ドローン空港隣地飛行の交渉術と条件付き許可:矢野事務所

ドローン空港隣地飛行の交渉術と条件付き許可

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。

ドローンを用いた空撮や点検業務は、その利便性から多様な場所で求められます。

しかし、空港の周辺、特に滑走路に近接するエリアでの飛行は、航空機の安全運航に直結するため、非常に厳格な規制が課せられます。

今回は、地方空港の滑走路隣地500m(水平表面・高さ制限超え)という極めてデリケートな空域で、「一度しか残せない工場建設の記録」という特別な事情を説明し、様々な条件付きで飛行許可を取得できた事例を、具体的な交渉経緯と許可条件を交えてご紹介します。

空港隣地飛行の現実:まずは「閉鎖時間外」

空港周辺でのドローン飛行許可申請は、その難易度の高さから、複数の機関との綿密な調整が不可欠です。

今回のケースでは、空港事務所、管轄空港事務所、そして国土交通省 航空局の三つの許可が必要でした。

当初、空港の事務所からは、飛行が航空機に影響を与える可能性があるため、「空港運用時間(7時~22時)外での飛行」という、実質的に夜間や早朝に限定される選択肢が提示されました。

これは、空港周辺飛行のデフォルトとも言える厳しい条件です。

しかし、今回の飛行目的は「一度しか残せない工場建設の記録」であり、その性質上、日中の特定の時間帯での空撮が不可欠でした。

例えば、日中の光の条件、工場建設の進捗状況の記録、作業員の安全確保といった要因を考慮すると、空港閉鎖時間外の飛行では目的を達成できません。

「一度しか残せない」事情が切り開いた道

そこで、この「一度しか残せない」という飛行目的の特殊性を、単なる申請理由としてだけでなく、空港事務所に対して具体的な事情として丁寧に説明しました。

映像記録の重要性、建設現場の工程、そして日中の限られた時間でのみ可能な撮影であることなど、今回の飛行が持つ唯一無二の価値を伝えることになりました。

この説明の結果、空港事務所からは当初の「運用時間外での飛行」という選択肢に加え、次の条件を厳守した上での飛行」という、運用時間内での飛行を可能にする代替案が提示されました。

これは、空港事務所が私たちの事情を考慮し、最大限の協力をしてくださった結果であり、非常に画期的な計らいでした。

許可取得の「様々な条件」とその対応

提示された「次の条件」は、空港隣地という特殊な環境で安全を確保するための、非常に具体的かつ厳格なものでした。

【空港事務所からの調整事項と条件(抜粋)】

飛行日時: 5月18日(土)~24日(金)のいずれか1日(13時~14時のあいだ)

    • 対応: 候補日と時間帯が特定されており、この期間内で最適な日を選択し、前日までに連絡する義務を負いました。

飛行高度等: 地盤高264m/地上等からの高度149m/海抜高度413m

    • 対応: 水平表面制限高316.6mを超える場所での飛行でしたが、空港運用に影響を与えないよう、航空管制官との調整で許容された最大高度を厳守しました。

その他

(1)30分以下の飛行とすること。

    • 対応: 限られた時間内での効率的な撮影計画を立て、それを厳守することを約束しました。

(2)地上等からのドローン飛行高度149m以下とすること。

    • 対応: 許可された高度を絶対に超えないよう、フライトプランと機体設定を厳格に行いました。

(3)申請飛行エリアから逸脱しないこと。

    • 対応: 添付経路図で示した範囲から一歩も出ないよう、厳密なGPS設定と操縦者の監視を徹底しました。

(4)航空管制官からドローン飛行中止の指示を受けた場合は、速やかに従うこと。

    • 対応: これは最優先事項であり、管制官からの指示は絶対であることを現場で徹底しました。

(5)航空管制官と現場との連絡手段を確立することとし、次の時点にて連絡すること。

a 飛行開始直前

b 飛行終了後遅滞なく

c 航空管制官から飛行中止の指示があった場合、飛行終了後遅滞なく

対応: 飛行チームと管制官の間で、確実に連絡が取れる専用の連絡体制(無線機など)を準備し、各フェーズでの報告義務を厳守しました。

(6)飛行日時を前日の13時までに航空管制官に連絡すること。

    • 対応: 確実な連絡体制と、計画通りの実行を担保しました。

(7)航空機が接近する恐れがある場合は、飛行の一時停止等安全のための措置を講じること。

    • 対応: 補助者による常時監視に加え、航空機接近時には直ちに飛行を一時停止し、安全な場所へ着陸させる訓練を実施しました。

これらの条件は、ドローンの運用時間や方法に大きな制約を与えるものでしたが、航空機の安全運航を最優先とする空港側の配慮と、ドローン飛行の必要性を理解してくれた結果として、私たちはこの条件を受け入れ、厳守しました。

難易度の高い申請を成功させる鍵

今回の事例は、空港隣地という高難度な場所でのドローン飛行許可を成功させるための、いくつかの重要なポイントを示しています。

  1. 目的の具体性と説得
    「一度しか残せない」という明確で、かつ代替手段が困難な飛行目的は、当局が条件付き許可を検討する上で重要な要素となります。
  2. 粘り強い交渉と丁寧な説明
    最初から諦めず、なぜその時間帯でなければならないのか、なぜその場所で飛ばす必要があるのかを具体的に説明することが不可欠です。
  3. 徹底した安全対策の提示と実行
    提示された条件をただ受け入れるだけでなく、それを確実に実行するための具体的な体制(人的配置、連絡手段、緊急時対応など)を明確に示し、実行する能力があることを証明する必要があります。
  4. 関係機関との連携
    空港事務所、管制、航空局といった複数の機関と密に連携を取り全ての許可要件を満たすことが鍵です。

ドローン飛行の許可申請は、単なる書類提出に留まりません。

特に、今回の事例のようなデリケートな空域での飛行は、関係機関との信頼関係構築と、安全への絶対的なコミットメントが求められます。

私たち行政書士は、このような複雑で難易度の高い申請においても、お客様の「飛ばしたい」を安全かつ適法な形で実現できるよう、全力でサポートしてまいります。

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行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。

全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。

 

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