
ドローン登録記号未掲示、罰則と防衛策
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
罰金刑があるにもかかわらず様々な義務を失念している方が多くいます。機体の登録記号掲示もその一つです。ある方は飛行が住民によって警察通報されてしまい、取調べを受けるその最中に非掲示が発覚。指摘されて初めて気づいたとのことです。50万円以下の罰金刑。何かあったら根こそぎ調べられます。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) January 11, 2024
このページで分かること
忘れがち?登録記号掲示の重要性
ドローンを安全に、そして合法的に飛行させるためには、航空法に基づいた様々な義務を遵守しなければなりません。
しかし、その中でも特に見落とされがちな義務の一つが、機体への登録記号の掲示です。
Xに投稿したように、「罰金刑があるにもかかわらず失念している方が多くいます」。
ある方は、住民からの通報で警察の取調べを受ける中で登録記号の非掲示が発覚し、初めてその義務に気づいたといいます。
これは決して他人事ではありません。
ドローンが社会に普及するにつれて、飛行に関する監視の目も厳しくなっています。何かトラブルが発生した際、警察は当然、そのドローンが誰のものか、適切に登録されているか、許可を得て飛行しているかなど、根こそぎ調査します。
その際に登録記号が掲示されていなければ、たったそれだけで航空法違反となり、50万円以下の罰金刑という重いペナルティが課される可能性があります。
知らなかったでは済まされない、重大な義務です。
航空法の登録義務と表示ルール
では、この登録記号の掲示義務は、具体的に航空法のどの部分で定められているのでしょうか。
そして、どのように表示すれば良いのでしょうか。
航空法と無人航空機登録要領
ドローンの登録に関する根拠は、航空法第11条の2に定められています。
ここでは、100g以上の無人航空機は国土交通大臣の登録を受けなければ、航空の用に供してはならない、と明記されています。
そして、登録を受けた機体には、登録記号を表示する義務が生じます。
この表示義務の具体的な方法は、国土交通省が定める「無人航空機登録要領」に詳細が規定されています。
単に「何か貼ればいい」というわけではありません。
- 表示箇所
ドローンの機体であって、容易に確認できる場所に表示する必要があります。 - 表示方法
耐久性のある方法(ステッカー貼付、刻印など)で表示し、容易に消えたり剥がれたりしないようにします。 - 文字の大きさ
機体の大きさに応じて、定められた最小文字の高さがあります。例えば、最大離陸重量が25kg未満の機体では、文字の高さが3mm以上とされています。
これらのルールを正しく理解し、適切に表示することが求められます。
リモートID義務との関係
さらに、2022年6月20日からはリモートIDの搭載義務もスタートしています。
これは、ドローンの識別情報を電波で発信するもので、これにより、第三者がドローンの登録情報(登録記号、製造者、所有者など)を確認できるようになります。
登録記号の「物理的な掲示」とリモートIDによる「電子的発信」は、ドローンの識別性を高め安全な運用を確保するための二本柱です。
罰則と「根こそぎ調査」の実態
登録記号の非掲示は、航空法違反であり、その罰則は50万円以下の罰金刑です。
しかし、問題はそれだけにとどまりません。
他の義務違反も芋づる式に発覚
警察に通報され、飛行が中止され、取り調べを受ける中で、登録記号の非掲示が発覚したとします。
このとき、警察の調査は「登録記号の表示だけ」で終わることはありません。
ドローンを飛行させていたという事実がある以上、以下の点についても厳しく調査される可能性が高いです。
- 機体の登録の有無
そもそも機体が登録されているか。未登録であれば1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます(航空法第157条の10第2号)。 - 飛行許可・承認の有無
飛行させていた場所や方法(DID地区、夜間飛行、目視外飛行など)が航空法の許可・承認を必要とする場合、それらを適切に取得していたか。無許可飛行であれば50万円以下の罰金です(航空法第157条の13第1号)。 - 飛行日誌の記載
飛行日誌は適切に記録されているか。 - 操縦者の技能証明
ドローンの種類や飛行方法によっては、技能証明が求められる場合もあります。 - その他、遵守すべき事項
飲酒飛行、危険な飛行、第三者に迷惑をかける飛行など、航空法で禁止されている行為をしていないか。
このように、「何かあったら根こそぎ調べられる」というのは、決して大げさな表現ではありません。
一つの違反がきっかけとなり、他の違反も次々に明るみに出るリスクがあるのです。
義務を失念しないための防衛策
では、このような事態を避けるために、どうすれば良いのでしょうか。
事前の徹底した確認リスト
ドローンを飛行させる前には、必ずチェックリストを作成し、以下の項目を一つずつ確認する習慣をつけましょう。
- 機体登録の完了確認
機体が正しく国土交通省に登録されているか。 - 登録記号の適切かつ確実な掲示
「無人航空機登録要領」に従い、定められた位置・方法・大きさで登録記号が掲示されているか。剥がれかけていないか。 - リモートID機能の確認
リモートID機能が正しく動作しているか。 - 飛行許可・承認の取得
飛行場所や方法に応じた許可・承認を国土交通省から取得しているか。 - 飛行計画のDIPS登録
DIPS(ドローン情報基盤システム)に飛行計画を登録しているか。 - 周辺への周知と許可
土地の所有者や管理者、周辺住民への事前連絡・同意を得ているか。 - 飛行日誌の準備
飛行日誌を携帯し、記録する準備ができているか。
警察署への事前連絡
Xの投稿にもあるように、飛行場所を管轄する警察署や最寄りの交番に、事前に飛行計画を伝えておくことは非常に有効な防衛策です。
- 伝える情報
飛行日時、場所、目的、使用機体、操縦者連絡先、国土交通省の許可書番号、DIPS飛行計画番号など。 - 理想の状況
通報を受けた警察官の第一声が「はい、聞いてますよ」となるように、詳細かつ明確な情報を提供しましょう。可能であれば、許可書やDIPS飛行計画のコピーを見せるなど、書面での情報提供も検討してください。
これにより、警察が通報の内容を迅速に確認し、不必要な出動や飛行中止指示を避けることができます。
常に最新情報をキャッチアップ
航空法や関連規則は、ドローンの技術進化や社会情勢に合わせて頻繁に改正されます。
国土交通省のウェブサイトや専門機関からの情報に常にアンテナを張り、最新のルールを把握しておくことが、義務を失念しないための基本です。
まとめ
ドローンの登録記号の掲示義務は、単なる形式的なものではなく、万が一のトラブル発生時に事業者自身を守るための重要な盾となります。
この義務を怠れば、50万円以下の罰金刑に加えて、未登録飛行や無許可飛行など、他の重大な違反も芋づる式に発覚し、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
日々の飛行前チェックリストの活用、警察署への事前連絡、そして最新情報の継続的な学習を通じて、法的リスクを最小限に抑えることが、ドローン事業を安定的に展開するための不可欠な要素です。
知らなかったでは済まされない時代。プロフェッショナルとして、常に法令遵守の意識を持ち、安全で健全なドローン運用を心がけましょう。
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