
ドローン飛行許可申請時の機体資料の変更と義務
このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。
国交省ホームページに掲載されていないdji AIR3。追加基準の資料は,プロペラガードなし+灯火+カメラ+プロポ+取説書添付なし…でクリアします。HP非掲載機でもさすがdji機の信頼性でしょうか資料全部出しは要求されませんでした。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) August 24, 2023
ドローンを特定の空域や方法(特定飛行)で飛行させる際には、国土交通大臣の許可・承認が必要です。
この許可申請に必要な手続きや提出書類については、2025年3月24日から新たなルールが施行され、重要な変更がありました。
これまでのルールでは、使用する機体が国土交通省のホームページに掲載されているかどうかで、申請時に求められる機体に関する資料の量が異なっていました。
ホームページに掲載されている機体であれば、機体の安全性が確認されているとして、詳細な技術資料の提出は省略できました。
一方で、掲載されていない機体の場合は、その機体の安全性を証明するために、設計図や強度計算書など、詳細な資料の提出が必要となるのが一般的でした。
私が以前X(旧Twitter)で投稿した内容で、国土交通省のホームページには掲載されていなかった「DJI Air 3」という機体で特定飛行の許可申請を行った際の経験談に触れました。
この事例は改正前のルール下でのもので、当時は非掲載機だったため追加基準に関する資料などを提出しましたが、それでも通常求められる「全部出し」よりは簡潔で済んだ、というものでした。
しかし、2025年3月24日からの法改正により、この機体資料の取扱いは大きく変わりました。ホームページ掲載の有無にかかわらず、すべての機体について、申請時の資料提出が不要になったのです。
このページで分かること
法改正で何が変わった?
今回の法改正は、ドローンの飛行許可・承認手続きにおける機体情報の取扱いに根本的な変更をもたらしました。
これまでのルール
2025年3月23日までは、先述の通り、HP掲載機体と非掲載機体とで申請時に提出する機体に関する資料の要否や内容が異なっていました。
非掲載機体の場合は、機体の安全性を証明するための詳細な技術資料の提出が申請者にとって大きな負担となっていました。
2025年3月24日以降
2025年3月24日からは、この区分がなくなりました。
使用するドローンの種類(HP掲載・非掲載問わず)にかかわらず、飛行許可・承認申請時に、機体の構造や強度、性能に関する詳細な技術資料を提出する義務が原則として撤廃されたのです。
資料提出から具備・管理へ
では、機体に関する資料は一切不要になったのでしょうか?いいえ、そうではありません。
提出は不要に
申請書に機体の登録情報などを記載すれば、機体自体の安全性を証明するための詳細な技術資料を申請時に添付する必要はなくなりました。
これは、申請手続きの簡素化に繋がります。
自分で備える義務
資料の提出が不要になった代わりに、ドローンの使用者(許可・承認を受けた者)は、使用する機体が航空法の安全基準を満たしていることを自らの責任で確認し、その根拠となる資料を自ら適切に「具備し、管理する」義務が課されました。
つまり、国に事前に提出して国の審査を受けるのではなく、使用する側が常に機体の安全性を証明できる状態にしておき、必要に応じて提示できるように管理しておかなければならない、ということです。
私のX投稿事例から
私が以前Xでご紹介したDJI Air 3の申請事例は、まさにこの法改正前のルール下での出来事でした。
改正前のAir 3
当時はDJI Air 3が国土交通省のホームページに掲載されていなかったため、非掲載機として追加資料(比較的簡潔なものでしたが)を提出する必要がありました。
これは、当時のルールに則った適切な手続きでした。
改正後の対応
しかし、もし同じDJI Air 3で2025年3月24日以降に特定飛行の許可申請を行う場合、もはや非掲載機だからという理由で追加資料を申請時に提出する必要はありません。
他の掲載機と同様に、申請書に必要な機体情報を記載するだけで申請できます。
ただし、以前提出したような追加基準に関する情報や、機体の安全性を証明するための各種資料は、申請者が自ら具備し、適切に管理しておく義務があります。
提出は不要になっても、資料自体は用意しておく必要がある、ということです。
具備・管理の具体例
では、「具備し、適切に管理する義務」として、具体的にどのような資料や情報を用意しておくべきなのでしょうか。
どんな資料が必要か
具備・管理すべき資料としては、機体の種類にかかわらず、以下のようなものが考えられます。
- 使用する機体の取扱説明書、仕様書
- メーカーが提供する機体の安全性に関する技術情報や証明書
- 機体の構造強度や安全性に関する試験データ(入手可能であれば)
- ドローン情報基盤システム(DIPS)での機体登録情報
- 定期点検や整備の記録
- 機体の改修や部品交換の記録
- 特定の飛行に必要な追加装備(灯火、カメラ、パラシュート等)の性能や取り付け状況に関する情報
- 自己点検や飛行前点検のチェックリスト及び実施記録
これらの資料は、許可期間中または機体を運用している間、いつでも関係者(航空局など)から提示を求められた際に提出できるよう、分かりやすく整理して保管しておく必要があります。
日頃の管理も重要
資料を具備するだけでなく、それらの情報に基づき、日頃から機体の点検や整備を適切に行うことも「適切に管理する」義務に含まれます。
機体の状態を常に安全に保ち、異常があれば適切に対処するといった運用上の管理体制も不可欠です。
申請者の責任増加
今回の法改正は、一見すると申請手続きが簡素化されたように見えます。
しかし、これは申請者(ドローンの使用者)が、機体の安全性を自らの責任で確認し、その根拠を管理するという義務を、より強く負うことになった、という側面も持っています。
これまでは、申請時に国が資料を確認していましたが、改正後は、使用者が常に機体の安全性を証明できる状態を維持することが求められます。
これは、ドローン運用における申請者の責任を大きく増加させたと言えるでしょう。
結論
2025年3月24日の法改正により、ドローンの飛行許可・承認申請において、機体の種類にかかわらず、機体の安全性に関する詳細資料の提出義務がなくなりました。
これは手続きの簡素化に繋がります。
しかし、その代わりに、ドローンの使用者は、使用する機体が安全基準を満たしていることを自ら確認し、その根拠となる資料を具備し、適切に管理する義務が課されました。
これは、申請者の自己責任と義務が増大したことを意味します。
申請時に資料を提出しないからといって、何も準備しなくて良いわけではありません。
常に機体の安全性を証明できる資料を整え、適切に機体を管理しておくことが、法令遵守はもとより、安全なドローン運用を行う上で最も重要となります。
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