ドローン飛行『許可不要』の裏にある自己責任:矢野事務所

ドローン申請『許可不要』の裏にある自己責任

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。

「飛行許可」は単なるOKサインではない

ドローンを飛ばす際、私たちは国土交通大臣の「飛行許可・承認」が必要かどうかを常に確認します。

しかし、この「飛行許可」という言葉が持つ意味を、私たちはどこまで深く理解しているでしょうか。

Xに投稿したように「飛行許可」とは単なる「飛んでいいですよ」というOKサインではなく、「申請行為に対する結果」にほかなりません。

許可書をよく見ると、「申請した飛行マニュアルの遵守が条件」と明確に記載されています

これは、あなたが提出した「この方法で安全に飛びます」という約束事を、国が確認し、その約束を守ることを前提に「許可します」という、行政行為の本質を示しています。

つまり、許可を得た飛行とは国との間で安全飛行に関する具体的「契約」を結んだ状態と言えるでしょう。

新制度がもたらす「許可不要」飛行の衝撃

2022年12月5日に施行された改正航空法により、ドローンの特定飛行における新たな制度が導入されました。

その中でも特に大きな変化は、「認証機」と「技能証明」を持つ操縦者が行う一部の特定飛行が、「許可不要」となったことです。

Xの投稿にある「許可不要の認証機&技能証明の夜間目視外飛行」は、まさにこのケースを指しました。

これは、国が機体と操縦者の安全性を高いレベルで認証することで、「この組み合わせならば、個別の飛行申請を省略しても安全が担保される」と判断した結果です。

これにより、ドローン運用の柔軟性は格段に向上し、例えば物流や点検といった分野で、より効率的な運用が可能になりました。

しかし、「許可不要」という言葉には、大きな「裏側」が隠されています。

「独自マニュアルの審査」が「申請不要」とされた真意

Xの投稿では、「許可不要の認証機&技能証明の夜間目視外飛行」に使う独自マニュアルの審査を航空局に依頼したところ、それも「申請不要」とされたという方の実例を紹介しています。

これは、私たち行政書士にとっても深く頷ける「航空局の真意」を示しています。

なぜ、せっかく作成した独自マニュアルの審査すら「不要」とされたのでしょうか?

それは、まさに「申請行為なし=自己責任飛行」という、新制度の核心を突く行政の姿勢に他なりません。

国は、認証機と技能証明という、いわば「お墨付き」を与えました。

これにより、「この機体と操縦者なら、個別の飛行計画は操縦者自身が責任を持って管理できるだろう」という判断を下したということです。

したがって、「許可申請」という行政行為そのものが発生しないため、その付属物である「マニュアルの審査」も原則として行わないという、首尾一貫した立場を取っていると思います。

これにより、ドローン操縦者は、行政の直接的な審査なしに、夜間や目視外といったリスクの高い特定飛行を実施できる自由を得ました。

しかしその代償として、飛行の安全に関するあらゆる責任を操縦者自身が負うことになったということです。

「自己責任飛行」が操縦者に求めるもの

「申請行為なし=自己責任飛行」という原則は、ドローン操縦者に、これまで以上に高いプロ意識と自己管理能力を求めます。

許可を得ていれば「お墨付き」がありますが、「許可不要」の場合は、事故発生時やトラブル発生時に、操縦者自身の安全管理体制が根こそぎ問われることになります。

1. 独自マニュアルの作成と厳格な遵守

たとえ行政への提出が不要でも、自ら「独自マニュアル」を作成し、厳格に遵守することが極めて重要です。

このマニュアルは、あなたの安全に対する哲学と具体的な手順を示すものであり、万が一の際に「自分はこれだけの安全対策を講じていた」と証明する唯一の根拠となります。

マニュアルには、以下のような内容を具体的に盛り込むべきです。

  • リスクアセスメント
    飛行場所、日時、目的、機体、周辺環境に応じたリスク(例:突発的な第三者の侵入、電波干渉、急な天候変化)の特定とその対策。
  • 飛行前点検リスト
    機体、バッテリー、送信機、プロペラ、通信系統など、全ての項目の詳細なチェック。
  • 緊急時対応手順
    バッテリー切れ、電波ロスト、機体トラブル、墜落、第三者への危害発生時などの具体的な対応フロー。
  • 補助者の配置と役割
    必要に応じた補助者の配置基準とその役割、連絡体制。
  • 飛行日誌の記録
    飛行日時、場所、操縦者、機体情報、特記事項などを詳細に記録。

2. 高い操縦技能と知識の維持・向上

「技能証明」は一度取得すれば終わりではありません。

常に自身の操縦技能を磨き、航空法規や機体に関する最新の知識をアップデートし続ける必要があります。

特に、GPSに頼らない手動操縦能力や、緊急時の的確な判断力は、自己責任飛行において不可欠です。

3. 社会的受容性への配慮

許可不要であっても、周囲への配慮は不可欠です。飛行場所の周辺住民への事前周知、騒音への配慮、プライバシー侵害への細心の注意など、地域社会と共存するための努力を怠ってはなりません。

これらの配慮は、トラブルや通報のリスクを低減し、ドローン産業全体の信頼性向上にも繋がります。

まとめ

ドローンの「飛行許可」は、単に行政から与えられるものではなく、私たちが提示する安全な飛行計画(マニュアルなど)に対する承認です。

そして、新制度で実現した「許可不要」の飛行は、操縦者に大きな自由を与える一方で、安全に対する「自己責任」の重みを飛躍的に増大させました。

行政が直接審査しないからこそ、私たちドローン操縦者は、自らの手で高水準の「独自マニュアル」他を作成し、それを厳格に遵守するプロ意識が求められます。

また、常に知識と技能を研鑽し、地域社会への配慮を忘れないことで、初めて「許可不要」の真価を発揮し、安全で持続可能なドローン運用を実現できます。

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