ドローン海抜750M、空域調整の舞台裏:矢野事務所

した。ドローン海抜750M、空域調整の舞台裏

 

このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。


ドローンを飛行させる空域は、その場所の特性によって様々な規制や調整が必要となります。

特に、有人航空機が訓練を行う空域や、高高度での飛行は、単に航空局へ許可申請するだけでは済まない複雑なプロセスを伴います。

先日、最大海抜高度750Mでのドローン飛行を申請しました。

この「最大海抜高度」とは、ドローンが飛行する上空の最も高い地点が、海面から測って何メートルであるかを示すものです。

今回の空域は民間訓練空域だったため、通常の申請とは別に航空交通管理センター(ATC)からの条件付き許可が必要となりました。

しかし、驚くべきは、このATCとの調整がわずか2時間で完了したという迅速さでした。

このスムーズな調整は、申請者の事前準備とATCとの良好な連携があればこそ実現するものです。

申請は飛行日まで「アト12開庁日」というタイトなスケジュール。

飛行許可の申請は「航空局」と「空港事務所」です。

航空局の審査は比較的早そうでも、他方の空港事務所の審査には時間がかかり、9日間を要したこともありました。

このような状況は、映画ロケなどの撮影スケジュールに直結するため、関係者にとっては胃の痛い案件となるでしょう。

高高度飛行の基本

ドローンの飛行は、原則として「地表または水面から150m未満」に限定されています。

この「高さ」は、ドローンが飛び立つ地点の地面や水面からの距離(対地高度)を指します。

一方、今回申請した「最大海抜高度750M」は、ドローンが到達する最も高い地点の海面からの高さを示すものです。

ドローンが対地150mを超えて飛行する際は、航空路を飛行する有人航空機との衝突リスクが高まるため、国土交通大臣の許可が必要です。

さらに、今回のように特定の空域に該当する場合は、追加の調整が求められます。

高高度飛行には、以下のような様々なリスクが伴います。

  • 有人航空機との衝突リスク
    特にヘリコプターなど、比較的低高度を飛行する有人機との空域が近接する可能性が高まります。
  • 気象条件の急変
    高度が高くなるにつれて、風速が増加したり、突発的な気流の変化に遭遇したりする可能性が高ま
    ります。
  • 機体性能の限界
    バッテリーの消耗が激しくなったり、寒冷な気候により機体性能が低下したりする可能性があります。
  • 通信の不安定化
    遠距離になるほど電波が不安定になりやすく、機体の制御を失うリスクが高まります。

民間訓練空域とは

今回の事例で重要な要素が「民間訓練空域」です。

これは、特定の航空学校や訓練施設が、航空機の操縦訓練を行うために設定している空域を指します。

このような空域では、有人航空機、特に小型機や訓練機が頻繁に低高度を飛行している可能性があります。

ドローンがこのような空域を飛行することは、有人航空機との衝突リスクを増大させるため、非常に慎重な管理が必要です。

ドローンと有人航空機の両方が安全に空域を共有するためには、厳格なルールと関係機関との密接な連携が不可欠となります。

ATCの役割

事例に登場する「航空交通管理センター(ATC)」は、国土交通省に設置されている機関で、主に航空路を飛行する航空機の交通管制や、空域の効率的な利用、衝突防止のための広域的な管理を担っています。

ドローンの高高度飛行、特に航空路や有人航空機の飛行経路に近い空域、あるいは民間訓練空域のような特殊な空域での飛行には、このATCとの空域調整が必要となる場合があります。

ATCは、ドローンの飛行計画(日時、高度、経路など)が有人航空機の運航に支障をきたさないかを確認し、必要に応じて条件を付して許可を出します。

「条件付きで許可」というのは、特定の時間帯に限定されたり、有人機が接近した際の緊急退避の指示に従うことなどが求められたりするケースを指します。

今回の事例で、ATCとの調整が「わずか2時間」で完了したというのは、申請者とATCとの連携体制が十分に構築されていたか、あるいは申請内容が非常に明確で安全性が高く評価された結果だと考えられます。

許可申請の二段階

今回の事例では、ATCからの許可(空域調整)に加え、「飛行許可申請」の審査が残っている状況です。

ドローンの飛行許可申請は、主に二つの段階(または機関)で審査が行われることがあります。

  1. 航空局(DIPS 2.0での申請)
    ドローン本体の性能、操縦者の技能、飛行マニュアル、安全管理体制など、ドローン飛行の包括的なルールと安全性を審査します。比較的、書類が整っていればスムーズに進む傾向があります。
  2. 空港事務所
    飛行場所が空港周辺空域や特定管制空域、あるいは今回のような特殊な空域(例えば訓練空域など)に該当する場合、空港事務所がその空域での有人航空機との調整や安全性を審査します。
    空港事務所の審査は、個別の空域調整や他の航空機の運航状況が絡むため、航空局の審査よりも時間を要する傾向があります。
    今回の事例で「先日は9日間でした」というのは、空港事務所の審査に時間を要した経験のことです。

飛行日まで「アト12開庁日」という状況は、標準処理期間が10開庁日であることを考えると、空港事務所の審査に時間を要した場合、許可取得が間に合わないリスクがあることを意味します。

まさに「時間との戦い」です。

タイト申請の戦術

このようなタイトなスケジュールで、高高度・特殊空域での飛行許可申請を成功させるためには、以下の戦術が重要です。

  • 徹底した事前準備
    飛行計画、使用機体、操縦者・補助者の手配等を完璧に計画します。
  • 関係機関への早期相談
    航空交通管理センターや空港事務所など、空域に関わる機関には、申請前に必ず相談し、飛行計画の概要を伝え、必要な調整の有無や手続きを確認します。
  • 申請書類の完璧な作成
    不備があると補正指示が出てしまい、限られた時間を浪費してしまいます。必要な情報を漏れなく、正確に、そして具体的に記載することが重要です。
  • 専門家(行政書士等)の活用
    ドローンの飛行許可申請、特に難易度の高い案件やタイトなスケジュールの場合は、申請手続きや関係機関との調整に精通した専門家への相談・依頼が、許可取得の可能性を高めます。

まとめ

最大海抜高度750Mのような高高度飛行、そして民間訓練空域のような特殊な空域でのドローン運用には、航空交通管理センター(ATC)との空域調整を含む、複雑な許可申請プロセスが伴います。

タイトなスケジュールでの申請は、審査期間や空域調整の遅延が、計画に大きな影響を与えるリスクをはらみます。

今回の事例は、ATCとの迅速な調整が実現した一方で、空港事務所の審査に時間を要する可能性があるという、実務のリアルな厳しさを物語っています。

高高度飛行に挑戦する際は、十分な事前準備、正確な申請、そして関係機関との密な連携が不可欠です。

計画的な準備と安全第一の意識で、ドローンの新たな可能性を切り拓いていきましょう。

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