
東京湾・公有水面でのドローン許可に前例なかった
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
【東京湾埋立地】にある「公有水面」という水域での許可取り。前列がなく港湾当局に所定の手続きもない為、一旦宙に浮きました。真向かいのマリーナエリアが飛行厳禁の為、苦情や一般人通報への防衛策の面からも水域管理者の許可が必須です。最後にたどり着いた土木事務所が受けてくれるとの事です。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) April 20, 2025
このページで分かること
東京湾埋立地の「公有水面」が立ちはだかる壁
ドローンを飛行させる際、私たちは通常、航空法に基づく国土交通省への許可申請を考えます。
しかし、中には「どこに相談すればいいのか」ということから始まる、複雑な許可取得の壁が存在します。
Xに投稿した、東京湾埋立地にある「公有水面」での許可取りは、まさにその典型かと思います。
陸上での飛行とは異なり、水域でのドローン飛行は、海上保安庁や港湾管理者、さらには河川管理者など、多岐にわたる機関が関係する可能性があります。
特に、今回のケースのように「前例がなく港湾当局に所定の手続きもない」という状況は、担当部署を特定すること自体が困難を極め、まさに申請が「宙に浮いた」状態となるのです。
「許可が必須」となるのはなぜか?通報と苦情への防衛策
なぜ、航空法上の許可とは別に、水域管理者の許可が必須だったのでしょうか。
その背景には、周囲の環境と、「苦情や一般人通報への防衛策」という重要な側面があります。
投稿したように、飛行予定地の真向かいにはマリーナエリアがあり、そこはドローン飛行厳禁の場所でした。
ドローンを飛行させることは、周辺やレジャーを楽しむ人々からすれば「不審な行為」と映りかねません。
特に、騒音やプライバシーへの懸念から、警察への通報や直接の苦情に繋がるリスクが非常に高いのです。
警察は、通報があれば当然出動し、飛行を一時中止させる可能性があります。
これは、たとえ航空法上の許可を得ていたとしても、事業にとっては大きな損害となります。
このような事態を避けるためには、航空法遵守に加え、「地域社会との調和」と「現場でのトラブル回避」が不可欠です。
水域管理者の許可を得ることは、この地域社会との調和を図る上での「お墨付き」となり、万が一の通報時にも「関係部署に許可を得ている」と説明できる強力な防衛策となるのです。
「宙に浮いた」申請から土木事務所への道筋
「港湾当局に所定の手続きもない」という状況で、一体どこに相談すれば良いのか。
これは、まさに「行政の縦割り」の壁であり、多くのドローン事業者が経験するであろう困難です。
このケースでは、まず考えられる関係機関(港湾局、海上保安部、市役所の各部署など)に問い合わせを重ねたものと推測されます。
しかし、それぞれの部署からは「管轄ではない」「前例がない」といった回答が返ってきたのでしょう。
最終的にたどり着いたのが「土木事務所」だったという点に、この申請の特殊性と担当者の粘り強さが見て取れます。
通常、土木事務所は、道路、河川、海岸などのインフラ管理を主な業務としていますが、この「公有水面」が、海岸や河川と隣接する、あるいは埋立地としてその管理区分が曖昧な場所であったため、最終的に彼らが窓口となってくれたのでしょう。
土木事務所が申請を受けてくれた背景には、
- 地域住民の安全確保
飛行場所が公共性の高い水域であり、住民からの通報リスクを管理する必要性。 - 管理権限の広範な解釈
自身の管轄する海岸や河川に隣接する水域として、安全管理上、無人航空機の飛行状況を把握する必要があると判断した。 - 担当者の柔軟な対応
前例がなくとも、安全性確保のために適切な窓口となることを受け入れた。
といった理由が考えられます。これは、既存の枠組みにとらわれず、柔軟に対応してくれる行政担当者の存在が、特殊なドローン飛行の実現には不可欠であることを示唆しています。
特殊な水域での飛行計画と防衛策
公有水面でのドローン飛行には、陸上とは異なる特別な注意点と、それに即した飛行計画、そして防衛策が求められます。
水域特有のリスクへの対策
- 風の影響
水上は陸上よりも風の影響を受けやすく、突風が発生しやすい傾向があります。事前の風速確認と、風に対する安全マージンを設けた飛行計画が必要です。 - 着水時のリスク
万が一の機体トラブルで着水した場合、機体の回収が困難になります。防水性能を持つ機体の使用や、回収用ボートの手配、さらには回収不能時の対応計画も盛り込むべきです。 - 船舶との衝突回避
飛行経路に船舶(プレジャーボート、漁船など)の航行が予想される場合は、それらとの衝突を避けるための監視体制や、飛行ルートの工夫が必要です。
申請書に盛り込む「現場への配慮」
今回の事例のように、特に「前例がない」場所や、周辺に敏感な施設がある場合は、単に航空法上の要件を満たすだけでなく、「現場への配慮」を申請書に詳細に記載することが重要です。
- 周辺環境の詳細な記載
マリーナエリアや住宅地など、周辺の施設や住民への影響を具体的に予測し、その対策を記述します(例:飛行高度・経路の最適化、騒音対策、飛行時間の制限など)。 - 苦情・通報への対応計画
万が一、通報があった場合の具体的な対応手順(例:即時着陸、警察への説明、管理部署への連絡など)を明確にします。 - 地域への周知計画
飛行前に周辺の第三者や関係者(マリーナ利用者など)へのチラシ配布、看板設置、ウェブサイトでの告知など、具体的な周知方法を提示します。
関係機関との良好なコミュニケーション
最終的に土木事務所が窓口となってくれたように、関係機関との良好なコミュニケーションは、特殊な申請を成功させる上で不可欠です。
粘り強く相談し、ドローン飛行の目的、安全対策、地域への影響を丁寧に説明することで、理解と協力を得られる可能性が高まります。
まとめ
東京湾埋立地における公有水面でのドローン飛行許可は、「前例がない」という行政の壁、そして周辺からの苦情や通報リスクへの懸念という、多重の困難を伴うものでした。
しかし、粘り強く行政の窓口を探し、最終的に土木事務所が受け入れてくれたことは、行政が既存の枠組みにとらわれず、安全確保のために柔軟に対応し得る可能性を示しています。
この事例は、ドローン事業者が特殊な空域での飛行を計画する際に、単に航空法を遵守するだけでなく、管理者不明な場所での窓口の探し方、地域社会への配慮、そして現場でのトラブルを未然に防ぐための具体的な防衛策をい、詳細な申請書作成がいかに重要かを教えてくれたのではないかと思います。
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