ドローン金沢駅前、DID・170M・夜間・目視外:矢野事務所

ドローン金沢駅前、DID・170M・夜間・目視外

 

このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。


ドローンを使った飛行は、その目的を達成するために綿密な計画が必要不可欠です。

特に、都市部の高層構造物周辺での高難度飛行では、その計画書が航空法上の規制をどのようにクリアし、安全を担保するのかが鍵となります。

先日、申請し許可を得たのが石川県金沢市の複合商業施設建設予定地における飛行案件です。

この計画は、人口集中地区(DID)での、高度150m以上、夜間、目視外という、複数の高難度条件を複合したものでした。

具体的には、対地最高高度170mまで上昇し、360度展望の状況を撮影するというものです。

さらに、小松進入管制区内に位置するため、小松基地および神戸航空交通管制部との調整が必要という、航空法の観点から見ても非常に準備の多い計画でした。

金沢駅前の挑戦

今回の金沢駅前の事例は、都心部での高難度飛行の挑戦を具体的に示しています。

  • 飛行場所の特性
    複合商業施設建設予定地。人口集中地区(DID)に該当し、人通りや建物が密集しているため、飛行には細心の注意が必要です。
  • 飛行条件の複合
    高度150m以上の夜間・目視外飛行という、複数の特定飛行条件が重なっています。これは、視認性の低下、通信の不安定化、緊急時対応の困難さなど、多くのリスク要因を伴います。
  • 高高度での撮影
    対地最高高度170mからの360度展望撮影は、広範囲の俯瞰映像を得るためのものですが、より高い高度での飛行には、有人航空機との衝突リスク管理や、気象条件の厳しさへの対応が求められます。
  • 空域調整の完了
    小松進入管制区内という空域特性から、小松基地および神戸航空交通管制部との事前調整を完了していることは、安全確保への高い意識と周到な準備を示しています。

飛行時間は1回約20分程度で、必要に応じて5~6回飛行させるとの計画で、最大同時飛行機体数は1機です。

航空法上の申請要件

この金沢駅前での飛行計画は、航空法第132条の85で定められる「特定飛行」に複数該当するため、国土交通大臣の許可・承認が必須となります

具体的には、以下の条件が複合しているため、航空法上の規制対象となります。

  • 人口集中地区(DID)の上空での飛行
    DID地区に該当するため、これに抵触します。
  • 150m以上の上空での飛行
    対地最高高度170mでの飛行は、150m以上の高さでの飛行に該当します。
  • 夜間飛行
    飛行時刻が6:00~21:00と夜間を含むため、この条件に抵触します。
  • 目視外飛行
    操縦者から機体を直接目視できない状況での飛行に該当します。

これらの組み合わせ飛行は、個別に、または包括的に許可を得る必要があります。

さらに、飛行場所が小松進入管制区内という空港への進入空域に位置するため、航空法第132条の85第1項第1号に規定される「空港等の周辺の空域」での飛行に該当します。

このため、航空局への申請に加え、管轄の小松基地および神戸航空交通管制部といった空港事務所等との事前調整が不可欠となります。

申請には、飛行目的、日時、場所、使用機体、操縦者・補助者の情報に加え、以下の詳細な安全対策を盛り込んだ飛行マニュアルなどの提出が求められます

  • 立入管理措置
    飛行範囲の下に第三者が立ち入らないよう、防護壁の設置や補助者の配置による監視を行います。
  • 安全確保体制
    操縦者、補助者、安全管理者などの役割分担と連携体制を明確にします。補助者は、航空機接近や第三者進入など、飛行に支障があると判断した場合、操縦者に助言し、飛行中止を促します。
  • 風速対応
    高高度の夜間目視外飛行を鑑み、風速と速度の和が7m/sを超えた場合の飛行中止基準など、具体的な風速対応を定めます。送信機に強風警告が表示される機体を使用することも明記します。
  • 緊急時対応
    不測の事態に備えた緊急着陸場所の確保や、対応手順を明確にします。

具体的な安全体制

私が作成した飛行計画書には、これらの高リスクな飛行を安全に行うための具体的な安全対策が詳細に盛り込まれています。

  • 立入禁止区画の徹底
    飛行場所がDID地区であるため、周囲を防護壁に囲まれた区画内で、第三者が存在しない状況でのみ飛行を実施。入口や敷地隅に配置した補助者により、第三者の進入監視を行います。
  • 補助者の役割
    補助者は全体を見渡せる位置に配置され、立入監視や注意喚起を建築作業者と連携して行います。航空機接近や第三者進入など、飛行に支障があると判断した場合は、操縦者に助言し、飛行中止を促します。
  • 風速対応
    高高度の夜間目視外飛行を鑑み、強風時の対応を厳格に定めています。風速と速度の和が7m/sを超えた場合は直ちに飛行を中止。これを見落とさないよう、送信機に強風警告が表示される機体(例: DJI AIR3等)を使用します。
  • 飛行マニュアル
    標準マニュアル01をベースとし、特に「夜間の目視外飛行」に関する項目を追加した独自マニュアルを遵守します。

計画書の価値と未来

今回作成した飛行計画書は、単なる許可申請の書類に留まらない、安全運航を担保するための羅針盤の役割を示しています。

このような詳細な計画を策定するプロセス自体が、操縦者や事業者にとって、潜在的なリスクを洗い出し、安全意識を高めるための重要な訓練となります。

DID地区での高高度夜間目視外飛行という難易度の高い運用が、緻密な計画と準備によって可能になることは、今後のドローン活用、特に建設現場の進捗管理、都市インフラの点検、あるいは災害対応など、様々な分野における可能性を大きく拓くものです。

まとめ

金沢駅前という具体的な場所での申請内容を振り返りながら、複雑な空域・方法でのドローン飛行には、航空法上の厳格な要件と、詳細かつ具体的な飛行計画書が安全運航の要であることを改めて示しました。

綿密な計画と、関係機関との連携、そして徹底した安全管理が、高難度なドローン飛行を実現する鍵となります。

このような計画書を作成し、厳格に遵守することで、ドローンは社会の多様なニーズに応え、その活躍の場をさらに広げていくことができるでしょう。

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