
ドローンレベル3.5航空局実録|矢野事務所
ニーズの大きさを感じます。一昨日、【実録】初めての3.5申請手順…という記事をHPにアップしたところ早くも翌日にご相談がありました。自己申請を途中で断念した案件のリベンジをご希望です。飛行目的が空撮でご依頼者が運航事業者ではない中、まず必須資料が用意出来るかどうかの確認からです。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) August 7, 2024
ドローンのレベル3.5飛行は、「申請すれば使える便利な制度」ではありません。
まず問われるのは、その飛行がレベル3.5の制度趣旨に合っているかどうかです。
実際、自己申請を途中で断念された方から、レベル3.5申請のリベンジ相談を受けたことがあります。
しかし、その飛行目的は空撮であり、依頼者も運航事業者ではありませんでした。
この場合、最初に確認すべきなのは、申請書の書き方ではありません。
そもそもレベル3.5として扱うべき飛行なのか、制度趣旨に合うのか、必要資料を用意できるのかという入口判断です。
レベル3.5は目視外飛行の延長線上にありますが、通常の目視外飛行とは確認される水準が異なります。
目視外飛行そのものの成立条件は、先に目視外飛行の成立条件と判断整理で確認しておく必要があります。
このページで分かること
レベル3.5の目的
レベル4もレベル3.5も、「有人地帯」という言葉が出てくるため、混同されやすい制度です。
しかし、両者は同じではありません。
レベル4は、第三者上空での飛行を含みます。
一方、レベル3.5は、有人地帯ではあるものの、飛行経路直下に第三者がいない状態を前提とする飛行です。
つまり、レベル3.5で想定されているのは、人が密集する都市部ではなく、人の少ない中山間地域などです。
この「人の少ない中山間地域」という点には意味があります。
背景にあるのは、物流のラストワンマイル問題です。
※ラストワンマイル問題:消費者が商品を手にするまでの最後の配送区間において、人手不足などにより配送を担う労働力が不足する問題。
ドローン物流やインフラ点検を早く社会実装したい。
そのために、補助者を置かずに遠隔監視で飛行させる制度としてレベル3.5が位置づけられています。
レベル2で可能なら3.5ではない
相談事例で印象的だったのは、航空局側の考え方です。
空撮目的の個人申請について、当局はレベル3.5としての申請を受け付ける方向にはなりませんでした。
理由は明確です。
レベル3.5は、物資輸送やインフラ点検など、遠隔監視による補助者なし飛行が必要となる運航を想定した制度です。
個人の空撮や趣味的な飛行を広く認めるための制度ではありません。
担当者の言葉で印象的だったのは、次の趣旨です。
レベル2で飛行できるものはレベル2で。
これはレベル3.5申請を考えるうえで非常に重要です。
「レベル3.5なら飛ばせそうだから使う」のではなく、レベル3.5でなければ成立しない運航なのかが問われます。
特に、補助者を置かずに目視外飛行を行う場合は、単に人員を減らせるという話ではありません。
補助者なしで成立させるための監視体制や中止判断については、補助者なし目視外飛行の考え方と接続して整理する必要があります。

レベル3.5申請の実際
ここからは、実際にレベル3.5申請へ進む前段階で、航空局とどのようなやりとりが発生したかを整理します。
レベル3.5は、DIPSで通常の許可承認申請を出す感覚とは違います。
まず航空局へ相談し、飛行内容、機体、経路、体制、遠隔監視の方法、運航条件などについて確認を受けます。
この段階で、申請以前に「制度に乗る案件かどうか」が見られます。
航空局への第一コンタクト
最初は、航空局無人航空機安全課へメールで連絡を行いました。
航空局無人航空機安全課 制度改正担当者様
いつもお世話になっております。
●●社の顧問行政書士の矢野と申します。
この度、3.5による巡視飛行のNEDO実証事業を計画しております。
つきましては貴局HP掲載の手順に基づき申請を進めて参りますので、宜しくご対応ください。
運航概要宣言書の送付をお願い致します。
どうぞよろしくお願いいたします。
航空局からの確認
航空局からの返信は、その日のうちにありました。
内容は、レベル3.5飛行の趣旨確認です。
矢野様
お世話になっております。航空局無人航空機安全課 制度改正担当です。
レベル3.5飛行を行う計画があるとのことですが、具体的にどのような飛行内容でしょうか。
下記をご確認のうえ、計画概要の詳細をお知らせください。(機体、飛行経路、体制、補助者の有無、時期等)特に飛行経路図をご提出ください。
レベル3.5飛行を行うにあたっては、設置する地上設備(一定以上の大きさのモニター等)、カメラ及び通信装置等の構成において、カメラからの映像を表示し、進行方向の飛行経路の直下及びその周辺に第三者の立ち入りが無いことを確認できることを事前に確認すること、また、映像伝送不良や通信不良時等、飛行のリスクと対策等の運航条件等を事前に定め、設定した運航条件に基づき飛行させることが必要です。
すでに当制度を活用されている事業者様においては、過疎地での荷物配送や、長大な送電線点検といった遠隔監視による補助者の配置が難しい自律飛行といった運航形態において、運航管理システム等の運航管理体制を構築されたうえで、レベル3.5飛行が行われております。
どうぞよろしくお願い致します。
航空局
この返信からも分かるように、航空局は最初から「どのような飛行なのか」「補助者なしで成立する体制なのか」「遠隔監視で第三者の立入りを確認できるのか」を確認しています。
つまり、レベル3.5では、飛行目的と運航体制が制度趣旨に合っているかが最初の関門になります。
飛行計画概要を送付
航空局からの確認に対し、現時点で説明可能な飛行計画概要を送付しました。
航空局無人航空機安全課 制度改正ご担当様
お世話になっております。早速のご連絡ありがとうございます。
現時点でお答えできる内容をお送り致します。不足等ありましたら再度ご指導ください。どうぞよろしくお願い致します。
東北ドローン 矢野
運航概要宣言書と飛行マニュアル
その後、航空局から運航要件宣言書および飛行マニュアルが送付されました。

矢野様
お世話になっております。航空局無人航空機安全課です。飛行のご詳細についてご連絡いただきありがとうございます。
添付のとおり、運航要件宣言書および飛行マニュアルを送付いたしますので内容ご確認いただき、運航要件宣言書作成の上返送いただければ幸いです。
作成に当たり不明点等ございましたら、本メールにご返信いただくか無人航空機安全課までお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。
無人航空機安全課担当
ここで初めて、レベル3.5として具体的に整理すべき資料が見えてきます。
しかし、ここからが本番です。
DIPSではなく紙申請
資料一式を送付した後、航空局からさらに指示がありました。
矢野様
お世話になっております。
レベル3.5飛行については別添の追加基準への適合の確認が必要となっております。
また、恐れ入りますがDIPSにてレベル3.5のご申請は対応しておりませんので、紙でのご申請をお願い致します。
提出される場合は、御社にて使用される運航者コードアルファベット3桁をご教授ください。
どうぞよろしくお願い致します。
無人航空機安全課
ここは、通常申請に慣れている方ほど注意が必要です。
レベル3.5申請は、DIPSで通常通り申請する流れではありません。
当時のやりとりでは、紙での申請が必要であること、追加基準への適合確認が必要であることが示されました。
つまり、通常の許可承認申請の延長ではなく、制度担当との確認を経て進める特殊な手続きです。
初回申請では全項目確認される
追加基準について、どの資料を提出すべきか確認しました。
無人航空機安全課 ご担当者様
お世話になっております。
念のための確認ですが、ご指示の「別添の追加基準への適合の確認」は添付資料の中の以下の2点の提出ということでしょうか?
① 別添資料1-2
無人航空機の追加基準への適合性
② 別添資料2-3
無人航空機を飛行させる者の追加基準への適合性
添付資料には「飛行経路図」も含まれていますが、今回のご指示は上記①②のみの提出で「飛行経路図」は不要という理解で良いでしょうか。(機体重量は25kg未満です)
宜しくお願い致します。
矢野
これに対して、航空局からすぐに返信がありました。
矢野様
お世話になっております。
恐れ入りますが初回のご申請ですのですべての項目にご記載いただけますでしょうか
どうぞよろしくお願いいたします。
無人航空機安全課
ここも重要です。
初回申請では、部分的な説明や省略で済むとは限りません。
機体、操縦者、経路、立入管理、遠隔監視、教育、通信、落下分散距離など、すべての項目について確認される前提で準備する必要があります。
航空局からの具体的な確認事項
その後も、航空局から確認事項が続きました。
矢野様
お世話になっております。
五月雨となりますが、確認にお時間がかかりそうな点より質問を送らせていただきます。
・初期故障期間にかかわる資料ですが、文書より、製造者が初期故障期間を定めている旨が読み取ることができず、補足説明にて、「「事例」となっているが製造者が「保証資料」として確約」と記載されております。
恐れ入りますが、補足説明の根拠をご教授ください。
・飛行経路図において立入管理区画の幅を数字でご記載をお願い致します。
・無人航空機の追加基準への適合性について 目視外飛行(5)について
当該基準については無人航空機の全方位を確認できる必要があるところ、「若しくは」以下の方法にて基準を満足するようにご検討をお願いします。
・無人航空機の追加基準への適合性について 目視外飛行(6)について無人航空機の落下分散距離がすべて見えていることについて補足説明をお願い致します。
・操縦者の目視外飛行の確認事項(2)について、10時間以上の教育を完了していることを明記お願いします
どうぞよろしくお願いいたします。
航空局
確認はかなり具体的です。
単に「安全に飛ばします」では足りません。
初期故障期間、立入管理区画の幅、全方位確認、落下分散距離、目視外飛行教育時間など、資料上の根拠と記載内容が細かく確認されます。
レベル3.5申請では、制度の理念だけでなく、資料として説明できるかが問われます。
国産機資料で苦労した点
この案件では国産機を使用していたため、必要なデータやメーカー資料の整備が十分ではなく、かなり苦労しました。
特に、製造者資料の文言をどう読むか、保証資料として扱えるのかという点で確認が発生しました。
矢野様
お世話になっております。
以下の点についてですが、申し訳ないところ、その旨を記載したメーカーからのメール、文書そのほかの資料はございますでしょうか(メーカーへ書き直しを依頼することは不可能なのでしょうか)
どうぞよろしくお願いいたします。
→製造者に再三確認したところ「事例」を「保証」と読み替えて欲しい旨の回答を得て提示したものです。
同様の指摘を5月のレベル3飛行申請時にも貴局から頂き、ご理解いただきましたので今回も踏襲した次第です。【東空運航第●●●号】
航空局
このような場面では、単に機体を選ぶだけでは足りません。
その機体について、メーカー資料、保証資料、過去申請での扱い、補足説明の根拠まで説明できる必要があります。
レベル3.5申請では、機体資料の弱さがそのまま申請難度に直結します。
ようやく具体的な飛行計画申請へ
航空局との確認を重ねた結果、ようやく本省側でレベル3.5飛行を行うことについての確認が済み、具体的な飛行計画の申請へ進むことができました。
矢野様
航空局無人航空機安全課 制度改正担当です。
頂戴した運航概要宣言書の確認が済みましたので、航空局管理番号等を追記した資料をお送りいたします。
今回の宣言書の管理番号は【●●●-01】です。
なお、内容に変更が生じた場合は適宜更新のうえ再提出いただき、新たな番号を通知させていただくこととなります。
また、今後の流れですが、添付にてお送りする申請様式(記載、資料添付を大幅に簡略化した内容です)にて飛行場所に応じた申請先官署、本件であれば東京航空局にメールにて申請いただくこととなります。記載例ファイルをご参照の上、申請書類を作成願います。
現在、レベル3.5飛行の申請はメールによる書面申請となるため、こちらの様式で申請書を作成のうえ申請先官署に送付願います。
※別途申請先官署の担当者からの指示がない限り、添付の申請様式以外の追加資料は提出省略が可能です。
※許可承認書は紙媒体での発行となり、申請先官署からの郵送用に封筒をご手配いただくこととなります。あらかじめご了承のうえ、封筒手配に関して申請先官署から案内がありましたら適宜ご対応をお願いいたします。
※cab-emujin-daihyo@mlit.go.jpへご提出ください。
加えて、貴社からの初回の申請となることから、申請書作成時点でご不明な点がございましたら当方でも対応させていただくつもりです。その際には、申請先官署への資料提出前の段階で当方までご連絡いただければと思います。
引き続きよろしくお願い申し上げます。
航空局
ここまで来て、ようやく飛行場所に応じた申請先官署への申請に進みます。
つまり、レベル3.5では、いきなり地方航空局へ通常申請を出すのではなく、その前に本省側で運航概要宣言書や制度適合性の確認を受ける流れがあります。
レベル3.5申請で問われること
今回のやりとりから分かるのは、レベル3.5申請では、次の点が問われるということです。
- その飛行がレベル3.5の制度趣旨に合っているか
- レベル2で対応できる飛行ではないか
- 遠隔監視で第三者の立入りを確認できるか
- 映像伝送不良や通信不良時の対応を定めているか
- 立入管理区画や落下分散距離を説明できるか
- 機体資料やメーカー資料に根拠があるか
- 目視外飛行に必要な教育・確認事項を満たしているか
つまり、レベル3.5は「申請すれば使える制度」ではありません。
制度趣旨、運航体制、遠隔監視、資料根拠、機体適合性を一つずつ説明できて、初めて申請の入口に立てます。
さらに、レベル3.5では個別の書類だけではなく、運航全体をどう管理するかが問われます。
飛行ごとの判断を属人的に済ませるのではなく、体制・記録・中止判断まで含めたドローン運航管理体制として整理しておくことが必要です。
まとめ
ドローンのレベル3.5申請では、最初から「許可申請書を出せばよい」という話にはなりません。
まず、飛行目的が制度趣旨に合っているか、レベル2で対応可能な飛行ではないか、遠隔監視による補助者なし飛行として説明できるかが問われます。
さらに、運航概要宣言書、追加基準、飛行経路図、機体資料、教育実績、立入管理、通信不良時の対応など、初回申請では細かく確認されます。
レベル3.5申請は、制度を知っているだけでは足りません。
航空局とのやりとりを通じて、制度趣旨に合う運航として説明できる状態に整えることが必要です。
地方航空局との具体的なやりとりについては、また別の記事で整理します。
◆ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています
