
ドローン催し上空飛行許可の鍵は経路図と体制
このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。
【ゴルフコース1ホールの中に】立入禁止区画に忠実な三つの高度別経路を描いたら判り難い図に…。ダメ元の涼しい顔で申請すると案の定「高度別に分けて作図を」…と補正が。1ホール当たり高度20・50・100Mそれぞれの経路図を7ホール分21枚作りました。ゴルフ中継黎明期の笑い話になる事を祈ります笑
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) August 6, 2025
ドローンの許可・承認申請の中でも、特に難易度が高いとされるものの一つに「催し場所上空の飛行」があります。多くの観客が集まるイベントでの飛行は、極めて高度な安全体制の構築が求められるからです。
先日、私はまさにその難関案件である、女子プロゴルフトーナメントのテレビ中継におけるドローン飛行の許可申請を担当しました
この案件を通じて、改めて申請の成否を分ける二つの重要な鍵が見えてきました。
それは「審査官を迷わせない飛行経路図」と「緻密な立入管理体制」です。
今回はこの実例を元に、難易度の高い申請を成功させるための勘所を解説します。
(クライアント様との関係から経路図そのものは掲載できませんので、ご容赦ください)
このページで分かること
補正指示の顛末
今回の計画では、7つのホールの上空を、高度20m、50m、100m未満の3パターンで飛行させるというものでした
1枚にまとめた経路図
当初、私は申請書類をコンパクトにしようと考え、1つのホールに対して3つの高度の飛行経路を1枚の図にまとめて記載しました。
立入禁止区画を遵守した正確な経路ではありましたが、複数の線が重なり、お世辞にも分かりやすい図とは言えませんでした。
審査官からの指摘
「ダメ元」で申請したところ、案の定、審査官から補正指示が入りました。
指示は極めてシンプルで、「飛行経路図は、各ホール・高度別に分けて作図し直してください」というものでした。
その結果、7ホール×3高度で、合計21枚もの飛行経路図を追加で作成することになりました。
この経験は、将来笑い話になることを願っています。
教訓:図面は明確に
ここから得られる教訓は「申請図面は、誰が見ても一目で理解できるように作成するべき」ということです。
審査官は日々多くの申請を審査しています。
複雑で分かりにくい図面は、それだけで審査の妨げとなり、補正指示の原因となります。
飛行計画を立てる際は、常に「審査官にとっての分かりやすさ」を意識することが重要です。
許可を掴んだ安全体制
さて、経路図の補正はありましたが、最終的にこの難易度の高い申請が許可された最大の要因は、提出した飛行計画書
高度別の立入禁止区画
催し場所上空の飛行で最も重要なのは、万が一の落下時に備え、第三者が立ち入らないための「立入禁止区画」をどう設定し、管理するかです
私が作成した計画書では、飛行高度に応じて立入禁止区画の範囲を段階的に拡大する、リスクベースの計画を提示しました
これは、高度が高くなるほど落下時の影響範囲が広がるという物理原則に基づいた、極めて合理的な安全策です。
このように、なぜその範囲を設定したのかという論理的な根拠を示すことが、審査官の信頼を得る上で不可欠です。
主催者との連携体制
計画の実現性を担保するため、主催者である日本女子プロゴルフ協会と緊密に連携したことも明記しました
具体的には、主催者側の協力のもとで多数の監視員を動員し、立入禁止区画の要所に配置
観客などの第三者が区画内に侵入しないよう常時監視し、接近者には注意喚起を行う体制です
万が一、第三者が区画に侵入し排除できない場合は、即座に飛行を中止することも絶対条件としました
まとめ
今回の事例から、難易度の高いドローン飛行許可を勝ち取るための要点は、以下の二つに集約されます。
- 資料の明確性
飛行経路図などの申請資料は、誰が見ても瞬時に理解できるよう、シンプルかつ明瞭に作成する。 - 安全体制の具体性
安全計画は精神論ではなく、物理原則と具体的な数値を元に、論理的かつ実現可能なものとして提示する。
ドローンの社会実装が進むにつれて、申請の難易度は今後さらに上がっていくことが予想されます。
このような現場での試行錯誤の経験が、より安全なドローン社会を築く一助となれば幸いです。
行政書士矢野法務事務所は「高難度の申請を専門とする事務所」です。
全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。
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