
ドローン飛行停止義務、対象は特定飛行
このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。
航空法は経路下に第三者の立入りやその恐れがあれば、飛行停止と経路変更、安全な場所への着陸義務を定めています。全ての飛行が対象と思いがちですが、これは「特定飛行」にだけ適用されるものです。なので特定飛行以外で例えば昼にDID以外で人モノから30M離れた目視内飛行なら対象外となります。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) July 8, 2024
ドローンを飛行させる際、私たちは常に安全確保の義務を負っています。
特に、飛行中に予期せぬ事態、例えば人や物件が飛行経路下に立ち入るような状況が発生した場合、航空法は操縦者に特定の措置を義務付けています。
しかし、この義務が「全ての飛行」に適用されると誤解されているケースが少なくありません。
航空法が定めるこの義務は、実は「特定飛行」にのみ適用されるものです。
これは、ドローンを安全に運用する上で、非常に重要なポイントです。
この義務の適用範囲を正しく理解し、自身の飛行がどのカテゴリーに該当するのかを常に把握しておくことが、法令遵守の第一歩となります。
このページで分かること
立ち入り時の義務とは
航空法第132条の87では、特定飛行中の無人航空機の下に、人(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者を除く。)の立入り又はそのおそれのあることを確認したときの措置について定めています。
具体的には、操縦者は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
- 直ちに飛行を停止すること。
- 安全な場所へ移動させること。
- その他、航空機や他の無人航空機の航行を妨げるおそれのないものとして国土交通大臣が告示で定める措置を講じること。
この義務は、万が一のドローン落下や接触事故から、第三者を保護するために極めて重要な規定です。
対象は「特定飛行」のみ
ユーザー様がご指摘の通り、この「人の立入り又はそのおそれのあることを確認したときの措置」の義務は、航空法上の「特定飛行」にだけ適用されるものです。
「特定飛行」とは、航空法第132条の85で定められている、国土交通大臣の許可・承認が必要となる飛行方法や空域を指します。
具体的には、以下のような飛行が該当します。
人又は家屋の密集している地域(DID地区)上空での飛行
- 地表または水面から150m以上の高さの空域での飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人または物件から30m未満の距離での飛行
- 危険物輸送
- 物件投下
- 催し場所上空での飛行
- 緊急用務空域での飛行
これらの特定飛行を行う際は、事前の許可・承認を得るだけでなく、飛行中に人などの立ち入りがあった場合に、上記で説明した義務を負うことになります。
「対象外」の具体例
では、どのような飛行がこの義務の「対象外」となるのでしょうか。
私が投稿した「昼にDID以外で人モノから30M離れた目視内飛行」は、この義務の対象外となります。
なぜなら、この飛行は以下の特定飛行の条件に一切該当しないため、そもそも国土交通大臣の許可・承認が不要な飛行だからです。
- DID地区外
- 150m未満の高さ
- 昼間飛行
- 目視内飛行
- 人または物件から30m以上離れている
このように、特定飛行に該当しない飛行であれば、航空法第132条の87の義務は適用されません。
しかし、これは「立ち入りがあった場合に何もしなくてよい」という意味では決してありません。
義務の対象外であっても、操縦者には常に安全確保の責任があり、危険な状況では自主的に飛行を中止するなど、最大限の注意を払うべきであることは言うまでもありません。
義務の背景にある考え方
なぜ、この義務が特定飛行に限定されるのでしょうか。
その背景には、特定飛行が、もともとリスクが高いと判断される飛行形態であるという考え方があります。
特定飛行は、航空法の許可・承認という厳しい審査プロセスを経て、安全確保のための特別な措置(飛行マニュアルの作成、補助者の配置、機体性能の確認など)が求められる飛行です。
この審査と許可プロセスを通じて、安全を確実に確保できる操縦者と体制にのみ、特定飛行が認められるわけです。
その上で、万が一の事態に備え、さらに厳格な「立ち入り時の義務」が課せられることで、第三者の安全を最大限に保護しようとしているのです。
正しい理解と安全運航
「全ての飛行が対象」と思い込んでしまうと、許可が不要な飛行まで過剰に警戒したり、逆に、特定飛行の許可を得たからといって安全義務を軽視したりする誤解が生じる可能性があります。
ドローンを安全に運用するためには、自身の飛行が特定飛行に該当するか否かを常に正確に判断し、特定飛行を行う場合は、この「立ち入り時の義務」を含めた全ての安全対策を確実に遵守することが不可欠です。
また、特定飛行以外であっても、安全確保は操縦者の絶対的な責任であり、危険な状況では迷わず飛行を中止するという倫理観が求められます。
まとめ
ドローン飛行中に人や物件が経路下に立ち入るなどした際の飛行停止・経路変更・安全な場所への着陸義務は、航空法上の「特定飛行」にのみ適用されるものです。
「全ての飛行が対象」という誤解を解消し、この義務の適用範囲を正しく理解することが、法令遵守と安全運航の第一歩です。
特定飛行に該当しない飛行であれば、この義務は適用されませんが、いかなる場合でも安全確保は操縦者の責任です。
法令を正しく理解し、自身の飛行形態を常に把握しながら、すべての飛行において安全第一でドローンを運用していきましょう。
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