ドローン 空中散布 空港周辺の連携ルール:矢野事務所

ドローン 空中散布 空港周辺の連携ルール

このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。

ドローンは、農業分野での薬剤や肥料の散布、いわゆる「空中散布(空散)」において広く利用されています。

ドローンによる空中散布は効率的である一方で、安全な実施のためには特別な注意が必要です。

ドローンを使った空中散布の安全な実施方法を定めた「空中散布マニュアル」に、この度重要な改正があり、特に空港周辺での空中散布に関する詳細な規定が追加されました。

これにより、空港周辺での空中散布を行う際には、これまで以上に厳格な安全対策と関係機関との連携が求められることになります

今回は、この改正で追加された具体的な条文内容に触れながら、空港周辺での空中散布における安全確保と連携の重要性について詳しく解説いたします。

マニュアル改正点

空港周辺規定追加

改正された空中散布マニュアルに、空港周辺での空中散布に関する詳細な規定が追加されました。

これは、空港等の周辺空域で空中散布を行う際の、具体的な安全対策や関係機関との連携に関するルールを明確にするものです。

具体的な条文

今回追加された規定の一部を、以下に解説いたします。

進入表面等上空

進入表面や転移表面といった空港周辺の特別な空域(これらは航空機が安全に離着陸するために障害物があってはならない空間として設定されています)の上空を含む空域で空中散布を行う際の体制として、以下の点が規定されました(マニュアル3-2を要約)。

  • 無人航空機を飛行させる際には、空港設置管理者等(空港事務所など)及び管制機関が配置されている場合は、関係機関(空港事務所、空港出張所又は基地の管制機関)と常に連絡がとれる体制を確保すること。
  • 予め調整した空港設置管理者等及び関係機関からの条件について、申請書等に記載すること。
  • 予め空港事務所と調整した方法により、飛行を予定する日時、飛行高度、機体数などを空港事務所の求めに応じ連絡すること。

進入表面等下空域

進入表面や転移表面の下の空域、あるいは空港の敷地上空の空域で空中散布を行う際の体制として、以下の点が規定されました(マニュアル3-3を要約)。

  • 無人航空機を飛行させる際には、空港設置管理者(空港事務所など)と常に連絡がとれる体制を確保すること。
  • 予め調整した空港設置管理者からの条件について、申請書等に記載すること。
  • 無人航空機の飛行について、補助者が周囲に周知を行うこと。
  • 飛行場所が人口集中地区にあっては、飛行させる無人航空機について、プロペラガードを装備して飛行させること。装備できない場合は、第三者が飛行経路下に入らないように監視及び注意喚起をする補助者を必ず配置し、万が一第三者が飛行経路下に接近又は進入した場合は、飛行を中止する等適切な安全措置をとること。

条文が示すこと

空港管理者等連携

これらの条文が明確に示しているのは、空港周辺での空中散布を行う際には、その空域の特性(進入表面等上空か、下か、敷地上空かなど)に応じ、空港設置管理者や管制機関といった関係機関との「常に連絡がとれる体制の確保」が必須であるということです。

これは、単に許可申請が必要かどうかに関わらず、空港の安全な運航に影響を与えうる場所で飛行を行う際には、関係機関と密に連携を取り、必要な情報共有や指示を受けることができる体制を構築しておくことの重要性を強調しています。

周知と安全措置

また、条文は「補助者が周囲に周知を行う」ことの重要性も示しています。

これは、空中散布が行われていることを周辺の人々に知らせ、安全な距離を保ってもらうための措置です。

さらに、人口集中地区での空中散布においては、プロペラガードの装備や、それができない場合の補助者による徹底した第三者監視と安全措置を義務付けており、特に人や物件へのリスクが高い場所での安全確保を強く求めています。

人口集中地区

条文中の人口集中地区に関する規定は、空港周辺かつ人口集中地区という、特に安全確保の必要性が高い場所での空中散布に対する、具体的な安全対策を示しています。

プロペラガードや補助者による第三者排除の措置は、万が一の機体落下や接触による人身・物損事故を防ぐための重要な措置です。

空港周辺規制

なぜ特別か

空港周辺の空域は、航空機が安全に離着陸・航行するために設定された特別な空域であり、ドローンの飛行は航空機の運航に直接影響を与えるリスクがあります。

特に進入表面や転移表面といった空域は、航空機が通過する重要な空間です。

空中散布を行うドローンは比較的低速で低高度を飛行することが多いため、航空機との速度差や高度差が小さくなり、衝突リスクが高まる可能性も考慮する必要があります。

許可申請との関係

空港等の周辺空域でのドローン飛行は、原則として航空法上の許可申請が必要です。

今回の空中散布マニュアルの改正は、この許可申請が必要となるケース(または許可不要なケースであっても)において、空港周辺での空中散布を行う際の具体的な安全対策、特に空港側との連携や周知、人口集中地区での安全措置といった点を詳細に定めたものと言えます。

マニュアルに沿った安全対策を講じていることが、許可申請の審査においても重要な判断要素となります。

空港連携が鍵

当局確認結果

空中散布マニュアルの改正を受けて、空港周辺での空中散布は全て個別申請が必須になるのか、といった疑問が生じるのは当然です。

この点について当局に確認された結果が、「許可申請の有無に関わらず空港側と連携取れるようにしておく」との趣旨であったというこよは非常に示唆に富んでいます。

これは、法的な許可の要否だけでなく、実際の安全確保という観点から、空港側との連携が不可欠であるという国の考え方を明確に示しています。

許可不要でも

たとえ航空法上の許可申請が不要な空中散布(例:空港周辺空域に該当しない場所での飛行など)であっても、空港周辺という立地で飛行を行う限り、空港側との連携が推奨されます。

上空を通過する航空機や、空港の運用に影響を与える可能性はゼロではないため、空港側がドローンの飛行情報を把握しておくことは、空港の安全な運航にとって重要です。

万が一の事態が発生した場合の、迅速な情報共有や対応のためにも連携は不可欠です。

安全な空散へ

条文に基づく対応

今回解説したマニュアルの条文内容は、空港周辺での空中散布における具体的な行動指針となります。

「常に連絡がとれる体制の確保」「飛行計画の連絡」「補助者による周知」「人口集中地区でのプロペラガードまたは補助者配置」といった点は、空港周辺で空中散布を行う全ての事業者が遵守すべき重要な事項です。

これらの条文に沿った安全対策を確実に実施することが求められます。

実践的な注意

空港周辺で空中散布を行う際は、事前に飛行場所が空港のどの空域(進入表面上空か下かなど)に該当するかを確認し、その空域に応じたマニュアルの規定を正確に理解することが必要です。

空港管理事務所や管制機関(該当する場合)に事前に連絡を取り、飛行計画を共有し、安全確保のために必要な指示や情報提供を仰ぎましょう。

人口集中地区での作業では、条文に基づき、プロペラガードの装備や、徹底した第三者監視と安全措置を確実に実施してください。

結びにかえて

空中散布マニュアルの改正による空港周辺規定の追加は、空港周辺での安全運航を一層強化するための重要な変更です。

追加された条文は、空港設置管理者等との連携体制、情報連絡、周知、人口集中地区での安全措置といった具体的な行動を求めています。

これらの条文に沿った安全対策を講じ、「許可申請の有無に関わらず空港側と連携取れるようにしておく」という国の趣旨を理解し実践することが、空港周辺での安全な空中散布運用の鍵となります。

今回の改正を機に、空港周辺でのドローン空中散布における安全意識と関係機関との連携体制を改めて見直し、法令遵守と安全第一を徹底してまいりましょう。

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