ドローン機体売却と法定義務「記録簿」:矢野事務所

ドローン機体売却と法定義務「記録簿」

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。

ドローン売却の落とし穴

ドローンを売却する際、「機体の状態さえ良ければ問題ない」と考えている方も少なくないと思います。

実は、それだけでは足りません。

法的に定められた重要義務があり、これを知らないと後々大きなトラブルに巻き込まれる可能性があります。

今回は、ドローンの売却時に特に注意すべき飛行日誌と点検の記録簿について、詳しく解説します。

義務化された記録簿の引き継ぎ

ドローン(無人航空機)の所有者が変わる際には、特定の記録簿を新しい所有者へ引き継ぐことが、国土交通省の定める「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」4-(5)で義務付けられています。

これは、単なる推奨事項ではなく、遵守すべき法的要件です。

なぜ記録簿が義務なのか

この要領は、ドローンの安全な運用を確保するために非常に重要です。

記録簿は、そのドローンがどのように使われ、どのようなメンテナンスを受けてきたかを示す唯一無二の履歴書だからです。

  • 飛行日誌
    いつ、どこで、どれくらい飛行したか、異常はなかったかなど、運用履歴が記録されます。これにより、機体の消耗度合いや過去のトラブルの有無を把握できます。
  • 日常点検記録
    飛行前後に実施される日常的な点検の結果が記録されます。プロペラの損傷、バッテリーの状態など、その時点での機体の健全性がわかります。
  • 点検整備記録
    定期的なメンテナンスや修理、部品交換などの記録です。専門業者による点検や、メーカー推奨の整備が適切に行われてきたかを確認できます。

これらの記録は、機体の現在の状態だけでなく、将来的なリスクを評価するためにも不可欠な情報なのです。

売却時の具体的な影響

記録簿の引き継ぎ義務を怠った場合、売却の成功はもちろん、その後の責任問題にも発展しかねません。

買取業者の判断基準

中古ドローンの買取を専門とする業者は、まずこれらの記録簿の有無と内容を厳しく確認します。

記録が不完全であったり、偽りがあったりする場合、買取を拒否されることは珍しくありません。

記録がない機体は、その品質や安全性に疑義が生じるため、業者としてはリスクの高い商品と判断せざるを得ないのです。

個人間取引のリスク

フリマアプリやオークションサイト等を利用した個人間取引では、記録簿の重要性が見落とされがちです。

しかし、記録がない状態で売却してしまった場合、購入者が飛行中に何らかのトラブルに見舞われた際、「適切な点検や情報開示がなかったため、安全性が確保されていなかった」と主張され、後からクレームや損害賠償請求に発展する可能性があります。

トラブルを避けるためにも、売る側には正確な情報を提供する責任があります。

適正価格での売却のために

逆に言えば、正確かつ網羅的な飛行日誌と点検記録が揃っていれば、機体の価値は飛躍的に向上します。

買い手は安心して購入でき、売る側も適正な価格でスムーズに取引を完了できます。

特にビジネス用途での利用を考えている購入者にとって、信頼できる記録が揃った機体は非常に魅力的です。

これは、単に法律を守るだけでなく、機体の資産価値を最大限に引き出すための重要な要素となります。

日頃からの記録の徹底

売却時に慌てないためにも、ドローンを所有する日頃から、正確な記録を続けることが大切です。

飛行日誌のつけ方

飛行日誌は、飛行ごとに以下の項目を記録します。

  • 年月日・時刻: 飛行開始と終了の正確な日時
  • 場所: 具体的な飛行場所、緯度経度など
  • 目的: 空撮、測量、点検など
  • 操縦者: 実際に操縦した者の氏名
  • 機体登録記号: 国土交通省に登録された機体番号
  • 総飛行時間: 累積の飛行時間
  • 点検記録: 日常点検の結果(異常の有無など)
  • 特記事項: 気象状況、異常発生の有無とその内容、特筆すべき事項

これらの項目を欠かさず記録することで、機体の正確な運用履歴が残ります。

点検の記録簿のつけ方

点検は、日常点検と定期点検に分けて記録します。

  • 日常点検
    飛行前後に実施する点検です。プロペラの損傷、バッテリー残量、機体各部の緩みなどをチェックし、異常がないことを確認します。
  • 定期点検
    決められた期間ごと、または一定の飛行時間ごとに実施する詳細な点検です。メーカー推奨の点検項目に従い、必要に応じて部品交換や修理を行います。

これらの記録は、市販のノートやエクセルなどの表計算ソフト、あるいは専用のアプリなどを活用して、継続的に、そして正確に記載することが重要です。

また、データの破損や紛失に備え、定期的なバックアップも忘れてはなりません。

まとめ:記録は安全と信頼の証

ドローンを安全に運用し、将来的に適正な価格で売却するためには、飛行日誌と点検の記録簿の正確な記載と保管、そして売却時の引き継ぎ義務の遵守が不可欠です。

これらは、単なる事務作業ではなく、ドローンの安全性を担保し、所有者としての責任を果たすための重要な行為です。

これらの記録が整っていることで、買い手は安心してドローンを購入でき、売り手も安心して取引できます。

申請事例&ブログ一覧はこちら

行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。

全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。

 

【免責事項】
○当サイトのコンテンツや情報において可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、 誤情報が入り込んだり古くなったりすることもあり必ずしもその内容の正確性および完全性を保証するものではございません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害について、一切責任を負うものではございませんのであらかじめご了承ください。
○当サイトから移動された先のホームページは、当サイトが管理、運営するものではございません。移動先サイトで提供される情報の真偽、サービス等につきましても一切の責任も負いませんのでご了承ください。なお、予告なしに内容が変更または廃止される場合がございます。