ドローン運航の判断設計・体制構築

ドローン目視外訓練、その驚く方針を聞いた:矢野事務所


先日、NEDOの実証実験を2年にわたり成功させた運航事業者社長様から、非常に興味深いドローンの訓練方針について伺いました。

それは、「モニターでの操縦能力」を徹底的に鍛えるために、あえて「目視操縦を禁止する」というものです。

これは、一般的なドローンの訓練とは異なる、高度な、あるいは特殊なミッションを遂行するための、まさにプロフェッショナルな視点に基づいた方針だと感じました。

ただし、このレベルの体制と訓練を前提にしない目視外飛行は、現場では成立しないケースがほとんどです。

さらに、単独操縦は禁止とし、P(パイロット)とCo-P(コパイロット)の最低2名体制に補助者必須、つまり3名以上のチームでの運用を基本としているとのこと。

そして、この訓練を通じて、操縦技能だけでなく、補助者としての技能も同時に鍛えている、というお話に、高度なドローン運航における安全確保の奥深さを改めて気付かされました。

この場所で事故にならずに運航できるかは、条件によって変わります。

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目視外飛行とは

ドローンの飛行ルールにおいて、最も基本的な原則は「目視内飛行」です。

これは、操縦者が自分の目で見える範囲内でドローンを飛行させるというものです。

しかし、長距離でのインフラ点検、広範囲の測量、あるいは災害現場での情報収集など、業務によっては目視の範囲を超えた飛行が必要となる場合が多々あります。

これが「目視外飛行」です。

目視外飛行を行うためには、航空法に基づく国土交通大臣の許可・承認が必要であり、その許可を得るためには、目視外飛行に必要な操縦技能や安全確保体制が求められます。

目視外飛行が可能になることで、ドローンの活用範囲は飛躍的に広がります。

モニター操縦習得

目視外飛行では、操縦者はドローンに搭載されたカメラからの映像をモニターで見ながら操縦を行います。

伺った訓練方針は、この「モニターでの操縦能力」を極限まで高めることに焦点を当てています。

通常の目視操縦では、機体の姿勢や動きを直接視覚情報として得られますが、モニター越しの情報だけでは、距離感、高度、速度、そして周囲の微妙な状況変化を正確に把握することが格段に難しくなります。

目視操縦を禁止することで、強制的にモニターの情報だけに頼る環境を作り出し、そこから必要な情報を正確に読み取り、機体を意図通りに制御する能力を徹底的に鍛えるのです。

これは、有視界飛行が困難な悪天候下や、どうしても目視できない場所での飛行を想定した、非常に実践的な訓練と言えるでしょう。

チーム運用の利点

筆者が伺った事業者は、単独操縦を禁止し、P(操縦者)、Co-P(副操縦者)、そして補助者という複数人体制を必須としているとのことです。

これは、特に高度な飛行や複雑なミッションを行う上で、安全性を劇的に高める運用体制です。

Pは操縦そのものに集中し、Co-Pは飛行計画や機体状況の確認、指示出しなどを担当、そして補助者は飛行経路上の安全監視や周囲への声かけなどを行います。

それぞれの役割が連携することで、単独では見落としがちな危険因子を複数人でチェックし、リスクを分散させることができます。

補助者の重要性

興味深かったのは、この事業者が「補助者技能」も同時に鍛えているという点です。

補助者は単にドローンを目で追っているだけではありません。

飛行ルート上に予期せぬ人や車両が立ち入らないか、風向きの変化はないか、機体に異常はないかなど、操縦者がモニターに集中している間に、周囲の状況を的確に判断し、操縦者に正確かつ迅速に情報を伝える重要な役割を担います。

高度な目視外飛行においては、補助者の果たす役割は非常に大きく、その技量や判断力が安全確保の鍵となります。

補助者も、操縦者と同様に、高い安全意識と状況認識能力が求められるのです。

チーム全体の安全レベルは、最も弱い部分ではなく、各メンバーが高いスキルと連携能力を持つことによって引き上げられます。

高度な訓練とは

NEDOの実証実験のような、国が推進するプロジェクトにおいてドローンを運用し成功させるためには、通常の基本的な操縦訓練だけでは不十分です。

様々な状況を想定したシミュレーター訓練、悪条件下での実践的な飛行訓練、そして複数人での連携訓練など、計画的で質の高い訓練が不可欠となります。

「安全・危険を熟知した高技能者」にリスクの大きな飛行が託されるのは、彼らがこうした高度な訓練を通じて、予期せぬ事態にも冷静に対応できる判断力と、安全を最優先に行動できる倫理観を身につけているからです。

 

※許可が取れることと、目視外飛行が運用として成立することは別問題です。補助者・第三者管理・個別申請の考え方を含めた全体整理は
目視外飛行の成立条件と判断整理|矢野事務所
で解説しています。

まとめ

高度なドローン運用、特に目視外飛行や特殊なミッションにおいては、単にドローンを飛ばす技術だけでなく、モニターから正確な情報を読み取る能力、チームメンバーとの密な連携、そして補助者を含む全員が高い安全意識と専門技能を持つことが不可欠です。

NEDO実証を成功させた事業者の訓練方針から見られるように、あえて厳しい条件下での訓練を取り入れたり、複数人でのチーム運用を基本としたりすることは、最大限の安全を確保しつつ、困難な任務を達成するための合理的なアプローチと言えるでしょう。

ドローン活用の幅が広がるにつれて、求められる操縦者の技能レベルも高まっています。

安全なドローン飛行を実現するためには、日頃から操縦技術だけでなく、安全運航のための知識と意識を継続的に向上させていくことが重要です。

そして、将来的に高度なミッションに関わりたいと考えるのであれば、今回ご紹介したような、より実践的でレベルの高い訓練を検討することも、一つの道と言えるでしょう。

許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません

ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。

  • 第三者管理は維持できますか?
  • 監視体制は機能しますか?
  • 中止判断は定義されていますか?
  • 関係者への説明は通りますか?

これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。

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