
ダム空撮はなぜ止まる?許可の落とし穴|矢野事務所
そのダム、本当に最後まで成立すると言えますか?
ダムは、ドローン空撮の被写体として非常に魅力があります。
巨大な構造物、山間部の地形、水面、放流設備、周囲の自然との一体感。
空から見れば、その機能美はさらに際立ちます。
しかし実務では、
「撮りたい」「許可を取りたい」だけでは、ダム空撮は成立しません。
ダムごとに管理者が異なり、周辺環境も異なり、現地で維持すべき条件も異なります。
つまり、ダム空撮で本当に問われるのは、
「飛ばせるか」ではなく、「その運航が最後まで成立するか」
です。
このページで分かること
ダム空撮は全国一律の手続では決まらない
ダムでドローンを飛ばす場合、まず押さえるべきなのは、
ダムごとに管理者も運用も異なる
という点です。
管理主体は、国、都道府県、自治体、電力会社などさまざまです。
そのため、
- ドローン飛行を明確に禁止しているダム
- 事前相談により個別判断するダム
- 撮影目的や飛行範囲により対応が変わるダム
- 観光客や見学者の動線を重視するダム
- 重要施設として安全管理を強く求めるダム
があります。
つまり、
別のダムで飛ばせたから、このダムでも飛ばせるとは言えません。
まず公式情報を確認する
ダム空撮を検討する場合、最初に行うべきことは公式情報の確認です。
対象となるダムの公式サイト、管理事務所、管理主体のページを確認し、
ドローン飛行や撮影に関する記載がないかを見ます。
中には、ドローンでの撮影を明確に断っているダムもあります。
このような場合、
航空法上の許可があるかどうか以前に、その場所での運航は成立しません。
まずは、
- ドローン飛行の可否
- 撮影許可の要否
- 管理事務所への事前連絡の要否
- 飛行可能区域や禁止区域
- 観光客・見学者への影響
を確認する必要があります。
管理者に確認すべきこと
公式サイトに明確な記載がない場合や、記載だけでは判断できない場合は、管理者への確認が必要です。
このとき、単に
「ドローンを飛ばしてよいですか」
と聞くだけでは足りません。
確認すべきなのは、
- 飛行目的
- 飛行日時
- 飛行範囲
- 離着陸場所
- 第三者管理の方法
- 見学者や通行人への影響
- 異常時の停止判断
- 提出すべき資料の有無
です。
なぜなら、ダム管理者が知りたいのは、
「飛ばしたいかどうか」ではなく、「その飛行が管理上支障なく成立するか」
だからです。
ダム空撮が止まる典型場面
ダム空撮では、手続を進めていても現地条件によって止まることがあります。
管理者の確認は取れていても見学者動線が閉じない
ダムは観光地として開放されていることがあります。
展望台、歩道、駐車場、見学ルート、資料館などがある場合、
人の流れを完全に閉じることは簡単ではありません。
例えば、
- 飛行経路の下を見学者が通る
- 展望台から人が動く
- 駐車場の出入りが読めない
- 釣り人や散策者が周辺にいる
といった状況です。
この場合、管理者と話ができていても、
第三者管理が維持できなければ、運航は成立しません。
関連して、第三者管理が崩れる典型場面はこちらでも整理しています。
現地の風や地形で安全余裕が崩れる
ダムは山間部にあることが多く、風の変化を受けやすい場所です。
谷筋、堤体周辺、水面上、放流設備周辺では、風向や風速が読みづらいことがあります。
計画上は問題なく見えても、
- 現地で風が強い
- 機体の位置が見えにくい
- 水面上で距離感が取りにくい
- 退避場所が限られる
ということがあります。
この場合、
飛行許可があるかどうかではなく、現地で安全余裕を維持できるか
が問題になります。
ダム管理上の支障が後から出る
ダムは単なる景観施設ではありません。
水管理、防災、発電、点検、巡視などの機能を持つ施設です。
そのため、当初は問題なさそうに見えても、
- 点検作業が入る
- 管理車両が通る
- 放流や水位管理の都合がある
- 施設側の優先業務が変わる
ことがあります。
この場合、
撮影側の都合より、施設管理上の必要性が優先されます。
つまり、現地変更に耐えられない計画は成立しません。
現地変更で運航が崩れる構造は、こちらでも整理しています。
航空法の許可とダム管理者の確認は別問題
ダム空撮で特に誤解されやすいのが、
航空法の許可と、ダム管理者の確認は別の問題
という点です。
航空法上、許可・承認が必要になる可能性があるのは、例えば次のような場合です。
- 150m以上の空域
- DID地区上空
- 空港等周辺空域
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人又は物件から30m未満の飛行
- 催し場所上空の飛行
一方で、ダム管理者の確認は、
- その施設で飛行してよいか
- 管理上支障がないか
- 見学者や関係者に影響しないか
- 施設運用と干渉しないか
という問題です。
つまり、
航空法上の許可があっても、ダム管理上成立しないことはあります。
逆に、ダム管理者が前向きでも、航空法上の許可・承認が必要になる場合もあります。
この二つを分けて整理しなければ、説明ができません。
許可書だけでは説明にならない
ダム管理者や関係者に対して、DIPSの申請書や許可通知を見せるだけでは、説明として足りないことがあります。
なぜなら、許可書は
その飛行が現地で成立することまで証明しているものではない
からです。
必要なのは、
- どこを飛ぶのか
- 誰をどう管理するのか
- どこで離着陸するのか
- 見学者や通行人との関係をどう整理するのか
- 条件が崩れたときにどこで止めるのか
を説明できる資料です。
許可書だけでは説明にならない理由は、こちらでも整理しています。
ダム空撮で見るべき成立条件
ダム空撮を成立させるには、次の観点を事前に整理する必要があります。
- 対象ダムがドローン飛行を認めているか
- 管理者が求める手続や資料は何か
- 飛行範囲と離着陸場所が管理上支障ないか
- 見学者・通行人・関係者との距離を維持できるか
- 山間部特有の風や視認性に対応できるか
- 条件変更時に中止判断ができるか
- 航空法上の許可・承認が別途必要か
これらは、当日の判断に委ねるものではありません。
事前に運航計画の段階で整理し、第三者に説明できる状態にしておく必要があります。
運航成立性の考え方については、こちらで整理しています。
まとめ
ダム空撮は魅力的ですが、単純な許可取りでは済まない案件です。
ダムごとに管理者が異なり、現地条件も異なり、第三者管理や施設運用との関係も変わります。
したがって実務では、
「許可が取れるか」ではなく、「そのダムで、その条件で、最後まで成立するか」
を先に見なければなりません。
そのダム空撮、本当に成立すると言えますか。
その判断、第三者に説明できますか。
◆ ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する ◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています
