
ドローンショー、申請と現場の重労働
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
【Dショーのdips申請】でフーフー言っています。数百機分の機体登録→申請用登録をまた数百→更に追加基準の数百…。ただ2回目以降は複写できます。ところが「現場」はそうはいきません。数百機を搬出・搬入。地面配列と撤収。これを訓練リハ本番で毎回。そういう商売…と言ってしまえばそれ迄ですが。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) June 22, 2025
夜空を鮮やかに彩るドローンショーは、今やイベントの目玉として絶大な人気を誇ります。
しかし、その華やかで幻想的な演出の裏側には、想像を絶するほどの地道な事務作業と、大規模な現場作業という、二つの大きな「重労働」が存在します。
先日、私自身の情報としてSNSでも触れましたが、数百機規模のドローンショーのDIPS(ドローン情報基盤システム)申請を担当し、「フーフー」言ってしまうほどその煩雑さを痛感しました。
数百機分の機体登録→申請用登録をまた数百→更に追加基準の数百、という気の遠くなるような入力作業です。
DIPSでは2回目以降は複写できる機能がありますが、それでもその手間は相当なものです。
しかし、「現場」ではDIPSの複写機能のように簡単にはいきません。
「数百機を搬出・搬入。地面配列と撤収。これを訓練、リハ、本番で毎回」こなすのです。
「そういう商売…と言ってしまえばそれ迄ですが」、この見えない労力こそがドローンショーの現実です。
このページで分かること
DIPS申請、数百機の壁
ドローンショーは、多数の無人航空機を同時に、かつ複雑なパターンで飛行させるため、航空法上の最も厳格な許可・承認を必要とします。
その申請手続きの多くはDIPSを通じて行われますが、数百機規模のショー(今回は210機でした)となると、その事務負担は想像を絶します。
- 機体登録の壁
ドローンショーで使用する一機一機のドローンは、それぞれが個別に機体登録されている必要があります。数百機あれば、文字通り数百回分の登録作業が必要です。 - 申請用登録の壁
機体登録が完了したとしても、飛行許可申請書の中で、使用する全機体の情報を改めてDIPSに入力し、申請用として登録する作業が発生します。これもまた数百機分です。 - 追加基準入力の壁
各機体や、夜間飛行、目視外飛行といった複合的な飛行形態に応じた安全基準に関する詳細な情報も、一機ずつ、あるいは機種ごとに必要となり、その入力も手間がかかります。
これらの入力作業は、特にドローンショーを初めて申請する場合に膨大な時間を要します。
DIPSの複写機能は、2回目以降の申請で大きな助けとなりますが、それでも一つ一つの機体情報を確認し、変更点を更新する作業は避けられません。
現場作業、労力の極み
DIPS申請の事務作業の裏で、ドローンショーの現場では、さらに過酷な物理的労力が伴います。
- 搬出・搬入の重労働
数百機ものドローン本体、それぞれのバッテリー、充電器、制御機器、安全ネット、標識、発電機など、大量の機材を毎回、保管場所からショー会場へ運び込み、ショー終了後には撤収して戻す作業は、まさに肉体労働の極みです。 - 精密な地面配列
ドローンショーの演出は、ドローンが夜空で光の絵を描くものです。そのため、地上では、ドローンを一機ずつ、演出に必要な精密な位置に配置する作業が求められます。GPSによる自動配置機能があるとはいえ、最終的な微調整や、トラブル時の手動での対応も伴います。 - 訓練・リハ・本番の繰り返し
ドローンショーの成功には、徹底した訓練飛行とリハーサルが不可欠です。これらの作業は、本番と全く同じ、あるいはそれ以上の労力を伴い、「訓練、リハ、本番で毎回」繰り返されます。バッテリーの充電・交換、機体の点検、飛行データの確認なども、その都度発生し、膨大な時間と人手を要します。
これらの膨大な労力は、ドローンショー事業を行う上で避けられない現実であり、その「見えないコスト」は、華やかな演出の対価として正しく評価されるべきものです。
見えないコストと価値
DIPS申請の事務作業の煩雑さや、現場での物理的な労力は、ドローンショーの運営にかかる「見えないコスト」の代表例です。
これらのコストはショーの企画・演出費用や、機材費、人件費といった目に見える費用に加えて発生します。
しかし、これらの見えないコストや労力がなければ、安全かつ感動的なドローンショーを実現することはできません。
緻密な計画、正確なDIPS入力、そして現場での地道な作業一つ一つが、夜空に描かれる光の芸術を支え、観客に忘れられない体験を提供するための不可欠な要素です。
ドローンショーの報酬を評価する際には、単なる機材費や操縦費だけでなく、こうした見えない労力と、それを支えるプロフェッショナルの技術と安全管理体制も考慮されるべき価値として認識される必要があります。
大規模ドローン運用の課題
ドローンショーに限らず、数百機規模の多数機ドローン運用は、以下のような共通の課題を抱えています。
- 効率的な管理システムの構築
多数の機体、バッテリー、充電機器、その他関連機材といった資産を一元的に管理し、運用状況を効率的に把握するためのシステムが不可欠です。 - 現場作業の自動化・効率化技術の導入
将来的には、機体配置のロボット化や、自動充電システムの導入など、現場作業の負担を軽減し、効率を高めるための技術革新が期待されます。 - 熟練した現場スタッフの育成
高度な技術を持つ操縦者だけでなく、多数の機材を管理し、迅速な搬入出や精密な配置を行うロジスティクス能力を持つ現場スタッフの育成が不可欠です。 - リスクマネジメント体制の強化
多数の機体を同時に運用する中で発生しうるあらゆるリスク(機体間の衝突、システムエラー、外部からの影響など)を想定し、それを回避・軽減するための体制構築が求められます。
まとめ
ドローンショーの華やかな演出の裏には、DIPS申請の事務的な煩雑さと、それ以上に数百機規模のドローンを扱う現場での膨大な労力が存在します。
これらの見えないコストや労力こそが、ドローンショーというビジネスの現実であり、その価値を正しく評価することが重要です。
ドローンショーのさらなる発展のためには、DIPSのさらなる効率化はもちろんのこと、現場作業の自動化技術の導入、そしてそれを担うプロフェッショナルの育成が不可欠です。
行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。
全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。
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