火災時ドローン運航へ標準マニュアルを再構成|矢野事務所

火災時ドローン運航へ標準マニュアルを再構成|矢野事務所

 
 

火災現場でドローンを使う場合、問題は「飛ばせるか」だけでは終わりません。

通常時の安全管理をそのまま適用するだけでは十分ではなく、火災時の現場条件に合わせて、運航として成立する条件を組み直す必要があります。

矢野事務所では、東京都町田市内で火災が発生した際に、町田市消防団ドローン隊が自治体等の要請を受けて無人航空機を飛行させるためのカスタマイズ飛行マニュアルを作成しました。

このマニュアルは、国土交通省航空局標準マニュアル②をベースにしつつ、火災発生時の消火活動支援に限定して適用するものです。

したがって、標準マニュアルを否定するものではありません。

標準マニュアルの基本構造を維持しながら、火災時の第三者管理、補助者配置、現地評価、風速条件、中止判断を再構成したものです。

標準マニュアルを火災時用へ再構成

航空局標準マニュアルは、通常時の飛行を前提に、安全確保の基本構造が整理されています。

今回の火災時マニュアルでも、その基本構造は維持しつつ、火災現場特有の状況に合わせて条件を加筆修正しました。

火災現場では、飛行場所、第三者の動き、消防活動、煙、夜間対応、離発着場所、補助者の配置などが、通常時よりも変動しやすくなります。

そのため、単に「許可があるか」ではなく、現場で安全な飛行状態を維持できるかを確認する必要があります。

重要なのは、標準マニュアルから外れることではありません。

火災時に守るべき条件を整理し、必要な代替措置や中止条件を明確にすることです。

火災時に必要な運航成立条件

火災時のドローン運航では、現場確認と周辺評価が特に重要になります。

第三者の動き、周辺物件、突風、電波障害、離発着場所、消防活動との関係を確認しながら、飛行条件を調整する必要があります。

今回のマニュアルでも、飛行前に気象、機体の状況、飛行経路について、安全に飛行できる状態であることを確認する構造としました。

また、大規模災害時には、捜索や救助を目的とした多数の航空機や無人航空機が飛行することも想定されます。

そのため、必要に応じて現地災害対策本部等を通じ、日時、飛行場所などの調整を行うことも重要になります。

第三者状態維持の設計

火災現場で最も重要な論点の一つが、第三者状態の維持です。

今回のマニュアルでは、機上カメラ映像及び目視により、飛行ルート下に第三者がいないことを確認する構造としています。

基本的には第三者上空飛行は行いません。

ただし、被災状況確認中に第三者が経路下へ立ち入る可能性はあります。

その場合は、関係者による立入制限の注意を行い、飛行経路から外れてもらうよう促します。

注意喚起による第三者回避が困難な場合は、飛行場所から離脱し、必要に応じてホバリング又は緊急着陸を行う構造です。

これは、単に第三者がいないことを確認するだけではありません。

第三者状態を維持し、維持できない場合にどう止めるかを設計するものです。

この点は、第三者と関係者の整理で止まる理由:矢野事務所でも整理しているとおり、分類ではなく運航継続条件の問題です。

補助者配置と立入管理措置

火災時のドローン運航では、補助者配置だけでなく、立入管理措置を含めた安全管理体制が重要になります。

今回のマニュアルでも、可能な限り補助者を配置し、相互に安全確認を行う体制をとる構造としました。

補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行います。

また、飛行経路全体を見渡せる位置で、無人航空機の飛行状況や周囲の気象状況の変化を監視し、操縦者へ必要な助言を行います。

一方で、現場条件によっては、塀、フェンス、看板、コーン等により立入管理区画を明示し、第三者の立入りを確実に制限することで、補助者配置に代える構造も整理しています。

つまり、補助者を置くかどうかだけではありません。

補助者配置、立入管理区画、第三者管理、操縦者への助言を組み合わせて、現場で機能する安全管理体制を作ることが重要です。

ドローン運航は、操縦者だけで完結するものではありません。

ドローンは操縦でなく運航管理|矢野事務所で整理しているように、現場全体を管理する体制があって初めて成立します。

風速条件と中止判断

今回のマニュアルでは、原則として風速5m/s以上の状態では飛行させない構造としています。

ただし、火災時の業務上必要な場合には、条件を厳守した上で飛行する余地を整理しています。

この場合でも、無人航空機取扱説明書に記載された風速以上の状態では飛行させません。

また、監視員又は補助者を配置し、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況を常に監視します。

天候の急変などにより、安全な飛行が維持されないと予想される場合は、ただちに飛行を中止します。

これは、例外的に自由に飛ばすという意味ではありません。

原則を維持しながら、やむを得ない場合の条件強化と中止判断を明確にするものです。

30m確保困難時の条件設計

火災現場では、可能な限り人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所を選定する必要があります。

また、周辺の第三者の立入りを制限できる範囲で飛行経路を選定することも重要です。

しかし、火災時の業務では、30m以上を確保できる離発着場所の選定が困難な場合もあります。

今回のマニュアルでは、その場合でも無条件に飛行するのではなく、飛行距離及び高度の限界値を設定し、不必要な飛行をさせない構造としています。

さらに、第三者の立入制限、突風や電波障害等を考慮した現地確認、周辺の第三者や物件への影響評価、補助者の増員、事前周知、物件管理者等との調整を行う構造としました。

そして、第三者の立入り等が生じた場合は、速やかに飛行を中止します。

ここにあるのは、30mを確保できないから緩めるという発想ではありません。

30m確保が困難な場面で、どの条件を積み上げれば運航として説明できるかを整理する判断設計です。

夜間飛行と目視外飛行の再整理

火災は夜間に発生することがあります。

そのため、夜間飛行や目視外飛行をどのように扱うかも、火災時マニュアルでは重要になります。

夜間飛行では、機体の向きを視認できる灯火を装備した機体を使用します。

操縦者は、夜間飛行の訓練を修了した者に限ります。

離発着場所では、車のヘッドライトや撮影用照明機材等により、十分な照明を確保する構造としています。

目視外飛行では、飛行前に飛行ルート下に第三者がいないことを確認し、双眼鏡等又は肉眼で目視できる補助者のもとで実施する構造です。

補助者による目視が困難な場合でも、立入管理措置がなされていることを確認した上で飛行する整理としています。

ここでも重要なのは、夜間や目視外を単に許可項目として扱わないことです。

灯火、訓練、照明、補助者、立入管理措置を組み合わせて、現場で説明できる条件を作ることです。

包括申請だけでは足りない火災時運航

火災時のドローン運航では、包括申請があるかどうかだけで判断してはいけません。

包括申請は入口にすぎません。

実際の火災現場で、どの範囲を飛ばすのか、第三者状態をどう維持するのか、夜間や目視外をどう扱うのか、誰が止めるのかまで整理されていなければ、運航としては弱くなります。

特に火災時は、現場条件が直前まで確定しないことがあります。

そのため、許可があることと、現場で飛ばしてよい状態が成立していることは別です。

この点は、包括申請でも成立しない飛行とは|矢野事務所でも触れているとおり、許可の有無だけではなく、現場条件と運航体制の組み合わせで判断する必要があります。

火災時マニュアルの価値

独自マニュアルの価値は、標準マニュアルから外れることではありません。

標準マニュアルをベースにしながら、火災時に必要となる条件を加筆し、現場で説明できる運航構造へ再構成することにあります。

今回のマニュアルでは、第三者管理、補助者配置、立入管理措置、風速条件、30m確保困難時の措置、夜間飛行、目視外飛行、非常時連絡体制を、火災時の後方支援活動に合わせて整理しました。

これは、許可取得のためだけの文書ではありません。

実際の火災現場で、何を確認し、何を維持し、どの状態なら中止するのかを共有するための文書です。

消防団や自治体のドローン活用では、操縦技術だけでは足りません。

運航管理、現地評価、第三者状態維持、中止条件、関係機関との調整まで含めて、初めて運航として成立します。

非常時ほど事後説明に耐える設計

火災時対応であっても、単に「緊急だから飛ばす」のではありません。

どの条件なら飛行し、どの状態なら中止するのかを事前に整理しておく必要があります。

今回のマニュアルでも、標準マニュアルをベースにしつつ、火災時特有の条件を加味して、第三者管理、補助者体制、現地評価、中止条件を再構成しました。

なぜその場所を飛ばしたのか。

なぜその高度だったのか。

なぜ第三者状態を維持できると判断したのか。

なぜ継続し、どの状態なら中止する予定だったのか。

これらを説明できなければ、火災時のドローン運航は、許可があっても実務上は弱いものになります。

非常時ほど、判断を曖昧にしないことが重要です。

ドローン運航は、飛ばす技術ではなく、成立する条件を設計し、維持し、崩れたときに止める判断まで含めて作るものです。

◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆

法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります

ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。

  • 第三者管理は維持できますか?
  • 監視体制は機能しますか?
  • 中止判断は定義されていますか?
  • 発注者・関係者への説明は通りますか?

これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。

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