ドローン業務委託先チェックの要点と対策
このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。
映像プロダクションに聞きました。①発注先のコンプライアンスチェックをやっているか→はい。②いつから→昨年から③何を→飛行記録・過去の飛行計画・マニュアルの提出チェック④不備あった場合→絶対指名しない⑤何故チェックする?→大手クライアントからの要求と通報対策
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) August 15, 2023
先日、ある映像プロダクションの方から、ドローンを使った撮影業務の発注先選定についてお話を伺いました。
興味深かったのは、発注先のドローンパイロットやチームに対して、以前にはなかった厳しいコンプライアンスチェックを実施している、というお話でした。
具体的には「昨年から」チェックを開始し、「飛行記録、過去の飛行計画、マニュアルの提出」を求めているとのこと。
そして、「不備があった場合は絶対指名しない」という徹底ぶりです。
なぜそこまで厳格に行うのか尋ねると、「大手クライアントからの要求」と「通報対策」であるとのお答えでした。
このお話は、ドローンを使って業務を受注されている方々、そしてこれからドローンパイロットに業務を発注しようと考えている企業双方にとって、非常に示唆に富む内容です。
なぜ今、このようなチェックが厳しく行われるようになっているのでしょうか。
このページで分かること
なぜ今チェック?
ドローンの利活用が広がるにつれて、残念ながら事故やトラブルの事例も散見されるようになりました。
こうした状況を受けて、航空法をはじめとする関連法規はより厳格になり、ドローンを取り巻く環境は変化し続けています。
高まるコンプラ意識
ドローンによる事故は、機体の損壊や人身・物損被害に繋がるだけでなく、無許可飛行や危険な飛行に対する通報リスクも伴います。
このようなリスクを回避するため、企業側にはより高いコンプライアンス(法令遵守)意識が求められるようになっています。
これはドローンを活用する企業だけでなく、業務を委託する映像プロダクションのような事業者にも波及しています。
発注側のリスク回避
ドローン業務を発注する側にとって、委託先が法令や安全基準を守らずに事故やトラブルを起こした場合、発注側も無関係ではいられません。
事故発生時の連帯責任を問われたり、企業イメージが著しく低下したり、SNS等での炎上や風評被害に繋がる可能性もあります。
前述の映像プロダクションの事例のように、最終的なクライアント(特に大手企業)から、業務を委託する際にドローンに関するコンプライアンス体制を確認するよう要求されるケースが増えています。
これは、クライアント自身のリスク管理の一環であり、業務の信頼性を担保するために不可欠となっているためです。
また、近隣住民等からの通報リスクを低減するためにも、事前に委託先のコンプライアンス体制を確認しておくことは、発注側にとって重要な対策となります。
チェックされる項目
では、具体的にどのような点がチェックされるのでしょうか。
映像プロダクションの方がおっしゃっていた項目は、ドローン業務の安全性を確認する上で非常に重要な要素です。
提出を求められるもの
- 飛行記録
これまでの飛行日時、場所、目的、飛行時間、期待の状態などを記録したものです。
これは操縦者の経験や機体の管理状況を示す基本的な資料となります。 - 過去の飛行計画書・許可承認書類
特定の空域や方法で飛行する際に、航空法に基づき国土交通大臣の許可や承認を得るために提出した書類です。
これらの書類を適切に作成し、許可承認を得て業務を行っているかを確認します。 - 安全運航管理マニュアル
安全にドローンを運航するための具体的な手順や体制を定めたものです。
緊急時の対応や機体トラブル発生時のフローなどが含まれます。
これらに加えて、発注側によっては以下の項目も確認する場合があります。
- 保険加入状況
万が一の事故に備え、十分な賠償責任保険に加入しているか。 - 操縦者の技能証明
国家資格である無人航空機操縦者技能証明や、民間の認定資格などを有しているか。 - 機体の登録情報・点検記録
国が管理する機体登録制度への登録の有無や、定期的な機体点検を実施しているか。 - 安全管理体制
安全管理者を定めているか、チームとしての安全管理体制は構築されているか。
これらをチェックする意味
これらの書類や情報をチェックするのは、単に形式的な確認ではありません。
これまでの飛行実績や計画、マニュアルといった提出物から、ドローンパイロットやチームが、どれだけ安全に対する意識を持ち、具体的な体制を構築しているのかを判断しようとしているわけです。
法令遵守はもちろん、予期せぬ事態にも対応できる準備ができているかを見極めることで、安心して業務を任せられる相手なのかを評価しています。
受注側への影響と対策
発注側によるコンプライアンスチェックの厳格化は、ドローン業務を受注する側にとって無視できない変化です。
チェックに通るには
今後、ドローンを使った業務を受注していくためには、「いつでもチェックされても大丈夫」な体制を日頃から構築しておくことが不可欠です。具体的には、以下の点を徹底する必要があります。
- 飛行記録を正確に記帳する
いつ、どこで、どのような目的で飛行したのか、機体の状態はどうだったのかなどを、正確かつ漏れなく記録します。 - 安全運航管理マニュアルを整備・遵守する
自身の飛行スタイルや使用機体に合わせたマニュアルを作成し、それを遵守した飛行を行います。必要に応じてマニュアルはアップデートします。 - 許可承認手続きを確実に実施・保管する
許可や承認が必要な飛行の場合は、必ず事前に手続きを行い、交付された書類は適切に保管しておきます。過去の書類も整理しておくと良いでしょう。 - 最新の法規制情報を常に把握する
ドローンに関する法規制は改正されることがあります。常に最新の情報を入手し、自身の飛行やマニュアルに反映させます。 - 賠償責任保険に加入する
万が一の事故に備え、業務内容に見合った十分な補償内容の保険に加入しておきます。 - 国家資格等の取得を検討する
国家資格は、一定水準以上の知識と技能を有することの客観的な証明となります。これは発注側からの信頼を得る上で非常に有利に働きます。
不備は即、機会損失
前述の映像プロダクションが「不備があった場合、絶対指名しない」としているように、コンプライアンス体制に不備があるということは、それだけでビジネスチャンスを失うことに直結します。
ドローンを使った業務は、専門性だけでなく、安全と信頼性が強く求められる領域になってきています。
コンプライアンスは、もはや単なる義務ではなく、プロフェッショナルとして業務を継続していくための必須条件であり、競争力の一つと言えるでしょう。
結論
ドローン業務の発注側が行うコンプライアンスチェックは、業界全体の安全意識の向上を示すものです。
これは、発注側にとってはリスク管理と信頼性確保のために、受注側にとっては自身の信頼性を示す重要な機会となります。
ドローンを使って業務を受注されている方々は、日頃から自身のコンプライアンス体制を見直し、必要な書類を整備しておくことが、今後のビジネスにおいて非常に重要になります。
「いつでもチェックを受けて、自信を持ってクリアできる」状態を目指しましょう。それが、安全なドローン業務の遂行と、安定したビジネスに繋がる道です。
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