「補助者なし目視外」は包括かレベル3か?

 

このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。

この投稿は一見すると「補助者なし目視外飛行は、レベル3でなくても可能?」と混乱してしまうかもしれません。

ドローンの飛行許可申請における、ちょっとした「落とし穴」であり疑問に思うポイントです。

包括申請でどこまで可能?

まず、前提として、航空法上の特定飛行である「目視外飛行(補助者の配置が基本)」は、適切な安全対策を講じれば許可されます。

そして、ご存知の通り、特定の要件を満たせば包括申請で許可を取得することが可能です。

では、「補助者なしでの目視外飛行」はどうでしょうか?

X投稿にもあるように、標準マニュアル等では、「補助者の配置に代えることができる立入管理区画の設定」として、塀やフェンス、あるいは看板やコーン等による立入管理区画の明示が認められています。

そして、「第三者の立入りを確実に制限できる場合」には、これらの措置をもって補助者の配置を不要とすることができる、とされています。

この規定だけを見ると

「補助者がいなくても、看板立ててコーン並べれば、包括申請で目視外飛行ができる!レベル3まど不要!」

そう思えてしまいます。

包括申請とレベル3申請の違い

しかし、ここに大きな「前提の違い」があります。

包括申請で補助者なし目視外飛行が認められるのは、あくまで「第三者の立入りを確実に制限できる場合」です。

一方、レベル3飛行が求められるのは、まさに「第三者進入の可能性が排除出来ない」ようなケースです。

確実に制限できるケースとは?

包括申請で補助者なし目視外飛行が可能な「第三者を確実に制限できる場合」というのは、どのような状況を指すのでしょうか?

これは、例えば以下のような、非常に限定的なケースを想定していると考えられます。

  • 関係者以外の立入りが物理的に不可能な場所
    強固なフェンスや塀で囲まれており、部外者が容易に侵入できない私有地や施設内など。
  • 厳格な入退室管理が行われている場所
    工場敷地内や立ち入りが厳しく制限されている区域などで、飛行時間中に確実に第三者が立ち入らないように監視・管理できる体制がある場合。
  • 飛行エリアが広大かつ完全に無人で、かつ予測外の第三者の出現が考えられない場所
    人家や道路などから大きく離れた山奥や広大な海岸などで、飛行経路の全域において第三者が現れる可能性が極めて低いと合理的に判断できる場合。

看板やコーンは、あくまで「注意喚起」や「立入管理区画の明示」の手段であり、これらだけでは「第三者の立入りを確実に制限できる」とは通常判断されません。

不特定多数の人が自由にアクセスできるような場所(例えば一般的な公園や河川敷、農地など)では、看板やコーンだけでは「確実性」が担保できないのです。

包括申請で補助者なし目視外飛行を行うには、この「確実性」をどのように担保するのかを具体的に説明する必要がありますが、これが現実的には非常に困難な場合が多いのです。

レベル3申請が必要なケース

それに対し、レベル3飛行は「無人地帯における補助者なし目視外飛行」と定義されています。

ここでいう「無人地帯」とは、人や家屋が密集している地域(DID地区)ではない場所を指しますが、必ずしも「第三者が全くいない場所」や「第三者が絶対に入ってこない場所」という意味ではありません。

山林、河川、農地など、一見無人に見える場所でも、登山者や釣り人、農作業者、あるいは野生動物の探索者など、予測しない第三者が立ち入る可能性はゼロではありません。

まさにX投稿で触れたように、長距離の線状インフラ点検(例えば河川や送電線沿いの飛行など)のように、飛行経路が長く、その全域にわたって第三者の立入りを完全に監視し、排除することが現実的に不可能なケースがこれに該当します。

このような「第三者進入の可能性が排除出来ない」状況下で補助者なし目視外飛行を行うために設けられたのが、レベル3飛行の制度であり、そのための個別申請が必要となるのです。

レベル3飛行の許可取得には、第三者の立ち入りを検知・回避するための安全機能(注意看板、地上カメラによる監視と即時回避体制など)を備えた運航体制の構築が求められます。

包括申請で認められる「確実に制限できる場合」とは、求められる安全対策のレベルと「前提」が大きく異なるのです。

包括かLV3かを見極めるポイント

結局のところ、「補助者なし目視外飛行」をしたい場合に包括申請で済むのか、それともレベル3の個別申請が必要なのかは

「飛行させる場所において、飛行経路への第三者の立入りをどれだけ『確実に』制限できるか」

という一点にかかっています。

看板やコーンといった措置は、あくまでも立入管理をサポートするもの、という理解が必要です。

飛行エリアの特性、飛行経路の長さ、周囲の環境(道路や民家の近さなど)を総合的に考慮し、「万が一にも第三者が立ち入る可能性をゼロにできるか?」という厳しい目で判断しなければなりません。

もし少しでも「予測できない第三者が入ってくる可能性があるな…」と感じる場合は、安全のため、そして法規制を遵守するためにも、レベル3飛行の基準に合わせた運航体制を構築し、個別申請で臨むべきです。

無理に包括申請の範囲で収めようとすると、安全対策が不十分と判断され、申請が通らなかったり、万が一事故が発生した場合に責任を問われたりするリスクが高まります。

適切な申請区分を見極めることは、安全なドローン運航の第一歩です。

迷った際はドローン専門の行政書士にご相談ください。

飛行計画に合わせて、最適な申請方法と必要な安全対策をご提案させていただきます。

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行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。

全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。

 

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