高高度3.5はNG!出前ドローンが飛ぶ中国:矢野事務所

高高度3.5はNG!出前ドローンが飛ぶ中国

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。


ドローンが切り拓く「空の産業」は、高高度だけでなく、私たちが日々生活する地上に近い「低空域経済圏」の確立にも焦点が当てられています。

しかし、ドローンの社会実装を大きく進めるための重要な段階である「レベル3.5飛行」においても、特定の条件下、特に高高度においては、まだクリアすべき課題が存在します。

先日、Xにも投稿しましたが「高度500MのLv3.5飛行」が申請されたものの、「機上カメラから第三者確認ができない」という理由で許可が得られなかった事例がありました。

視認技術や安全面はさておき、これは、当局が「低空域を経済圏化したい」という本義からすれば、高空域への踏み込みはまだ後回しとなるのだろう、という考察につながります。

その一方で、低空域でのドローン活用は着実に進んでおり、中国の深圳では「ミルクティーのドローン出前」が始まるなど、「不要不急の分野にもついに」ドローンが浸透し始めています。

高度500M、レベル3.5の壁

ドローンの「レベル3.5飛行」とは、補助者なしでの目視外飛行が、特定の条件下で有人地帯(第三者上空)に一時的に立ち入ることが可能になる、

レベル4(有人地帯での目視外飛行)の前段階に位置づけられるものです。

この飛行は、従来の目視内飛行に比べて、高い安全管理能力と技術が求められ、ドローンの社会実装を加速させる上で非常に重要な意味を持ちます。

今回の事例は、まさにこの重要なレベル3.5飛行において、高度500Mという高高度での申請が許可されなかったというものです。

その具体的なNG理由が「機上カメラから第三者確認ができない」というものでした。

  • 高高度での視認性の限界
    ドローンが高度500Mに達すると、機体に搭載されたカメラの性能にもよりますが、地上の人や車両といった第三者をリアルタイムで明確に識別し、その動きを正確に把握することは非常に困難になります。
  • 安全確保の要件
    レベル3.5以降の飛行では、第三者の安全確保が極めて重要視されます。機上カメラによるリアルタイムでの第三者確認は、衝突回避や緊急時の安全措置において不可欠な情報源となるため、その機能が不十分と判断されれば許可は下りません。
  • 技術と規制のギャップ
    これは、現在の機上カメラ技術や画像解析技術が、規制が求める高高度での第三者確認の安全水準に、まだ完全に到達していない可能性を示唆しています。

低空域経済圏の優先

当局が「低空域を経済圏化したい」という本義を持っているとすれば、高高度(高度500Mなど)へのドローンの踏み込みが「まだまだ後回しとなる」のは、以下の理由が考えられます。

  • 社会実装ニーズの高さ
    ラストワンマイル配送、都市インフラの点検、地域内の物流など、社会課題の解決に直結する具体的なニーズは、主に低高度空域でのドローン活用に集中しています。
  • リスク管理の相対的容易さ
    比較的低高度であれば、地上の安全対策(立入管理など)や、通信環境の安定確保が、高高度に比べて容易であるケースが多いです。
  • 空域の分離
    有人航空機が主に高空域を利用するのに対し、ドローンが低空域を主な活動範囲とすることで、空域の分離が図られやすく、衝突リスクの管理がしやすくなります。
  • リソースの集中
    限られた規制当局のリソースを、より実現可能性が高く、短期的な社会実装が期待できる「低空域」での制度設計や技術検証に集中させる、という政策的な優先順位が働いていると考えられます。

ドローン活用の多様化

高高度飛行の課題がある一方で、ドローンの低空域での活用は、私たちの想像以上に多様化し、日常生活にも浸透し始めています。

「不要不急の分野にもついに」ドローンが活用され始めているのです。

その象徴的な事例が、中国・深圳での「ミルクティーのドローン出前」です。

これは、単なる緊急物資輸送や産業用途に留まらず、日常的な消費活動においてもドローンが利用され始めていることを示しています。

このような事例は、ドローン物流のコスト競争力が高まり、社会受容性が向上すれば、私たちの身近な生活サービスとしてドローンが当たり前になる未来を示唆しています。

新たな市場の開拓や、消費者体験の向上といった意味合いも持ちます。

技術と規制の調和

今回の事例は、ドローンの技術進化と規制の間の、現実的な関係性を浮き彫りにしています。

規制は、技術の進歩を待つだけでなく、その安全性を確保するために技術開発を促す側面も持ちます。

「機上カメラから第三者確認ができない」という課題は、高高度飛行における安全確保の根幹に関わるため、今後は、より高性能なカメラシステム、リアルタイムでの高精度な画像解析技術、AIによる第三者識別能力の向上といった技術開発が、規制が求める安全水準への到達の鍵となるかもしれません。

安全性を確保しつつ、ドローンの可能性を最大限に引き出すためには、技術と規制が密接に連携し、調和していくことが不可欠です。

まとめ

高度500Mでのレベル3.5飛行が機上カメラでの第三者確認の限界で許可されなかった事例は、ドローン技術と規制の間の現実的な課題を浮き彫りにしました。

当局が「低空域経済圏」を優先する戦略は、より実現可能性の高い社会実装を目指すものです。

しかし、その一方で、深圳でのミルクティーの出前のような「不要不急」の分野へのドローン活用も進んでおり、ドローンが社会のあらゆる側面を変革しつつある現状を示しています。

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