
ドローン空域調整、誰がNOTAM出す?
【離発着地点】が自衛隊基地の管制圏内で一方高度1000Mとなる空域は管制圏「外」という申請でした。離陸地点と高高度への垂直上昇開始地点との離隔は水平距離でわずか500M。この場合NOTAM発行は基地の役割か航空局側か?基地の方も即答を避けましたが、調整の結果、航空局側が行なったとのことです。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) March 20, 2025
ドローンの飛行が高度化し、その活躍の場が広がるにつれて、空域利用に関するルールも複雑さを増しています。
特に、自衛隊基地の周辺や、管制圏といった特殊な空域での飛行は、非常に綿密な計画と関係機関との調整が不可欠となります。
以前、私自身の情報としてSNSでも触れましたが、自衛隊基地の管制圏内に離発着地点がある一方で、高度1000Mとなる飛行空域は管制圏「外」という、非常に複雑なドローン飛行の申請事例がありました。
しかも、離陸地点と高高度への垂直上昇開始地点が水平距離でわずか500Mしか離れていないという状況です。
このようなケースで、NOTAM(航空情報)の発行は基地と航空局のどちらの役割となるのか、という疑問が生じました。
※このような空域調整は、制度の問題ではなく「その条件で成立するか」の判断が本質です。
全体の判断整理は 目視外飛行の成立条件と判断整理|矢野事務所 をご参照ください。
基地の方も即答を避けるほど判断が難しい問題でしたが、調整の結果、最終的には航空局側が行ったとのことです。
このページで分かること
管制圏内外の境界
まず、「管制圏」とは、空港や基地の周辺に設定され、航空交通管制機関(ATC)が航空機の安全な離着陸を管理する空域です。
ドローンが管制圏内で飛行する場合、その空域を管轄するATCからの承認が必須となります。
今回の事例は、離発着地点が管制圏内にあるにもかかわらず、ドローンが上昇していく高度1000Mの飛行空域は管制圏外という、境界をまたぐ非常に特殊な飛行でした。
さらに、離陸地点と高高度への垂直上昇開始地点の水平距離がわずか500Mという近さも、この状況を複雑にしています。
これは、ドローンが急上昇する際に、一時的にでも管制圏の運用に影響を与えないか、あるいは万が一の際に管制圏内に逸脱しないかといった安全マージンの確保が課題となるためです。
NOTAMは誰の役割?
NOTAM(Notice to Airmen)は、航空機の安全な運航のために、空域や施設に関する一時的・臨時的な変更や危険を航空関係者に周知する重要な情報です。
ドローンの飛行情報も、特に150m以上の上空や空港周辺での飛行の場合、NOTAMとして発行されます。
しかし、今回の事例のように、離発着が管制圏内で、高高度飛行が管制圏外というケースで、NOTAMの発行責任がどこにあるのかは、明確な前例がない場合、判断が難しい問題となります。
「基地の方も即答を避けた」という点からも、その複雑さが伺えます。
最終的に航空局側がNOTAM発行を行ったという結果は、以下の背景が考えられます。
- 航空局の包括的権限
ドローンの飛行許可は、最終的に国土交通大臣(航空局)が行います。NOTAM発行も航空局の広範な航空情報管理の役割の一部と考えられます。 - 広域空域の管理
管制圏外の空域の情報は、基地の管轄を越え、より広域的な航空交通管理を担う航空局の役割となります。 - 基地との連携
しかし、基地の運用に直結する空域情報であるため、航空局は基地との緊密な連携のもとでNOTAM発行を行ったと推測されます。
この調整プロセスは、複数の機関が関わる複雑な空域において、安全確保のために綿密な協議が必要となる現実を示しています。
※形式上は成立しそうでも、実務では止まる案件があります。典型例は 申請不要でも成立しないケース(道路上空) をご参照ください。
複雑な調整の現実
今回の事例は、ドローンの高高度飛行許可申請、特に特殊な空域が絡む場合の調整プロセスの厳しさを浮き彫りにしています。
- 複数機関の関与
基地、航空局、空港事務所、航空交通管理センターなど、複数の関係機関が関与するため、それぞれの管轄や役割を正確に理解し、連携を取ることが非常に重要です。 - 「微細なズレ」の許容なし
空港事務所は、管制機関と申請者との間で形成された合意認識が、安全確保のために完全に一致していることを極めて重視します。飛行高度、経路、日時など、わずかなズレや曖昧さも許容されず、場合によっては何度も補正が出されます。これは、安全確保のための最後の確認であり、その厳格さが空の安全を担保しています。
空域調整の論点は整理できますが、それだけで案件がそのまま成立するわけではありません。
NOTAMの役割分担が分かっても、その飛行がそのまま通るとは限りません。
実務では、「航空局が出すのか、基地が出すのか」が整理できても、別の理由で止まる案件が多くあります。
特に次のような前提で進めている場合は注意が必要です。
空域調整では、役割分担の確認と同時に、飛行経路・安全マージン・補正対応まで含めて成立すると言えるかを先に見抜く必要があります。
まとめ
自衛隊基地の管制圏内外をまたぐドローンの高高度飛行は、非常に複雑な空域調整を伴い、NOTAM発行の責任主体がどこにあるかという疑問が生じるほどの特殊なケースです。
このような状況では、関係機関との綿密な連携と、その間の役割分担の正確な理解、そして何よりも高い安全意識と周到な計画が不可欠です。
管制機関からの逆提案や基地からの嘆願、空港事務所からの度重なる補正は、全て空の安全を担保するための厳格なチェックであり、決して疎かにできません。
こうしたプロセスを乗り越え、高高度飛行を安全かつ適法に実現するためには、綿密な準備と、関係機関との真摯な対話、そして微細なズレも許さない正確性が不可欠です。
◆ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する◆
許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません
ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。
※飛行許可申請「のみ」のご相談にも対応しています