ドローン夜間の目視外飛行が補助者なしで可能
このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。
夜間の目視外を補助者なしで行う事は可能でしょうか?包括では無理なはずです。ところが「地上の安全を確保する補助者に代わるもの」…ならばOKとなりました。具体的には審査要領4-3-2-(3)(bの措置です。このほどRe:フライトコンサルティングの尾関代表が汗をかかれ当局から正式回答を得られました。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) September 13, 2024
この投稿で触れた「夜間」「目視外」「補助者なし」という、これまで非常に難しかった組み合わせでの飛行が、ある条件を満たせば可能になるという、最新の当局の見解について解説します。
これによって、どんな可能性が開けるのか?
そして、それを実現するためには何が必要なのか?
このページで分かること
補助者の役割
まずは、今回の話の前提となる、ドローンの飛行ルールと「補助者」の役割について簡単におさらいしましょう。
どんな飛行に許可・承認が必要?
航空法では、ドローンを飛ばす際にいくつかの禁止空域や飛行方法が定められています。その中でも、今回のテーマに関わるものとして、主に以下の飛行には国土交通大臣の許可・承認が必要です。
- 空港周辺や150m以上の高さの空域
- DID地区(人口集中地区)上空
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人または物件から30m未満の飛行
これらの飛行は、通常よりもリスクが高いため、安全を確保するための措置を講じ、国の審査を経てから行う必要があります。
なぜ多ケースで補助者が必要?
特に「夜間飛行」や「人・物件から30m未満の飛行」といった、地上の第三者へのリスクが懸念される飛行においては、安全対策として「補助者」の配置が求められるケースが多くあります。
補助者の主な役割は、地上の安全確保です。
具体的には、飛行エリアや万が一ドローンが落下した場合に影響が及ぶ可能性のあるエリアに第三者が立ち入らないよう監視したり、必要に応じて声かけをしたり、といった「立入管理措置」の一翼を担います。
操縦者だけでは周囲全体の安全確認が難しい状況で、補助者は地上で操縦者をサポートし、リスクを低減させる重要な役割を担っているのです。
夜間・目視外・補助者なし…その難しさ
包括申請ではなぜ難しかった?
これまでの一般的な許可・承認のフレームワーク、特に「包括申請」では、「夜間」かつ「目視外」の飛行を「補助者なし」で行うことは、原則として認められていませんでした。
その理由は明快で、夜間や目視外といった、そもそも操縦者からの視覚情報が著しく限られる状況で、さらに地上の安全を直接監視・確保する補助者もいないとなると、地上の第三者に対する安全をどのように担保するのか、という点が大きな懸念となるからです。
包括申請は標準的な安全対策に基づいているため、この「夜間・目視外・補助者なし」という高リスクな組み合わせをカバーする想定になっていなかったのです。
個別の申請で厳格な対策を講じれば理論上は不可能ではありませんでしたが、そのハードルは極めて高いものでした。
補助者に代わる措置が道を開く
審査要領が示す新たな可能性
しかし、ここにきて状況が変わる、非常に重要な当局の見解が示されました。
それが、国土交通省が発行している「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」の「4-3-2-(3)(b)」という条項が持つ意味合いの明確化です。
b)無人航空機を飛行させる際の安全管理体制
(マニュアルの)記載内容の例としては、以下のとおり。
●安全飛行管理者の選定
●飛行形態に応じた補助者の役割分担及び配置数
●補助者の選定方法
●第三者の立入りを制限する区画(立入管理区画)の設定方法立入管理区画の範囲を明示する方法の例は、以下のとおり。
・塀やフェンス等の設置
・飛行範囲、周辺環境に応じ、関係者以外の立入りを制限する旨の看板、コーン等の設置
・緊急時の連絡体制
この条項は、標準的な安全対策(この場合は補助者の配置など)を行うことが困難な場合に「これと同等以上の安全を確保することができると認められる措置」を講じることで、代替として認められる場合がある、という内容を含んでいます。
今回の件は、「夜間・目視外」の飛行において「地上の安全を確保するという補助者の役割に代わる、同等以上の安全を確保できる技術的または運用的な措置」を講じることができれば、必ずしも人間の補助者を配置しなくても許可される可能性がある、という当局の正式な回答が得られた、という点で画期的なのです。
補助者に代わる措置の具体策
では、「補助者に代わる同等以上の安全を確保できる措置」とは、具体的にどのようなものが考えられるのでしょうか?
審査要領に具体的なリストがあるわけではありませんが、当局が安全性を評価する上で考慮しうる要素としては、以下のようなものが挙げられます。
- 高性能な監視システム
飛行範囲直下の第三者の立ち入りを自動で検知・警告できるセンサーやAI画像解析システムなど。 - 機体の高機能
高精度な障害物回避機能、複数のセンサーによる状況把握能力、冗長化された制御システムなど、機体自体が高い安全性を有していること。 - 精密な飛行計画
第三者の立ち入りの可能性が低いルートや高度の設定、緊急時の自動帰還・着陸システム、事前に安全を確認した離着陸場所の設定。 - 複数人での運用
操縦者とは別に、監視モニター等で地上の安全や機体状況をリアルタイムで確認する役割の者を配置する(ただし、これは「補助者」の定義とは異なる、より技術的な監視担当)。 - 関係者との連携
警備員や施設管理者と密に連携し、第三者の立ち入りを事前に把握・管理できる体制。
これらの措置を単独で、あるいは組み合わせて講じることで、「人間の補助者が地上で監視するのと同等か、それ以上の安全を確保できる」ことを申請時に具体的に、かつ論理的に証明する必要が出てきます。
見解が持つ意味と今後の展望
新たな飛行形態への道
この当局見解の明確化は、特に夜間や目視外でのドローン活用を考えている事業者にとって、非常に大きな意味を持ちます。
例えば、以下のような分野でのドローン活用が、より現実的になる可能性があります。
- 夜間のインフラ点検: 橋梁やプラントなどの夜間点検
- 夜間の警備・監視: 広大な敷地や重要施設の夜間巡回
- 夜間の捜索・救助: 行方不明者の夜間捜索
- 夜間の空撮: これまで難しかった夜景などの空撮
これらの飛行で毎回人間の補助者を多数配置するのが困難な場合でも、「補助者に代わる措置」を講じることで、許可を得られる道が開けたのです。
Re:フライトコンサルティング尾関代表のご尽力
今回の重要な当局見解は、Re:フライトコンサルティングの尾関代表が、粘り強く当局と協議を重ね、正式な回答を引き出されたご尽力の賜物です。
こうした現場からの声と、それを法的な枠組みの中で整理し、当局との対話を通じて可能性を切り拓いていく活動は、ドローン産業の健全な発展に不可欠であり、行政書士としても心から敬意を表します。
油断は禁物!必要な準備とは
「補助者なしで夜間目視外ができるようになった!」と聞いて、「よし、明日から飛ばそう!」と考えるのは早計です。
これはあくまで「同等以上の安全を確保できる措置を講じ、それを証明できれば可能になる」というルールが明確になったということであり、誰でも、どんなドローンでもすぐにできるわけではありません。
今後、このルールを活用して夜間・目視外・補助者なし飛行の許可を得るためには、
- 自社の飛行がこの要件に該当するかどうかの正確な判断
- 「補助者に代わる措置」として具体的にどのような技術や運用体制が可能で、それが本当に安全性を担保できるのかの検討
- 当局に対して、その安全対策が同等以上であることを説得力を持って説明できる申請書類の作成
といった、高度な専門知識と周到な準備が不可欠になります。
まとめ:進化する規制
ドローンに関する法規制や解釈は、技術の進化や社会のニーズに合わせて常にアップデートされています。
今回の「夜間・目視外・補助者なし」に関する当局見解の明確化は、まさにその進化の一端を示すものです。
しかし、新しい可能性が開ける一方で、それを安全に、そして法的に適切に実現するためのハードルもまた存在します。
特に今回のような複雑な要件に関わる申請は、専門家である行政書士の知識と経験の活用をお勧めします。
「この飛行は可能なの?」「どんな対策が必要?」「申請はどうすれば?」など、疑問や不安があれば、ドローン専門行政書士にご相談ください。
行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。
全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。
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