花火大会の甘くないドローン夜間催し上空申請

 

このページはX(エックス)の投稿を補足解説したブログ記事です。

花火大会でのドローン飛行、実は申請がかなり複雑で、一筋縄ではいかないケースがほとんどです。

Xの投稿のように、花火大会会場から500Mほど離れた場所での飛行申請を担当したことがあります。

会場から離れているからといって楽勝とはいかないのがこの手の申請の「リアル」です。

特に「夜間の催し上空」という条件が加わると、安全性確保のために様々な角度から国土交通省(航空局)から補正指示が飛んできます。

今回は、特に申請の肝となる「立入禁止区画」について、具体的かつ実践的な情報をお伝えしたいと思います。

なぜ花火大会は特別?

まず理解しておきたいのが、花火大会が航空法上の「多数の者の集合する催し」に該当するということです。

これは、特定の場所と日時に不特定多数の人が集まるイベントを指します。(ちなみに、急に人が集まったとか、屋内のイベントはこれに該当しません)

この「催し場所上空」とその周辺でのドローン飛行は、航空法第132条の86に基づく特定飛行にあたり、原則として国土交通大臣の許可・承認が必要になります。

そして、日時や場所を特定した個別申請が必須です。包括申請でOK、というわけにはいかないのです。

なぜこれほど厳しく管理されるのか?

それは、万が一ドローンが制御を失ったり、部品が落下したりした場合、多数の観客に重大な被害を及ぼす可能性が極めて高いからです。

安全確保が何よりも最優先される空域なのです。

難所は「立入禁止区画」ルール

申請の際に具体的にどのような安全対策を示す必要があるかというと、その中心となるのが「立入禁止区画」の設定です。

これは、ドローンの飛行エリアの直下やその周辺に、第三者が立ち入らないように物理的に、あるいは補助者の目視等によって確実に管理するエリアのことです。

イベント上空の立入禁止区画基準

イベント上空の場合、立入禁止区画の範囲は、ドローンの飛行高度に応じて細かく定められています。

これは、過去の事故データなどに基づき、落下物によるリスクを算定して決められた基準だと考えられます。

更に「飛行高度150m以上」は飛行範囲の外周から落下距離以内の範囲(ただし70m未満の場合は70m)と定められています。

申請時には、この基準に従って、どの範囲を立入禁止区画とするかを明示する必要があります。

夜間飛行における安全確保

以前は、夜間飛行において「飛行させる最大高度と等しい距離を、飛行範囲の外周から水平距離として立入禁止区画として確保する」という考え方が示されることがありました。

これは夜間の目視の難しさを考慮した安全基準でしたが、現在の運用においては、必ずしも「高度=半径」での立入禁止区画設定が必須ではなくなっています。

重要なのは、夜間でもドローンの位置や姿勢、周囲の状況を確実に把握でき、安全な飛行を継続できる体制を構築することです。

高照度な灯火の設置、高性能なカメラによる監視、そして何よりも操縦者と補助者による密接な連携と確実な目視(またはそれに準ずる監視体制)といった、総合的な安全対策によってリスクを管理することが求められています。

 夜間の催し上空ではどうなる?

花火大会のような「夜間の催し上空」は、夜間飛行とイベント上空飛行、両方の特性を併せ持ちます。

この場合の安全対策は、夜間飛行として求められる安全対策と、イベント上空飛行として求められる安全対策両方を満たす必要があります。

したがって、立入禁止区画の範囲については、上記の「イベント上空の立入禁止区画基準」が主に適用されることになります。

つまり、飛行高度に応じて30m、40m、60m、70m、あるいは落下距離に応じた範囲を飛行範囲の外周から確保する必要が生じるのです。

今回の以下のケースのように、会場から500M離れていても、飛行高度によっては、イベント上空の基準に基づき、飛行範囲の外周から数十メートル(今回は夜間基準を適用し高度100m未満で外周から100m)の立入禁止区画が必要になります。

そして、夜間飛行としての安全対策(確実な位置・姿勢把握、監視体制など)も併せて求められる、ということです。

民家問題と実践的対応

申請エリアの立入禁止区画内に民家などの第三者の敷地が含まれる場合、単に「立入禁止区画を設定します」というだけでは許可を得ることは難しいです。

飛行高度によっては、会場から離れていても立入禁止区画が広範囲に及び、民家が含まれてしまうことは十分あり得ます。

私の担当ケースでも、外周から100M以内というエリアに民家が含まれています。

このような状況では、以下の点を申請書や添付書類で詳細に説明し、安全対策として実施することを約束する必要があります。

  • 関係者への周知・同意
    立入禁止区画内の住民や関係者に対し、事前にドローン飛行計画(日時、場所、飛行高度、安全対策など)を丁寧に説明し、理解と協力を得ることが重要です。可能であれば、同意書をいただくことも有効な場合があります。
  • 補助者による監視体制
    飛行中は、立入禁止区画内に第三者が立ち入らないよう、補助者が継続的に監視を行います。特に民家周辺など、立ち入りの可能性がある場所には重点的に補助者を配置します。
  • 即時中止の体制
    補助者からの報告や、操縦者自身の目視等により、立入禁止区画内に第三者の立ち入りを確認した場合は、直ちに飛行を中止できる体制を確保します。
  • 具体的な飛行経路
    立入禁止区画内の第三者の上空を避けるような飛行経路を設定し、申請書に明示します。

これらの対策を、どのように、誰が、どのような手順で実施するのかを具体的に、かつ漏れなく申請書類に記載することが、許可を得るための鍵となります。

標準マニュアルを超える対応が必要な場合は、独自マニュアルとして提出することになります。

花火大会という多くの人が注目するイベントでのドローン飛行は、常に社会からの注目と厳しい安全基準が伴います。

申請は骨が折れますが、安全な飛行実績を積み重ねることが仕事の信頼につながります。

特定飛行の申請でご不明な点があれば、専門家である行政書士にぜひご相談ください。

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