ドローン夜間・目視外飛行「補助者」の役割

 

このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。


特に夜間や補助者の目を借りての目視外飛行を計画されている方に、知っておいていただきたい超重要なことがあります。

それは、「補助者」の役割について、です。

「補助者を配置する」ことが安全対策の一つとして求められることが多いですが、この「補助者」とは、ただ現場に誰かいれば良いというわけではありません。。

今回のテーマは、この「補助者」の役割を正しく理解しないと、思わぬところで申請がストップしたり、安全性が確保できなかったりするという件です。

特に、特定の条件下では補助者を「代替」できるというルールがあるのですが、ここを勘違いしているケースが見受けられます。

地上の安全、空域の安全の二つ

夜間飛行や目視外飛行で求められる補助者の役割は、実は大きく分けて二つあります。

一つ目は、地上の安全を確保するための監視です。

具体的には、ドローンを飛行させる範囲に第三者(人や車両など)が立ち入らないように見張ったり、必要に応じて声をかけたり、立ち入り禁止の措置を講じたりすることです。

これが「立入管理措置」に関わる補助者の役割です。

そして二つ目は、空域の安全を確保するための監視です。

これは、特に目視外飛行において、ドローンの飛行ルート上やその周辺に、予期せぬ有人航空機(ヘリコプターなど)や他のドローンなどが接近してこないかを見張り、操縦者に伝える役割です。

この二つの役割、似ているようでいて、その目的と見るべき対象が全く異なります。

ここを混同しないことが、安全な飛行計画を立てる上での最初のステップです。

地上監視の補助者は代替がOK

さて、今回のX投稿でも触れられていたポイントです。

実は、先ほど挙げた役割のうち、「地上の安全を確保するための監視(立入管理措置)」を担う補助者については、特定の条件を満たせば物理的な設備などで「代替」することが認められています。

その根拠となるのが、国の定める「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」です。

具体的には、審査要領4-3-2(3)b)という箇所に、目視外飛行における立入管理措置について記載があり、

「補助者の配置が困難な場合であっても、柵、コーン、ロープ等による区域設定や看板の設置、十分な広さの補助者なし飛行を可能とする第三者の上空とならない飛行の経路の設定等により、当該区域への第三者の立入を確実に管理できる場合はこの限りでない。」

といった内容が示されています。(※表現は要約しています。正確な表現は最新の審査要領をご確認ください。)

つまり、「フェンスや看板、ロープなどをしっかり設置して、人が物理的に立ち入れない、あるいは立ち入る可能性が極めて低い状況を確実に作り出せるなら、その『立入管理』のためだけに補助者を配置しなくても良いですよ」ということなんです。

これは、現場の状況によっては、補助者の配置が難しい場合もあることを考慮した現実的な代替措置と言えます。

「補助者は必須」と思いがちですが、こと地上の立入管理に関しては、物理的な対策で代替が可能な場合がある、というのがここでのポイントです。

注!空域監視の補助者は代替不可

ここが、多くの方が勘違いしやすい、あるいは見落としがちな点です。

先ほどの地上監視の補助者は代替できる可能性があるとお話ししましたが、もう一つの重要な役割である「空域の安全を確保するための監視(有人機等の確認)」を担う補助者は、原則として代替が認められていません。

なぜ代替できないのでしょうか?

それは、フェンスや看板が空を見上げて「あ、ヘリコプターが来たぞ!」と教えてくれるわけではないからです。

空域の監視は、五感を使い、場合によっては双眼鏡なども活用して、常に変化する空の状況を把握し、操縦者に危険を知らせるという、人間によるリアルタイムな判断と対応が不可欠な役割だからです。

特に目視外飛行では、操縦者はドローン自体を目視できていないため、周囲の空域の安全確認を補助者に頼る部分が非常に大きくなります。

もしここで有人機などの接近を見逃してしまえば、重大な空中衝突事故につながりかねません。

したがって、審査要領で代替が認められているのは、あくまで「地上の立入管理」のための補助者のみであり、「空を見守る」補助者の配置は、夜間や目視外といったリスクの高い飛行においては、安全確保のために不可欠な要件となるのです。

「補助者なしでフェンスだけOK」と早合点してしまうと、この空域監視の役割がすっぽり抜け落ちてしまい、飛行計画として安全性が不十分と判断されてしまいます。

マニュアルへの明確な記載が必須

そして、ここ数年、許可承認申請の審査において、この点についてより厳格な確認が入るようになっています。

飛行申請をする際に提出する「無人航空機を飛行させる者の飛行経歴、知識及び能力に関する事項」や「無人航空機の整備に関する事項」などと並んで、飛行の安全を確保するためにどういう手順で業務を行うかをまとめた「無人航空機を飛行させる際の体制に関する事項」、いわゆる「独自マニュアル」が非常に重要になります。

もし独自マニュアルに、夜間や目視外飛行の補助者について「補助者を配置する」とだけ書かれていたり、「立入管理措置はフェンス等で行うため補助者は置かない」とだけ書かれていたりすると、「では、空域の監視は誰が、どうやるのですか?」という確認が厳しく入る可能性が高いです。

地上監視の補助者を代替する場合、独自マニュアルには、

「立入管理については、〇〇(例:フェンス、コーン等)を設置することにより、当該区域への第三者の立入を確実に管理するため、そのための補助者は配置しない。ただし、飛行経路及びその周辺の監視(特に有人機の確認)を行う補助者は別途配置する」

・・・のように、どちらの役割の補助者を代替するのか、そして代替しない方の役割はどのように果たすのかを、曖昧さなく明確に記載する必要があります。

面倒に感じるかもしれませんが、自身の安全対策をしっかり理解し、実行できることを国に示すための、そして何より自身の飛行の安全を確保するための大切なステップなのです。

まとめ:二つの役割

夜間や目視外飛行は、ドローンの活躍の場を広げる魅力的なものですが、同時に安全確保のためにより厳格な対策が求められる飛行でもあります。

「補助者」という言葉を聞いたときに、反射的に「誰か見張ってくれる人」と思うだけでなく、それが「地上の安全のための監視」なのか「空の安全のための監視」なのか、それぞれの目的と代替の可否をしっかり区別して理解することが、安全な飛行計画を立て、スムーズに許可承認を得るための第一歩です。

補助者の役割 その1
地上の安全(立入管理)
→ 十分な物理的措置(フェンス等)で代替OKの場合あり(審査要領4-3-2(3)b))
補助者の役割 その2

空域の安全(有人機等の監視)
→ これは原則として代替できません。

そして、この区別と自身の計画における具体的な安全確保の方法を、独自マニュアルに正確かつ明確に記載することを忘れないでください。

補助者の役割を正しく理解し、一つ一つの安全対策を丁寧に行うことが、安全なドローン飛行、そしてドローン産業の信頼へと繋がります。

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