
ドローンNEDO実証事業、2年間の知見
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
【ニ年に亘る】NEDO実証事業が終わりました。DID・河川・ダム・沿岸部・改造機・Lv2→3→3.5…。全てUTM開発の一環でしたが申請に継ぐ申請は得難い経験でした。一方で気になるのは3.5の課題である自律飛行を軸とした収支採算モデルです。適法・安全な「運航計画の策定」と共に不可欠な成功要件です。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) May 20, 2025
ドローン産業の未来を切り拓くためには、技術開発だけでなく、実際の社会での運用における知見と、それを支える制度設計が不可欠です。
国土交通省やNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)といった公的機関が推進する実証事業は、その最前線であり現場からのフィードバックは計り知れない価値を持ちます。
先日、私自身の経験をXに投稿しましたが、「二年に亘るNEDO実証事業」が無事終了しました。
このプロジェクトは、DID(人口集中地区)での飛行、河川、ダム、沿岸部、改造機といった多様な条件下での運用、そしてレベル2から3、さらには3.5へのステップアップを伴うものでした。
これら全てがUTM(無人航空機交通管理システム)開発の一環として行われ、その過程での「申請に継ぐ申請」は、私にとって得難い経験となりました。
一方で、今回の実証を通じて見えてきたのは、「レベル3.5の課題である自律飛行を軸とした収支採算モデル」という、ドローン事業の持続可能性を左右する喫緊のテーマです。
このページで分かること
NEDO実証事業の軌跡
NEDOは、革新的な技術開発とその社会実装を推進する国立研究開発法人です。
ドローン分野においても、UTM開発のような次世代インフラの構築を目指し、大規模かつ長期的な実証事業を全国各地で行っています。
「二年に亘る」という期間は、ドローンの実用化における技術的、法的な課題を深く掘り下げ、具体的な運用ノウハウを蓄積するために不可欠な時間です。
この長期プロジェクトの中で得られた知見は、単なる技術的な成果に留まらず、法制度の整備や運用基準の策定にも大きく貢献しています。
「申請に継ぐ申請」の現実
今回終了したNEDO実証事業では、その多様な飛行条件から、「申請に継ぐ申請」という膨大な事務作業が発生しました。
- 多様な飛行条件
- DID(人口集中地区)での飛行: 人家密集地での高リスク飛行。
- 河川・ダム・沿岸部: それぞれ異なる管理者との調整や、特有の気象・環境条件への対応。
- 改造機: 特殊なセンサーやペイロードを搭載するための機体改造に伴う申請の複雑さ。
- レベルアップの段階
- レベル2: 目視内・補助者ありの特定飛行。
- レベル3: 補助者なし目視外飛行。
- レベル3.5: レベル3の高度化に加え、特定の条件下で有人地帯での飛行も視野に入れる段階。
これらの各段階への移行や、異なる場所・条件での飛行ごとに、航空局への詳細な飛行許可・承認申請が必要となります。
飛行マニュアルの改訂、安全体制の強化、リスクアセスメントの見直しなど、申請書類の準備には多大な労力を要します。
この「申請に継ぐ申請」の経験は、まさにドローン実務における最先端の課題と、その解決に向けた知見が凝縮された得難い経験でした。
自律飛行と収支採算モデル
私は申請担当ではありましたが、今回の実証を私なりに感じた課題の一つが、「レベル3.5の課題である自律飛行を軸とした収支採算モデル」です。
ドローンは、将来的にはGPSやAIを活用した「自律飛行」が主流となり、ラストワンマイル配送や広域インフラ点検など、人手を介さない運用が期待されています。
しかし、この自律飛行をビジネスとして成立させるには、以下の具体的な課題が存在します。
- 初期投資コスト
高性能な自律飛行対応機体、システム開発、堅牢な通信インフラへの巨額な初期投資。 - 運用コスト
機体のメンテナンス、バッテリー管理、大量のデータ管理、遠隔監視体制の維持などにかかる費用。 - 人件費削減効果の最大化
自律化による人件費削減が期待されますが、それに見合うだけのシステム信頼性と安全管理体制を構築するためのコストと、削減効果のバランスが重要です。 - 法規制・認証コスト
新しいレベルの飛行に必要な機体認証や技能証明、運航管理体制の構築にかかるコスト。
「運航計画の策定」の真価
このような課題を克服し、ドローン事業を成功させる上で、ユーザー様が指摘するように、「適法・安全な『運航計画の策定』」が不可欠な成功要件となります。
運航計画は、単に許可取得のための書類ではありません。
それは、ビジネスとしての「収支採算モデル」を成立させるための、コスト効率的かつリスクを最小化する運用戦略そのものだと思います。
高度な運航計画策定能力は、安全性と効率性の両立を実現し、将来のドローンビジネスにおいて、競合他社に対する明確な競争優位性をもたらすでしょう。
まとめ
2年にわたるNEDO実証事業の経験は、DID、河川、ダム、沿岸部、改造機といった多様な条件、そしてレベル2から3、3.5へのステップアップという、複雑なドローン飛行の申請実務とUTM開発への貢献という得難い知見をプロジェクトにもたらしました。
この経験を通じて浮き彫りになったのが、レベル3.5以降の自律飛行を軸とした収支採算モデルの構築という喫緊の課題です。
これは、ドローン産業の持続可能性を左右する重要なテーマであり、適法かつ安全な「運航計画の策定」がその成功の鍵となります。
ドローンが社会インフラとして本格的に機能するためには、技術と法規制、そしてビジネスの視点を統合した取り組みが不可欠です。
行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。 全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。 【免責事項】
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