
ドローン自己責任の時代と計画通報
このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。
【第三者や航空機】を巻き込むリスクがあるなら「審査」を通して共有する。しかしそれ以外は基本自らが操る機体の安全性に認証を受けた資格者が都度空域エントリー(通報)しながら自己責任飛行を行なっている…。確かにこれが社会実装推進の構図一つのようです。あとは認証機の拡充・量産でしょうか。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) June 2, 2025
ドローンが私たちの社会に深く浸透し、その活用範囲が広がるにつれて、安全確保の仕組みも進化を続けています。
この進化の根底には、ドローンを巡るリスクに応じて「審査」と「自己責任」という二つの異なる管理の構図が存在します。
私自身のとらえ方としては、「第三者や航空機を巻き込むリスクがあるなら『審査』を通して共有する。しかしそれ以外は基本自らが操る機体の安全性に認証を受けた資格者が、都度空域エントリー(通報)しながら自己責任飛行を行なっている」というものです。
これは、ドローンの社会実装を推進する上での重要な構図の一つと思えます。
このページで分かること
リスクに応じた審査
ドローンの飛行には、その特性上、常にリスクが伴います。
特に、人や物件、そして有人航空機を巻き込む可能性のある飛行は、そのリスクがより高いと判断されます。
航空法では、このようなリスクの高い飛行を「特定飛行」と定めています。
特定飛行に該当するケース(例えば、DID地区上空、150m以上の上空、夜間飛行、目視外飛行、人または物件から30m未満の飛行など)においては、国土交通大臣の許可・承認という「審査」プロセスが必須となります。
この審査では、飛行計画の妥当性、安全確保体制、操縦者の技能、機体の安全性などが詳細にチェックされ、行政と運航者の間でリスクが共有・管理されます。
これは、特に公共の安全に大きな影響を与える可能性がある飛行において、国が事前に安全性を担保するための仕組みです。
自己責任飛行の構図
しかし、特定飛行の中でも、特定の条件を満たす場合は、上記の「審査」が不要となるケースが増えてきています。
これがドローンの「自己責任飛行」の構図です。
その中核にあるのは「機体の安全性」と「操縦者の高品位な技能」です。
- 認証機
国土交通省による「型式認証」を受けた機体は、その設計・製造過程が安全基準に適合していることが公的に証明されています。これにより、個別の機体審査が大幅に簡略化されます。 - 資格者
「無人航空機操縦者技能証明(国家資格)」を持つ操縦者は、国が認めた知識と技能を有しています。
この「認証を受けた機体」と「資格を持つ操縦者」がセットであれば、国は、個々の飛行における安全確保は運航者自身が行えるという「信頼」を置きます。
これにより、特定飛行の一部(DID地区上空、夜間飛行、目視外飛行など)については、事前の「審査」が不要となり、代わりに飛行計画を通報(空域エントリー)するだけで済むようになります。
これは、審査が省略される分、運航者が自らの責任で法令遵守、飛行マニュアルの作成・運用、そして現場での安全確保を徹底するという、より重い義務を負うことを意味します。
しかしこれがドローンの社会実装を推進する上で不可欠な構図の一つだと思います。
計画通報の役割と限界
飛行計画の通報は、DIPS(ドローン情報基盤システム)を通じて行われ、その情報はNOTAM(航空情報)として他の航空関係者に周知されることがあります。
これは、ドローンが飛行する空域や時間を共有し、航空機との衝突などを防ぐための重要な情報共有の役割を果たします。
しかし、通報はあくまで情報共有であり、「審査」とは異なります。
通報された飛行計画の内容が、行政によって事前に安全面で詳細にチェックされるわけではありません。
つまり、通報は「許可」ではなく「自己責任」の象徴であり、その安全性を担保するのは、通報を行った運航者自身に他なりません。
社会実装推進の課題
この「自己責任飛行」の構図が、ドローンの社会実装を推進する上で非常に重要な役割を果たしていきます。
行政による全ての飛行の個別審査には限界があり、産業の発展を阻害しかねません。
そこで、技術と資格で安全を担保し、運航者に責任を委ねることで、ドローンの柔軟な活用を可能にするのです。
そして、「あとは認証機の拡充・量産でしょうか」という課題・・・。
安全が担保された認証機が市場に広く流通することで、より多くの国家資格者が自己責任原則に基づいたドローン運用を行いやすくなり、空域の安全性と効率性が高まり、結果としてドローン活用の幅が広がることが期待されます。
まとめ
ドローンの社会実装は、リスクに応じた「審査」と、認証機と資格者による「自己責任飛行」という二つの柱で進んでいます。
特に、後者の「自己責任飛行」は、許可申請手続きを簡素化する一方で、運航者自身の安全確保への責任を重くするものです。
「第三者や航空機を巻き込むリスクがあるなら『審査』を通して共有する」という大原則は変わらず、それ以外の飛行では、
自らが操る機体の安全性に認証を受けた資格者が、都度空域エントリー(通報)しながら、自らの責任で安全飛行を行う
時代が本格化しています。
この構図を理解し、法令遵守はもちろんのこと、飛行マニュアルの確実な運用、そして高い安全意識を持ってドローンを運用することが、ドローン産業の健全な発展と、安全な空域共有を実現する上で不可欠です。
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