
ドローン練習場開設、法令と現実
このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。
法令調査の案件が終わりました。500坪の土地を「ドローン練習場にしたいが法的問題はないか」というもの。結果、法令上の問題はない一方で近隣住民への騒音問題や墜落対策等「永続的な許容」の課題は残る…とした両論併記のレポートとなりました。全クリアしても「集客」等経営の課題は残りますが…。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) June 4, 2024
ドローンの普及に伴い、安全かつ自由に飛行できる場所のニーズは高まっています。
その中で、「ドローン練習場を開設したい」というご相談も出てきました。
先日、500坪の土地をドローン練習場にしたいという案件で、法令上の問題点がないかの調査依頼を受けました。
この調査の結果は、まさに「両論併記」のレポートとなりました。
結論から言えば、練習場の開設自体に直接的な法令上の問題は少ないものの、その後の「永続的な許容」という点で、運営上の現実的な課題が残るというものです。
法令をクリアしても、事業としての成功や地域との共存には、別の側面からのアプローチが必要となるのです。
このページで分かること
法令面は?
まず、ドローン練習場の開設を直接的に規制する「ドローン練習場法」といった特定の法令は、現在のところ存在しません。
そのため、土地の用途地域(都市計画法など)や、設置する施設の規模(建築基準法など)といった一般的な土地利用に関する法令上の確認が主となります。
ドローンの飛行自体は航空法で規制されますが、これは特定の空域や飛行方法に対するものであり、練習場という施設そのものの設置を直接規制するものではありません。
ただし、練習場が人口集中地区(DID地区)内にある場合や、練習内容が150m以上の高高度飛行、夜間飛行、目視外飛行など「特定飛行」に該当する場合は、練習場を利用する各操縦者が、適切な許可・承認を得て飛行する必要がある点は変わりません。
しかし、これらの法令上の問題がクリアできたとしても、運営上の現実的な課題が多数存在します。
運営の現実課題
法令上の問題がないからといって、すぐにドローン練習場が永続的に運営できるわけではありません。
「永続的な許容」の課題とは、主に以下のような現実的な問題です。
- 騒音問題
ドローンのプロペラ音は、特に複数機が長時間飛行する場合、近隣住民にとって大きな騒音源となる可能性があります。住民からの苦情は、練習場運営の大きな障害となり得ます。対策としては、防音壁の設置、飛行時間の制限、静音性の高いドローンの使用推奨などが考えられます。 - 墜落対策
ドローンは、機体トラブルや操縦ミス、突発的な強風などにより、練習場敷地外に墜落するリスクを常に抱えています。敷地外への墜落は、第三者への危害や、財産への損害、プライバシー侵害など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。高強度の防護ネットの設置、安全エリアの確保、高額な賠償責任保険への加入が必須となります。 - プライバシー・肖像権
練習場内で飛行するドローンが、意図せず近隣住民のプライバシーを侵害したり、無許可で人物を撮影したりするリスクがあります。練習場外へのカメラの向きの制限、飛行高度の厳守、利用者のプライバシー保護意識の徹底が必要です。 - 地域との共存
ドローン練習場の開設は、周辺住民にとって未知の施設であり、不安や懸念を抱かれることも少なくありません。開設前に地域住民への丁寧な説明会を開催し、理解と協力を得ること、苦情窓口を設け、誠実に対応する体制を整えることが、永続的な運営には不可欠です。 - 環境問題
バッテリーの廃棄方法や、万が一の墜落による残骸処理など、環境への配慮も求められます。
「両論併記」の視点
今回の法令調査レポートが「両論併記」となったのは、まさにこのためです。
法律的には開設可能であっても、現実の運営においては、騒音、墜落リスク、プライバシーといった問題が解決されなければ、近隣住民からの苦情や行政指導につながり、最終的には練習場の閉鎖に追い込まれる可能性すらあるからです。
ドローン練習場をビジネスとして成り立たせ、地域に受け入れられながら継続的に運営していくためには、法令遵守という最低限のスタートラインをクリアした上で、周辺環境との調和、徹底した安全管理、地域社会との良好な関係構築といった、多角的な視点と継続的な努力が不可欠であることを示唆しています。
経営の課題
「集客」などの経営上の課題も、練習場運営の大きなハードルとなります。
- 集客と利用者確保
ドローンの操縦経験者だけでなく、初心者層や、企業・団体研修など、幅広い利用者を呼び込むための魅力的なサービスや料金体系が必要です。 - 設備の充実
飛行エリアの広さ、ネットの安全性、休憩スペース、充電設備、スクール併設の有無などが利用者の満足度に直結します。 - インストラクターの質
安全な飛行指導はもちろん、利用者の技能向上をサポートできる質の高いインストラクターの確保も重要です。 - 多角的な運営
ドローンスクール、検定試験会場、イベント開催、機体レンタル、メンテナンスサービスなど、練習場に付随する様々なサービスを展開することで、収益源を多様化し、経営を安定させることも検討すべきです。
まとめ
500坪の土地でのドローン練習場開設は、法令上の問題は少ないかもしれませんが、それはあくまでスタートラインです。
その後の運営は、騒音・墜落対策、プライバシー保護、地域との共存といった「永続的な許容」の課題、そして集客などの経営課題と、多角的に向き合う必要があります。
ドローン練習場を成功させ、地域に愛される施設として持続的に運営していくためには、法規制への深い理解に加え、安全管理の徹底、近隣住民への配慮とコミュニケーション、そして練り上げられた事業計画が不可欠です。
開設を検討される際は、ぜひこれらの多岐にわたる視点から、入念な準備を進めてください。
不明な点があれば、ドローンの法規制に詳しい専門家にご相談いただくことをお勧めします。
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