この包括申請でよく許可される飛行方法として、以下の4つが挙げられます。
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人又は物件から30m未満の距離での飛行(人モノ30m)
- 人口集中地区(DID地区)上空での飛行
これらをまとめて申請し、許可を取得されている方も多いかと思います。
しかし、ここで一つ、非常に重要な落とし穴があることをご存知でしょうか?
それは、これらの許可された飛行方法を、自由に組み合わせて飛行できるわけではないということです。
組合せ飛行はNG?
包括申請で「夜間飛行」と「目視外飛行」の両方の許可を得ているとします。
では、夜間に目視外でドローンを飛行させることは許可されているのでしょうか?
包括申請の許可書を持っているから大丈夫、と思ったら、それは誤解である可能性が非常に高いです。
多くの場合、標準的な包括申請の許可は、上記の飛行方法それぞれを単独で行う場合について、所定の安全対策を講じることを条件として与えられています。
例えば、「夜間飛行」の許可は、夜間という条件下でのリスクに対応するための安全対策(例:機体の視認性を高める措置、補助者の配置など)を行うことで得られます。
同様に、「目視外飛行」の許可は、目視できない条件下でのリスクに対応するための対策(例:GPS等の活用、補助者との連携など)を行うことで得られます。
なぜ組み合わせNG?
問題は、これらの条件を組み合わせた場合の複合的なリスクが、標準的な申請やマニュアルでは想定されていない点にあります。
例えば、「夜間」かつ「目視外」での飛行は、それぞれの条件が持つリスクが合わさることで、より高度な安全対策が必要になります。
標準的な包括申請に添付される飛行マニュアル(標準マニュアルなど)は、通常、このような複数の困難な飛行方法を組み合わせた場合の具体的な手順や安全対策まではカバーしていません。
包括申請の許可は、「提出された飛行マニュアルや計画に沿って、安全に飛行が行われる」ことを前提に与えられます。
そのため、マニュアルに記載されていない、あるいは想定されていない「許可された飛行方法の組み合わせ」で飛行を行った場合、それは許可の範囲を逸脱した航空法違反の飛行となってしまうのです。
皆様が無意識のうちに、「夜間かつDID地区で飛行」「目視外かつ人モノ30m未満で飛行」といった組合せ飛行を行ってしまい、
知らず知らずのうちに航空法違反となっているケースが見受けられます。
正しい手続きは?
では、許可された飛行方法を組み合わせて飛行したい場合は、どうすれば良いのでしょうか?
適切な手続きは主に二つあります。
個別申請という手
最も確実なのは、その特定の組み合わせ飛行について、飛行日時、場所、具体的な飛行方法とそれに対する安全対策を明記し、改めて個別の飛行許可・承認申請を行う方法です。
これは、特定のプロジェクトなどで一度だけ複雑な組み合わせ飛行が必要な場合に適しています。
マニュアル変更
継続的に特定の組み合わせ飛行を行いたい場合は、包括申請を行う際に提出する飛行マニュアルを、その組み合わせ飛行におけるリスクと安全対策について具体的に追記・修正し、そのマニュアルの内容で許可・承認を得る必要があります。
標準マニュアルでは不足するため、ご自身でマニュアルを作成するか、標準マニュアルに必要な項目を追記するなどの対応が必要になります。
この、組み合わせ飛行に対応したマニュアルが承認されて初めて、包括申請の範囲内で組み合わせ飛行が可能となります。
違反しないために
ご自身の包括申請の許可書や、それに紐づく飛行マニュアルの内容を改めてご確認ください。
「夜間飛行」や「目視外飛行」などの項目が許可されていても「これらの条件を組み合わせて飛行する場合の安全対策」について具体的に記載がないマニュアルに基づいた許可であれば、その組み合わせ飛行は許可されていません。
包括申請は便利な制度ですが、その許可範囲には限界があります。安易な思い込みで許可された飛行方法を組み合わせてしまうと、意図せず法律違反となり、最悪の場合、国土交通省による指導や告発の対象となる可能性もあります。
ご自身の行いたい飛行が、包括申請の許可範囲内の単独飛行なのか、それとも追加の手続きが必要な組み合わせ飛行なのかをしっかりと見極め、常に安全と法令遵守を最優先にドローン飛行を行いましょう。
例外の二等二種