
目視外飛行は許可だけでは成立しない|矢野事務所
ドローンの目視外飛行は、許可・承認を取得すればそのまま実施できる。
実務では、このように理解されていることがあります。
しかし、目視外飛行は「許可取得」で完結する飛行ではありません。
機体を直接目で確認できない以上、機体の位置、周囲の状況、第三者の接近、異常時対応をどのように把握するのかが問題になります。
つまり、目視外飛行では「許可があるか」だけではなく、「見えない状態でも安全確認が成立する構造になっているか」が問われます。
このページで分かること
目視外飛行は確認能力が落ちる飛行
目視外飛行とは、操縦者が機体を直接目視できない状態で行う飛行です。
そのため、通常の目視内飛行とは前提が大きく異なります。
目視内であれば、操縦者は機体の位置、向き、高度感、周辺との距離感を直接確認できます。
しかし、目視外になると、その確認能力が落ちます。
問題になるのは、単に機体が見えないことだけではありません。
- 機体の向きや位置関係を把握しにくい
- 第三者の接近に気づきにくい
- 障害物との距離を確認しにくい
- 飛行経路上の変化を把握しにくい
- 異常時の判断が遅れやすい
このため、目視外飛行では、見えない部分をどのように補うかが実務上の中心論点になります。
許可があっても確認体制がなければ成立しない
目視外飛行では、許可・承認を取得していても、現場の確認体制が不十分であれば運航は成立しません。
例えば、次のような状態です。
- 補助者の配置が曖昧
- 監視範囲が明確でない
- 操縦者と補助者の連絡方法が決まっていない
- 第三者接近時の対応が決まっていない
- 通信断時の停止基準がない
- 飛行経路上の変化を把握する方法がない
このような状態では、「許可があります」と説明しても、安全確認が成立しているとは言いにくくなります。
目視外飛行では、許可の有無だけではなく、見えない範囲をどのように管理するかが重要です。
この違いは、手続型と判断設計型の違いとして整理できます。
補助者配置は「人数」ではなく「機能」が問題
目視外飛行では、補助者の配置が重要になります。
しかし、補助者を置けばそれで足りるわけではありません。
重要なのは、補助者が何を見て、何を伝え、どの場面で飛行を止める判断につなげるのかです。
例えば、
- 補助者が監視する範囲
- 操縦者への連絡方法
- 第三者接近時の合図
- 異常時の停止指示
- 補助者同士の役割分担
- 飛行経路全体をどう把握するか
が曖昧だと、補助者を配置していても実際には機能しません。
つまり、目視外飛行では「補助者がいるか」ではなく、「補助者が安全確認の一部として機能しているか」が問われます。
ましてや、補助者を置かない飛行では、監視・周知・第三者接近時の停止判断をどう維持するかは、最重要の設計事項です。
また、包括許可で目視外飛行が認められていても、現場条件によっては運航が成立しないケースがあります。
特に、第三者管理、通信品質、補助者機能、飛行経路管理が不十分な場合は、包括許可があっても実務上は止まります。
包括許可と現場成立性の違いについては、包括申請でも成立しない飛行とは|矢野事務所でも整理しています。
これは、単なる許可取得ではなく、ドローンは操縦でなく運航管理|矢野事務所の問題です。
通信断や異常時の対応を先に決めておく必要がある
目視外飛行では、通信断や異常時対応も重要になります。
機体が見えない状態で通信が不安定になると、状況把握が難しくなります。
そのため、次のような点を事前に決めておく必要があります。
- 通信が不安定になった場合の対応
- 映像伝送が途切れた場合の対応
- 機体位置の確認方法
- 安全に帰還させる手順
- 飛行を中止する基準
- 補助者との情報共有方法
これらを決めないまま目視外飛行を行うと、異常時に判断が遅れます。
特に、第三者がいる可能性のある場所では、判断の遅れが重大な問題になります。
目視外飛行では、異常が起きてから考えるのではなく、異常が起きた場合にどう止めるかを先に決めておく必要があります。
目視外飛行では、飛行開始時に成立していた確認体制が、飛行中に崩れることがあります。
通信品質低下、映像遅延、補助者死角、第三者接近などによって、途中から安全確認が成立しなくなるケースもあります。
つまり重要なのは、「開始時に成立していたか」ではなく、「飛行中も状態維持できるか」です。
第三者管理との関係を外して考えることはできない
目視外飛行では、第三者管理の難易度も上がります。
操縦者が機体を直接見ていないため、第三者との位置関係を直感的に把握しにくくなるからです。
そのため、飛行経路周辺に第三者が入る可能性がある場合は、管理方法を具体的に整理する必要があります。
例えば、
- 飛行経路下に第三者が入らないようにできるか
- 補助者が第三者の接近を確認できるか
- 第三者接近時に直ちに中止できるか
- 離着陸地点の周囲を管理できるか
- 通行人や車両の動きを把握できるか
を確認する必要があります。
第三者管理が曖昧なままでは、目視外飛行は実務上成立しにくくなります。
第三者と関係者の整理が曖昧な場合、目視外飛行ではさらに判断が難しくなります。
この問題については、第三者と関係者の整理で止まる理由:矢野事務所でも整理しています。
後から問われるのは「どう確認していたのか」
目視外飛行では、事故後、苦情後、管理者確認後に、「どうやって安全確認をしていたのか」が問われます。
その際に問題になるのは、単に許可・承認を取得していたかだけではありません。
- 機体位置をどう把握していたか
- 飛行経路周辺をどう確認していたか
- 第三者の接近をどう把握していたか
- 補助者はどの範囲を監視していたか
- 通信断時にどう対応する予定だったか
- どの状態になったら中止することにしていたか
こうした内容を説明できなければ、許可があっても実務上は弱い運航になります。
目視外飛行では、「許可を取った」だけではなく、「見えない部分をどう確認していたか」を説明できることが重要です。
この整理は、判断設計として事前に組み立てておく必要があります。
目視外飛行は許可取得ではなく確認構造の整理
目視外飛行では、機体を直接確認できません。
だからこそ、補助者、監視体制、通信断対応、第三者管理、中止判断が重要になります。
許可・承認を取得していることは前提です。
しかし、それだけでは目視外飛行の安全確認は成立しません。
重要なのは、見えない状態でも、誰が何を確認し、どの状態になったら止めるのかを整理しておくことです。
つまり、目視外飛行は「許可取得の問題」ではなく、「確認構造の問題」です。
その確認構造が整理されて初めて、目視外飛行は実務上の運航として成立します。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています

