これらの「煩雑な準備手続き」は、ある意味で「他者の為の行為」でもあると思うのです。
この公共性ゆえに、その全ての負荷を運航者だけが背負うには、大きな限界があるのではないでしょうか。
UTMが実現する「責任の最適化」
この「背負いきれない負荷」を解決し、ドローンの安全運航をより確実にするために、「飛行計画のリアルタイム承認や安全調整を実現するUTM(無人航空機管制システム)が急がれます」。
UTMとは、無人航空機のための交通管理システムであり、有人航空機を管制するATM(航空交通管理)の概念をドローンに適用したものです。
UTM導入により、運航者の負担は以下のように軽減され、安全責任が「最適化」されると期待されます。
- 飛行計画のリアルタイム承認
DIPSのような既存の事前申請システムがUTMと連携することで、煩雑な手作業による調整が減り、自動化されたシステムで迅速に承認プロセスが進むでしょう。これにより、運航者が個別に各機関と調整する手間が大幅に軽減されます。 - 安全調整の自動化・効率化
他のドローンや有人機との空域干渉をUTMがリアルタイムで検知・調整します。運航者が個別に全ての航空情報を確認する負担を軽減し、より安全な空域利用が可能になります。
- 情報共有の効率化
飛行中のドローンの位置情報や状況がUTMを通じて自動的に共有され、管制機関や他の空域利用者への情報伝達がスムーズになります。
ここで重要なのは、UTMは運航者の責任を完全に「移譲」するものではない、という点です。
運航者は引き続き最終的な安全責任を負いますが、UTMはあくまでその責任を「支援」し、「補完」することで、個々の運航者が背負う「負荷」をシステムによって「最適化」する役割を担います。
「背負いきれない負荷」の解決へ
現状の複雑な手続きや、公共の空域で負う安全責任の全てを、運航者だけが背負い切れるものではないと、私自身も強く感じています。
だからこそ、UTMのようなシステムによるサポートが不可欠なのです。
UTMの導入は、個々の運航者の負担を軽減するだけでなく、より広範なドローン活用を可能にします。
ドローンが社会インフラとして安全に機能するためには、運航者の努力だけでなく、システムによるサポートと、責任の合理的な分担が不可欠です。
まとめ
ドローンが公共の空域を利用する際の安全責任は極めて重く、運航者の煩雑な準備手続きは社会全体の安全に寄与する「他者の為の行為」でもあるため、その負荷は計り知れません。
この「背負いきれない負荷」を解決し、安全なドローン社会を実現するためには、飛行計画のリアルタイム承認や安全調整を可能にするUTMの導入が不可欠です。
UTMは、運航者の安全責任を「移譲」するものではなく、「支援」し「最適化」することで、個々のドローンがより安全かつ効率的に空域を利用できる未来を拓く鍵となります。
行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。 全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。 【免責事項】
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