ドローン運航の判断設計・体制構築

ドローン夜間目視外は補助者なしで成立するか|矢野事務所

結論から言えば、ドローンの夜間飛行・目視外飛行・補助者なしという組合せは、原則としてそのままでは成立しません。

ただし、絶対に不可能という意味ではありません。

問題は、「補助者を置かない」こと自体ではなく、補助者が担っていた地上の安全確認を、何によって代替し、どの水準で説明できるかです。

つまり、この論点は「飛ばせるか」ではなく、地上の安全を誰が、何で、どのように確認するのかという判断設計の問題です。

目視外飛行の基本的な成立条件については、まず目視外飛行の成立条件と判断整理で確認しておく必要があります。

本記事では、そのうえで夜間・補助者なしが重なった場合に、どこで判断が分かれるのかを整理します。

この場所で事故にならずに運航できるかは、条件によって変わります。

飛行条件を確認する

夜間目視外を補助者なしで行う難しさ

夜間目視外を補助者なしで行うことが難しい理由は明確です。

それぞれ単体でもリスクの高い要素が、同時に重なるからです。

  • 夜間飛行:機体・障害物・第三者の視認性が低下する
  • 目視外飛行:操縦者が機体を直接確認できない
  • 補助者なし:地上監視を担う人員を置かない

この三つが重なると、単純に言えば、空も見えにくく、機体も直接見えず、地上の第三者進入も人の目では確認しにくい状態になります。

この状態で「安全です」と言うだけでは足りません。

第三者が飛行経路下に入らないことを、どの方法で確認するのか。異常が起きたときに、誰が中止を判断するのか。通信・映像・機体状態をどのように監視するのか。

ここまで説明できなければ、夜間目視外の補助者なし飛行は運航として成立しません。

包括申請でそのまま通る話ではない

よくある誤解は、「補助者に代わる措置があれば包括でいけるのではないか」という考え方です。

確かに、補助者に代わる措置が認められる余地はあります。

しかし、重要なのは、代替措置を置いたという形式ではありません。

補助者が担っていた安全機能と同等以上の機能を、本当に果たせるのかが問われます。

看板、コーン、注意喚起だけでは、夜間目視外の補助者なし飛行を支えるには弱い場合があります。

なぜなら、夜間目視外では、次の確認がリアルタイムで必要になるためです。

  • 第三者が飛行経路下へ進入していないか
  • 機体の位置・姿勢・進行方向に異常がないか
  • 通信や映像伝送に異常がないか
  • 異常時に中止・帰還・着陸を即時判断できるか

この説明ができないまま「補助者なし」とすると、包括申請の枠で処理できる問題ではなくなります。

補助者なし目視外飛行の考え方については、補助者なし目視外飛行の考え方でも整理しています。

成立する可能性があるのはどのような場合か

夜間目視外を補助者なしで行う余地があるとすれば、それは補助者を単純に省略する場合ではありません。

必要なのは、補助者の代替ではなく、監視体制そのものの再設計です。

たとえば、次のような要素を組み合わせる必要があります。

  • 第三者進入を検知できる監視方法
  • 飛行経路下と周辺状況を確認できる映像・センサー等の仕組み
  • 通信不良・映像伝送不良時の中止基準
  • 機体異常時の帰還・停止・緊急着陸判断
  • 運航者・操縦者・監視担当者の役割分担
  • 夜間特有の視認性低下を前提にした運航条件

ここまで整理して初めて、「補助者なしでも同等以上の安全が確保できる」と説明できる可能性が出てきます。

単に人を置かないのではなく、人が担っていた確認・判断・中止機能を、別の方法でどう成立させるかが問われます。

包括か、レベル3かで判断が分かれる

夜間目視外を補助者なしで行う場合、最終的な論点は包括申請で成立するのか、それともレベル3の個別申請へ倒れるのかです。

判断の分水嶺は、第三者の進入を排除できるかどうかです。

  • 第三者の進入を排除できる:包括申請で整理できる可能性がある
  • 第三者の進入を排除できない:レベル3個別申請側で整理する可能性が高い

夜間かつ目視外の場合、この「第三者排除」の説明は非常に難しくなります。

なぜなら、現場に補助者を置かない以上、地上の安全を確認する手段を別に用意しなければならないからです。

そのため、実務上は、レベル3側に倒れる案件も多くなります。

ここで重要なのは、「包括で通したい」という希望ではなく、現場条件から見て、どちらの申請構造でなければ説明できないかです。

運航管理体制として説明できるか

夜間目視外の補助者なし飛行は、機体性能だけでは成立しません。

また、操縦者の技能だけでも足りません。

必要なのは、運航管理体制としての説明です。

具体的には、次の点を整理する必要があります。

  • 飛行開始前に誰が現場条件を確認するのか
  • 飛行中に誰が地上安全を確認するのか
  • 異常時に誰が中止を判断するのか
  • 通信・映像・機体異常を誰が監視するのか
  • 中止・帰還・緊急着陸の基準をどう定めるのか
  • 実施後にどのような記録を残すのか

これらが整理されていなければ、補助者なしという運用だけが先行し、安全管理の説明が空白になります。

夜間目視外のような高難度運航では、飛行ごとの場当たり判断ではなく、ドローン運航管理体制として説明できる状態にしておく必要があります。

矢野事務所での実務上の整理

矢野事務所では、夜間目視外を補助者なしで行いたいという相談について、最初から「できます」「できません」とは整理しません。

まず確認するのは、次の点です。

  • 飛行経路下に第三者が入り得る環境か
  • 補助者が担うべき安全機能は何か
  • その安全機能を代替できる監視方法があるか
  • 包括申請の範囲で説明できるか
  • レベル3個別申請として設計すべきか
  • 異常時の中止判断を誰が担うか

この整理をしないまま、単に「補助者なしで飛ばしたい」と考えると、申請段階または運航段階で止まります。

重要なのは、補助者を置くか置かないかではありません。

補助者を置かない場合に、補助者が担っていた安全確認をどのように再設計するかです。

まとめ

ドローンの夜間目視外飛行を補助者なしで行うことは、原則として簡単には成立しません。

夜間、目視外、補助者なしという三つの条件が重なるため、地上安全、機体監視、異常時判断をどのように担保するかが問われます。

成立の可能性があるとすれば、補助者の単純な省略ではなく、監視体制そのものを再設計できる場合です。

そして最終的には、包括申請で整理できるのか、レベル3個別申請として設計すべきなのかを見極める必要があります。

夜間目視外を補助者なしで成立させたい場合は、「飛ばせるか」ではなく、「誰が地上安全を説明できるのか」から整理する必要があります。

◆ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する◆

許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません

ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。

  • 第三者管理は維持できますか?
  • 監視体制は機能しますか?
  • 中止判断は定義されていますか?
  • 関係者への説明は通りますか?

これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。

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