ドローン見積書、業務を細かく書く理由:矢野事務所

ドローン見積書、業務を細かく書く理由

 

このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。

ドローン業務と見積書

ドローンを使った業務は、私たちの目に見える「操縦」という行為の裏側に、非常に多岐にわたる専門的な作業が隠されています。

しかし、この「見えない業務」の価値が依頼者側に十分に伝わらず、単なる操縦にかかる時間や機材費だけで報酬を判断されてしまう、という課題を多くのドローン事業者が抱えています。

先日、あるドローン事業者の社長様から、見積書や請求書に業務内容を細かく記載する理由について伺いました。

それは、「飛行の成り立ちを教えなければ、操縦業務にしか価値を感じてもらえない。だからこそ、正当な報酬をいただく根拠を示したい」という強い思いからです。

この事業者は、たとえ大手顧客からの依頼であっても、業務への無理解がある場合は毅然として断ることもあるそうです。

これは、プロフェッショナルとしての強い矜持を示しています。

ドローン業務「見えない価値」とは

ドローンの操縦は、確かに高度なスキルを要する業務です。

しかし、ドローン業務の真の価値は、操縦そのものに留まりません。

飛行の安全性を確保し、法令を遵守し、そして高品質な成果物を納品するために、飛行前、飛行中、飛行後に膨大な「見えない業務」が発生しています。

これこそが、ドローン業務の「見えない価値」の核心です。

これらの業務は、お客様が安心してドローンサービスを利用できる基盤であり、ドローン事業者が負う責任の範囲でもあります。

業務の具体例

では、具体的にどのような業務が「見えない価値」として見積書・請求書に記載されるのでしょうか。

  • 規制確認(法令調査)
    飛行場所の法令(航空法、小型無人機等飛行禁止法、各自治体の条例など)調査、管理者への確認、飛行の可否判断、必要な許可・承認申請の要件調査など、飛行の根幹に関わる重要な業務です。
  • 操縦業務
    ドローンの実際の操縦、飛行中の機体監視、安全管理、データ取得といった、直接的な飛行に関わる業務です。
  • 空域監視・立入監視
    飛行中の周囲の空域(有人機、他のドローンなど)や、地上(第三者)の安全を常時監視する業務です。複数人で連携し、危険を察知した際の対応計画も含まれます。
  • 飛行計画通報・申請
    航空局への飛行許可・承認申請書の作成・提出、警察や消防、空港事務所、航空交通管理センター(ATC)など、関係機関への事前通報や空域調整、連携の業務です。
  • 報告書作成
    飛行後のログデータ解析、取得した写真・動画・データの整理、分析、納品形式への加工、お客様への報告書作成など、成果物をまとめるための業務です。空撮の目的によっては不要な場合もありあります、様々です。
  • 機材費・維持管理費
    ドローン本体、バッテリー、送信機、安全ネット、標識などの機材購入費用だけでなく、機材の定期的な点検・メンテナンス、修理、消耗品の交換にかかる費用も含まれます。
  • その他
    ドローン保険料、現場までの移動費、通信費、スタッフの人件費、安全教育・技能向上のための研修費など、事業運営にかかる諸経費も考慮されるべき項目です。

これらの項目一つ一つが、安全で質の高いドローンサービスを提供するために不可欠なプロセスであり、正当な報酬をいただく根拠となるのです。

適正報酬への道筋

ドローン事業者が業務を細分化し、見積書や請求書に具体的に記載する理由は、依頼者側に「飛行の成り立ち」を理解してもらい、単なる操縦ではない、多岐にわたる専門業務の対価として報酬をいただくためです。

これにより、依頼者はドローン業務の複雑性と安全確保にかかる労力を可視化できます。

これは、業者と依頼者の間での透明性を高め、サービス内容への理解を深めることで、より強固な信頼関係を築くことに繋がります。

適正な報酬は、事業者が継続的に高品質なサービスを提供し、最新の機材や技術、安全対策に投資するための基盤となります。

プロの矜持と顧客選択

「無理解な依頼は大手顧客でも断る」という姿勢は、ドローン事業者のプロとしての強い矜持と、安全運航へのゆるぎない責任感を示しています。

安易な価格競争に巻き込まれず、自らが提供するサービスの価値を正しく評価してもらうこと、そして安全と法令遵守を最優先するという強い意志の表れです。

顧客側も、単に価格の安さだけで事業者を選ぶのではなく、提供されるサービスの範囲、安全対策の具体性、そして事業者の経験や実績、安全意識の高さなどを総合的に評価して選ぶべき時代です。

ドローン業務は、その性質上、万が一の事故が甚大な被害をもたらす可能性を秘めているため、価格以上の「安心」と「信頼」を重視する視点が不可欠です。

まとめ

ドローン業務は、単なる操縦スキルだけでなく、法令調査から飛行計画通報、空域・立入監視、報告書作成、機材管理に至るまで、多岐にわたる専門性の集合体です。

これらの「見えない価値」を業務として可視化し、見積書・請求書に細かく記載することは、事業者側が正当な報酬をいただくための根拠となり、依頼者側がサービスの真の価値を理解するための重要なステップです。

安全で質の高いドローンサービスが社会に広く普及するためには、ドローン事業者がプロとしての矜持を持ち、その業務の価値を適切に伝える努力をすること、そして依頼者側がその価値を理解し、適正な報酬を支払うことで、健全な業界が発展していくと思います。

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