
花火大会ドローン申請はなぜ難しい|矢野事務所
花火大会の許可がようやく下りました。やはり要求される安全確保策は他の申請とは比較になりません。立入禁止区画や暗視カメラでの補助体制や道路規制の具体的な方法や夜間目視外の独自マニュアルetc。いつも経路図作成に手間どるのですが今回の場所は操縦者の見事なロケハンのお陰でスムーズでした。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) July 20, 2024
天竜川花火大会でのドローン飛行許可申請は、通常の飛行許可申請とは比較にならないほど安全確保策が求められる案件でした。
飛行場所は、花火大会会場から天竜川を隔てて離れた場所でした。
一見すると、会場から距離があり、安全面の心配はそれほど大きくないようにも見えます。
しかし、航空局からは多くの補正指示が出ました。
理由は明確です。
花火大会は「催し」に該当し、さらに夜間・目視外という高リスク条件が重なるからです。
催し上空・イベント上空のドローン飛行については、まずイベント上空はここで止まる|矢野事務所で基本整理を確認しておく必要があります。
このページで分かること
会場から離れていても簡単ではない
今回の飛行場所は、花火大会会場そのものの直上ではありませんでした。
天竜川を隔て、会場から離れた場所での飛行でした。
それでも、花火大会に関連する飛行である以上、審査上は非常に慎重に見られます。
特に、花火大会は多数の人が集まり、周辺道路や河川敷、民家周辺にも人の動きが発生します。
飛行場所が会場から離れていても、第三者が近づく可能性を無視することはできません。
そのため、「会場から離れているから安全」という説明では足りません。
どの範囲を立入禁止区画にするのか。
夜間に誰が監視するのか。
道路を使う住民がいた場合にどう対応するのか。
これらを具体的に整理する必要がありました。
全体の俯瞰図
現場は、天竜川を挟んで花火大会会場から離れた場所にありました。
飛行経路一帯は畑地帯と森林が中心で、第三者の立入り可能性は比較的低い場所でした。
それでも、催しと夜間が重なる以上、航空局の確認は厳しくなります。

会場見取図と飛行範囲の整理
花火大会案件では、会場、飛行場所、立入禁止区画、道路、民家、補助者配置の関係を図面で説明する必要があります。
今回は、操縦者によるロケハンが非常に的確で、飛行経路図の整理は比較的スムーズに進みました。
高難度申請では、現地確認の精度がそのまま申請資料の精度に反映されます。

花火大会飛行を申請中です。会場から500M離れた場所ですが「夜間の催し上空」には様々な補正指示が来ます。その一つである立入禁止区画は夜間基準(高度=半径)かイベント基準(高度別4種)かのどちらか値の大きな方を…とのこと。今回は前者となり操縦者のご理解のもと外周から100M内。民家もあります。
— drone高難度申請 矢野事務所 (@drone_nippon) July 11, 2024
立入禁止区画は大きい方で見る
今回、補正指示で特に重要だったのが、立入禁止区画の考え方です。
夜間基準では、飛行高度を半径とする立入禁止区画が問題になります。
一方、催し上空では、イベント基準として高度別に立入禁止区画を考える場面があります。
航空局からは、このどちらか値の大きい方で整理するよう求められました。
今回は、飛行経路の外周から100m以内を立入禁止区画とする整理になりました。
ここで重要なのは、単に図面上で線を引くことではありません。
その範囲に民家や道路がある場合、住民への周知や道路利用時の連絡体制まで整理する必要があります。
飛行経路図
飛行経路図では、飛行範囲、立入禁止区画、補助者配置、道路、民家との関係を明確にします。
花火大会案件では、図面の曖昧さがそのまま補正につながります。
どこを飛ぶのか。
どこを飛ばないのか。
どこに第三者が入り得るのか。
どこで補助者が確認するのか。
これらを図面で示せることが重要です。

最終的に整理した安全管理策
何度も補正指示を受けた結果、最終的には次のような安全管理策を整理しました。
飛行経路一帯は畑地帯と森林であり第三者の立入りの可能性は非常に低いが、以下の安全管理を行う。
①【立入禁止区画】
飛行経路(高度100m未満)の外周より100m以内を立入禁止区画とする。
②【住民への事前周知】
立入禁止区画内の民家には事前に周知し、飛行中は可能な限り家屋内又は立入禁止区画の外にいることを要請する。
③【視界の確保と補助者配置】
飛行経路下一帯を車のヘッドライトで照射し視界や見通しを確保した上で、飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起する補助者を、飛行経路の中間地点に配置する。
④【道路の立入規制】
立入禁止区内の住民が飛行中に禁止区内の道路を使用する場合は事前に補助者や操縦者等に連絡するよう周知しておく。
⑤【立入禁止区画進入時の対応】
補助者及び操縦者は④の場合及び区画内の道路等に車や人の通行を確認した場合には、注意を呼びかけ立入制限するか直ちに飛行を中止する。
ここで重要なのは、第三者の立入り可能性が低い場所であっても、何もしなくてよいとはならないことです。
立入禁止区画、住民周知、補助者配置、道路利用時の連絡、中止判断まで、具体的に設計して初めて運航として成立します。
夜間目視外の独自マニュアル
今回の飛行では、航空局標準マニュアル02をベースに、独自マニュアルを作成しました。
特に重要だったのは、「夜間に目視外飛行(補助者あり)を行う際の体制」です。
夜間飛行については、ドローン夜間飛行が許可される条件|矢野事務所で基本的な考え方を整理しています。
ただし、花火大会案件では、夜間であることに加えて、催し、目視外、立入禁止区画、道路規制、住民周知が重なります。
そのため、通常の夜間飛行の整理だけでは足りません。

独自マニュアルでは、次のような20項目を整理しました。
3-5 夜間に目視外飛行(補助者あり)を行う際の体制
(1) フェールセーフ機能
(2) モーターの回転を即時停止できる機能
(3) 事前確認
(4) 試験飛行
(5) 異常の有無を把握し、その記録を保管
(6) 危機回避機能
(7) 不時着し、沈没した場合
(8) 補助者の義務
(9) 補助者の業務
(10) 夜間時、離発着場所の処置
(11) 飛行経路下一帯の安全体制
(12) 補助者配置場所の記録保管・管理
(13) 機の位置及び異常の有無を常時モニター
(14) 機体の灯火(LED)確認
(15) 自動操縦システム
(16) 夜間飛行の能力
(17) 夜間飛行の訓練
(18) 補助者配置と役割
(19) 遠隔操作の能力
(20) 夜間・目視外体制への準拠
目視外飛行では、操縦者が機体を直接確認し続けることができません。
そのため、機体位置、異常の有無、補助者との連携、第三者進入時の中止判断を具体化する必要があります。
目視外飛行の成立条件については、目視外飛行の成立条件と判断整理もあわせて確認する必要があります。
花火大会で最も重要なのは中止判断
花火大会のドローン飛行では、許可が下りたことだけで安心してはいけません。
重要なのは、当日の現場で条件を維持できるかです。
立入禁止区画内に住民が入った場合。
道路を車両が通行する場合。
補助者が第三者進入を確認した場合。
機体や映像に異常が出た場合。
これらの場面で、直ちに飛行を中止できる体制が必要です。
花火大会では、「飛ばせるか」よりも「いつ止めるか」が問われます。
特に夜間目視外では、中止基準が曖昧なままでは運航が成立しません。
矢野事務所での実務上の整理
矢野事務所では、花火大会のドローン飛行について、単に「会場から離れているから大丈夫」とは判断しません。
まず、催し上空に該当するのかを確認します。
次に、夜間飛行、目視外飛行、立入禁止区画、住民周知、道路規制、補助者配置を一つずつ整理します。
そのうえで、航空局に説明できる飛行経路図と独自マニュアルに落とし込みます。
花火大会は、通常の夜間飛行や通常の目視外飛行とは違います。
人が集まる催しであり、周辺の動きが読みにくく、当日状況も変化します。
だからこそ、許可申請だけでなく、現場で止められる設計まで必要になります。
まとめ
天竜川花火大会でのドローン飛行許可申請では、会場から離れた場所であっても、多くの補正指示が出ました。
理由は、花火大会が催しであり、さらに夜間・目視外という高リスク条件が重なっていたからです。
最終的には、立入禁止区画、住民周知、補助者配置、道路利用時の連絡、中止判断、夜間目視外の独自マニュアルまで整理することで許可につながりました。
花火大会のドローン飛行では、「会場から離れているから安全」とは言えません。
催し、夜間、目視外、第三者管理を一体で整理し、現場で中止判断できる状態にしておく必要があります。
◆ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています
