
ドローン安全、JALに学ぶ「空の常識」
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
【リスクゼロ信仰】の長かった当局が自己責任飛行を志向しています。運航者は飛行許可という「錦の御旗」を下ろし自らリスクを背負います。自己責任…を美名で終わらせない為にもリスクへの知見は「人の認知」域にまで踏み込んでいく必要がありそうです。さすがは空の先達、JALが開講しています。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) June 25, 2025
ドローンの安全規制は、その技術の進化と社会実装の進展に伴い、常にその姿を変えています。
これまで、当局は「リスクゼロ信仰」とも呼ばれるほど、あらゆる事故の可能性を排除しようとする厳格な姿勢で臨んできました。
しかし、ドローンが社会のインフラとして機能していく中でその姿勢は大きな転換期を迎えています。
私自身の情報としてSNSでも触れましたが、規制当局が「リスクゼロ信仰」から「自己責任飛行」を志向する方向へと舵を切っている現状があります。
これは、ドローンの運航者が、飛行許可という「錦の御旗」を行政から与えられるだけでなく、自らリスクを背負うことを意味します。
そして、この「自己責任」を美名で終わらせないためには、リスクへの知見を、単なる技術論やルール論に留まらず、「人の認知」域にまで深く踏み込んでいく必要がありそうです。
この領域では、まさに空の先達であるJAL(日本航空)のような企業が、その知見を活かして開講している取り組みが注目されます。
このページで分かること
「リスクゼロ信仰」からの転換
ドローンの黎明期における規制は、その未知の危険性から、極力リスクを排除しようとする傾向が強く見られました。
特定の空域での飛行禁止、特定の飛行方法への厳格な許可制、そしてそのための詳細な審査は、この「リスクゼロ信仰」に根ざしています。
しかし、ドローンが物流、点検、災害対応など社会の多岐にわたる分野で不可欠なツールとなる中で、全てのリスクを事前に行政が排除し続けることは、産業の発展を阻害しかねないという認識が生まれました。
そこで、当局は、機体の安全性(型式認証)と操縦者の技能(国家資格)を公的に担保することで、個別の飛行における安全確保を運航者自身の責任に委ねる「自己責任飛行」へと、規制の重心を移しつつあります。
「錦の御旗」なき自己責任
この「自己責任飛行」への移行は、運航者にとって、飛行許可書という「行政のお墨付き」を意味する「錦の御旗」が、常に必要ではなくなるというメリットをもたらします。
特定の条件を満たせば、事前の個別審査なしに飛行が可能になるのです。
しかし、これは同時に、運航者が「自らリスクを背負う」という、より重い責任を負うことを意味します。
許可の有無にかかわらず、飛行前・飛行中・飛行後のリスクアセスメント、飛行マニュアルの作成と遵守、安全確保体制の構築、そして緊急時の適切な対応が、運航者の絶対的な義務となります。
この責任は、決して行政に転嫁されるものではありません。
リスク知見、人の認知域へ
「自己責任」を単なる責任転嫁の「美名」で終わらせず、実効性のあるものとするためには、ドローンの安全に関わる知見を、より深く掘り下げていく必要があります。
特に重要なのが、「人の認知」域にまで踏み込んだリスクへの理解です。
ドローン飛行における事故の多くは、最終的に「ヒューマンエラー」に起因すると言われます。
ヒューマンエラーは、個人の不注意だけでなく、人間の心理的特性や認知バイアス、疲労、ストレス、コミュニケーション不足など、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。
- 認知バイアス
「これくらいなら大丈夫だろう」という過信や、リスクの過小評価。 - 心理的要因
焦り、疲労、精神的なプレッシャーが、判断力や集中力を低下させる。 - コミュニケーション
チーム運用時における、指示の曖昧さや情報の伝達ミス。 - 状況認識
複雑な環境や情報過多の中で、状況を正確に把握しきれないこと。
これらの「人」の側面からリスクを深く理解し対策を講じることが真の意味での安全確保に繋がります。
JALに学ぶ、Non-Technical Skills
このような「人の認知」域に踏み込んだリスク管理は、有人航空業界が長年培ってきた知見です。
JAL(日本航空)は、その安全運航のノウハウを社会と共有するため、無人航空機オペレーター向けの「Non-Technical Skills(NTS)講習」を開講しています。
JALは「人間はErrorを起こす」という認識が安全運航の維持に非常に重要であると考えています。
この講習では、運航乗務員が実際に行っている訓練内容をドローンオペレーター向けにカリキュラム化し、多岐にわたるNTSを体系的に指導します。
NTSの4つの能力として、JALは以下を挙げています。
- 安全で高品質な運航を実施しようとするAttitude(姿勢)
- 運航に活かせるKnowledge(知識)
- 手順に従い、航空機を安全に操作できる「Technical Skills」(テクニカルスキル)
- 状況認識や冷静な判断力、Communicationなどの「Non-Technical Skills」(ノンテクニカルスキル)
この中で特に重要視されるのが「Non-Technical Skills」とのことです。
モニターを通して限られた情報で状況を把握し、不測の事態に適切に対応するためには、操縦技術だけでなく、正確な状況認識や情報伝達能力が不可欠となります。
JALの講習では、様々な手法を使って、有人航空機パイロットの必須スキルを、経験豊富なJAL運航乗務員やJALドローン操縦者などの講師陣が、実際の経験やヒヤリハットを交えて伝えているそうです。
まとめ
ドローンの安全規制は、「リスクゼロ信仰」から「自己責任飛行」へと転換し、運航者が自らリスクを背負う時代に入りました。
この自己責任を全うするためには、単なるルール遵守や技術的な対策だけでなく、「人の認知」域にまで踏み込んだリスク知見が不可欠です。
空の先達であるJALのような有人航空業界の取り組みが示すように、人間の心理や行動特性が安全に与える影響を深く理解することは、ドローン業界の安全レベルを飛躍的に向上させる鍵となります。
この知見を取り入れ、法令を遵守し、高い安全意識を持ってドローンを運用することが、ドローンが社会に広く受け入れられ、安全に空を飛び交う未来を築くための重要な道しるべとなるでしょう。
行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。 全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。 【免責事項】
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