
ドローン事業の料金戦略と見積もりの奥義
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
【見積もりに】円/hや円/日の料金単価が必要となる場合。算出に用いる総額や所用時間がポイントですがまだ業界の標準を聞いた事はありません。社会受容が進み相場形成される迄は「業務量はふんだんに積算し盤石な単価をまず示してより高いラインで発注者側の受容点を引出したい」。ある方の言です。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) May 25, 2025
このページで分かること
「円/h? 円/日?」ドローン料金単価の謎
ドローン事業を始めたばかりの方や、これから参入を考える方にとって、頭を悩ませるのが「いくらで仕事を受けるか」という料金設定ではないでしょうか。
Xにも投稿したように、「円/h(時間)や円/日(日)」といった料金単価が必要となる場面は多いものの、「業界の標準を聞いた事はありません」というのが多くの事業者の本音でしょう。
現在のドローン業界は、まだ成熟期に至っておらず、サービス内容も多岐にわたるため、明確な「相場」や「標準料金」が存在しません。
このような未成熟な市場で、いかに自社のサービス価値を適正に価格に転嫁し、安定収益を確保していくか。
これこそが、ドローン事業成功の鍵を握る「見積もり単価の奥義」と言えるでしょう。
相場なき時代の「盤石な単価」設定戦略
「社会受容が進み相場形成される迄は『業務量はふんだんに積算し盤石な単価をまず示してより高いラインで発注者側の受容点を引出したい』」。
これは、ある経験豊富な事業者の言葉です。
この言葉には、相場が未形成な市場で優位に立つための、攻めの料金戦略が凝縮されています。
「総額」から逆算する料金設定
時間単価(円/hや円/日)を設定する前に、まずはプロジェクト全体の「総額」を明確に算出することが重要です。
この総額には、単にドローンを飛ばす費用だけでなく、以下の「見えないコスト」や「価値」を全て含める必要があります。
- 人件費
パイロット、補助者、データ解析担当者、営業担当者など、関わる全てのスタッフの人件費(拘束時間、専門性に応じた単価)。 - 機材費
ドローン本体、カメラ、バッテリー、PC、ソフトウェアなどの購入費用と償却費、メンテナンス費用。 - 保険料
万が一の事故に備える対人・対物賠償保険料。 - 申請・法務費用
国土交通省への飛行許可申請費用、弁護士・行政書士への相談費用など。 - 交通費・宿泊費
現地までの移動費、遠方の場合は宿泊費。 - データ処理・編集費用
撮影した映像や画像の編集、測量データの解析、3Dモデリング、報告書作成にかかる時間と労力。 - リスクプレミアム
天候によるスケジュール変更、予期せぬトラブル対応、特殊な環境下での飛行に伴うリスクに対する費用。 - 企業運営費
事務所の賃料、通信費、広告宣伝費など、事業を維持するための固定費。
これらの要素を全て積算し、そこから「このプロジェクトで得たい総利益」を上乗せして、まずは「総額」を導き出します。
そして、その総額を想定される「所要時間(飛行時間だけでなく、準備から報告書作成まで)」で割ることで、より盤石な時間単価を算出できます。
「価値ベースプライシング」で顧客の受容点を引き出す
まだ相場がない中で高い単価を提示するには、単に「これだけかかります」と言うだけでは不十分です。
重要なのは、提供するサービスが発注者にもたらす「具体的な価値」を明確に伝えることです。
これを「価値ベースプライシング」と呼びます。
例えば、
- 「時間とコストの削減」
人力では数日かかる点検がドローンなら半日で完了し、人件費と足場設置費用が大幅に削減できる。 - 「リスクの低減」
高所作業のリスクをなくし、従業員の安全を確保できる。 - 「品質の向上」
高精度なデータで異常を早期発見し、設備の寿命を延ばせる。 - 「意思決定の迅速化」
最新の現場状況をリアルタイムで把握し、プロジェクトの遅延を防ぐ。
これらの価値を具体的に提示することで、発注者は単価の数字だけでなく、「その価格を支払うことで得られるメリット」に目を向けるようになります。
これにより、「より高いライン」で提示された単価でも、発注側の「受容点」を引き出すことが可能になるのです。
「実験感覚」と「客数の積上げ」で市場を育てる
ドローン業界の初期段階では、「利益にこだわらず」「実験感覚で」「ひたすら脇目も振らず『客数の積上げ』に命を燃やす」という戦略が有効です。
顧客獲得フェーズの価格設定
市場が未成熟な時期には、まず多くの顧客に自社のサービスを体験してもらい、実績を積み上げることが最優先です。
そのためには、初期の案件で、多少利益が出なくても、あるいは採算ラインぎりぎりであっても、以下のような「実験感覚」での価格設定も有効です。
- 初回限定割引
新規顧客獲得のフックとして。 - 限定的なトライアル提供
特定の課題を持つ顧客に、無料で短期間のデモフライトやデータ提供を行い、ドローンの有効性を実感してもらう。 - ニッチ市場への特化と実績構築
特定の業界や用途に絞り込み、そこで圧倒的な実績と専門性を築くことで、高単価を維持しやすいポジションを確立する。
これらのアプローチで「客数を積み上げる」ことは、将来の安定したリカーリング(継続)収益に繋がる重要なステップです。
多くの実績は、今後の価格交渉における説得力のある根拠となり、口コミや紹介による新規顧客獲得にも繋がります。
撤退基準と追加投資の規律
「撤退基準超えまでは追加投資一切せず」という考え方も非常に重要です。
未知の領域であるドローンビジネスでは、期待先行で過剰な機材投資や人材採用に走りがちです。
しかし、明確な撤退基準(例:〇ヶ月以内に〇件の継続案件が獲得できない場合、〇万円以上の赤字が続く場合など)を設定することで、リスクを限定し、無駄な投資を避けることができます。
市場の動向を冷静に見極め、投資の判断には規律を持つことが、長期的な事業継続には不可欠です。
まとめ
ドローンビジネスの料金設定は、まだ相場が定まらないため多くの悩みを伴いますが、同時に自社の価値を価格に反映させる大きなチャンスでもあります。
単に時間や日で割るだけでなく、プロジェクト全体の「総額」から逆算し、全てのコストとリスク、そして提供する「価値」を織り込んだ「盤石な単価」を設定することが重要です。
初期段階では、目先の利益にこだわりすぎず、「実験感覚」で多様な顧客にサービスを提供し、「客数を積み上げる」ことに注力しましょう。
そして、そこで得られた実績と顧客からの信頼が、将来的に高単価でのリカーリング収益へと繋がる強固な基盤となります。
ドローン事業者は、料金設定においても戦略的な視点を持つことです。
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