
羽田空港周辺ドローン飛行調整と実務|矢野事務所
羽田空港周辺でのドローン飛行は、単に航空法上の許可承認を取得すれば実施できるものではありません。
最初に飛行地点と飛行高度を特定し、その場所に適用される高さ制限を確認します。
さらに、羽田空港(東京国際空港)は、小型無人機等飛行禁止法上の対象空港です。
空港の敷地・区域だけでなく、その周囲おおむね1,000メートルの対象施設周辺地域、いわゆるイエローゾーンへの該当性も別に確認する必要があります。
羽田空港周辺では、東京都側だけでなく、飛行範囲によって神奈川県川崎市側、東京湾の海域、港湾区域などが関係する可能性があります。
航空法上の空港周辺空域、小型無人機等飛行禁止法、空港管理者との調整、警察や海上保安庁への通報、離着陸場所の管理、第三者との分離状態を分けて整理しなければなりません。
問われるのは、許可があるかだけではありません。
なぜその条件で運航が成立すると判断できるのかです。
本記事では、羽田空港周辺でのドローン飛行について、確認の順序、調整先、現地運航上の判断事項を整理します。
このページで分かること
羽田空港周辺の空域と現地条件
羽田空港は、航空機が高頻度で離着陸する空港であり、周辺空域では航空機運航を最優先に考える必要があります。
飛行場所によっては、進入表面、転移表面、水平表面などの制限表面や、航空法上の空港等の周辺の空域が関係します。
また、羽田空港周辺は、空港施設だけでなく、次のような現地条件が重なります。
- 住宅地や事業所が密集する市街地
- 首都高速道路や幹線道路
- 多摩川とその河川敷
- 東京湾の海域
- 港湾施設、岸壁、船舶航行
- 空港関係施設と関係者動線
- 東京都と神奈川県にまたがる警察管轄
したがって、空域図を確認するだけでは足りません。
飛行地点、飛行経路、離着陸場所、第三者の流入経路、航空機接近時の対応まで含め、飛行計画全体として成立するかを判断する必要があります。
最初に確認する飛行地点と高さ制限
羽田空港周辺では、まず飛行地点の緯度経度、飛行範囲、離着陸地点、最高飛行高度を特定します。
そのうえで、その地点に適用される高さ制限を確認します。
実務上は、次の事項を分けて整理します。
- 高さ制限未満で飛行するのか
- 高さ制限を超えて飛行するのか
- 空港等の周辺の空域に該当するのか
- 飛行地点の標高と対地高度をどのように整理するのか
- 飛行経路内で高さ制限が変化しないか
羽田空港からの距離だけで、高さ制限を判断することはできません。
飛行地点が東京都側か神奈川県側かにかかわらず、実際の位置と高度を基準に確認します。
高さ制限の確認方法や考え方は、次の記事で詳しく整理しています。
高さ制限未満でも確認が終わらない理由
高さ制限未満であることは、航空法上の空港周辺空域に関する判断の一つです。
しかし、高さ制限未満だから、羽田空港周辺で必要な確認がすべて終わるわけではありません。
別に確認すべき事項として、次の論点があります。
- 小型無人機等飛行禁止法上の対象区域への該当性
- 人口集中地区や飛行方法に関する航空法上の条件
- 離着陸場所の管理者確認
- 道路、河川、港湾、海岸、施設敷地などの管理関係
- 東京都または神奈川県の警察への通報
- 海域が関係する場合の海上保安庁への通報
- 第三者との分離状態
- 航空機が接近した場合の中止条件
したがって、「高さ制限未満だから終了」という整理にはなりません。
高さ制限を確認したうえで、他の法令、管理者確認、現地条件を別々に整理する必要があります。
羽田空港はイエローゾーンの対象空港
羽田空港は、小型無人機等飛行禁止法上の対象空港です。
同法では、羽田空港の敷地または区域の上空だけでなく、その周囲おおむね1,000メートルの対象施設周辺地域の上空も規制対象になります。
対象空港の敷地または区域は、一般にレッドゾーンと呼ばれます。
その周囲おおむね1,000メートルの対象施設周辺地域は、一般にイエローゾーンと呼ばれます。
そのため、空港敷地の外側で飛行する場合でも、直ちに小型無人機等飛行禁止法の対象外になるわけではありません。
確認対象は、飛行地点だけではありません。
- 飛行経路
- 最大飛行範囲
- 離着陸地点
- 緊急着陸地点
- 東京都側と神奈川県側のどちらに入るか
- 東京湾の海域に入るか
これらを対象区域図と重ね、レッドゾーンまたはイエローゾーンに入るかを確認する必要があります。
施設からの直線距離だけで判断せず、最新の対象区域図と実際の飛行範囲を重ねて確認することが重要です。
基地・駐屯地・重要施設周辺のドローン飛行
イエローゾーン拡大後の手続・通報・運航成立性を整理します
基地周辺では、航空法上の許可だけで運航が成立するとは限りません。
矢野事務所では、必要な手続の整理に加え、現地で運航を成立させ、後から説明できる状態まで支援します。
対象区域か分からない段階でもご相談いただけます
航空法と小型無人機等飛行禁止法の分離
航空法上の空港周辺空域と、小型無人機等飛行禁止法上の対象施設周辺地域は別の制度です。
航空法上の許可承認を取得しても、小型無人機等飛行禁止法上の手続が完了するわけではありません。
反対に、小型無人機等飛行禁止法上の同意や通報を行っても、航空法上の高さ制限や飛行方法の条件を満たしたことにはなりません。
羽田空港周辺では、少なくとも次の事項を分けて確認します。
- 航空法上の空港周辺空域への該当性
- その地点で飛行できる高さ
- 小型無人機等飛行禁止法上のレッドゾーン・イエローゾーンへの該当性
- 空港管理者の同意の要否
- 東京都公安委員会または神奈川県公安委員会への事前通報
- 海域が関係する場合の海上保安庁への通報
- 離着陸場所の使用確認
- 第三者との分離状態
- 航空機運航を優先する中止条件
一つの許可や一つの通報だけで、運航全体が成立するわけではありません。
航空法、小型無人機等飛行禁止法、空港側調整、警察対応、海域管理、土地管理、現地運航管理を分けて整理する必要があります。
対象区域で飛行を検討する場合の手続
羽田空港のレッドゾーンまたはイエローゾーンで飛行を検討する場合は、最初に飛行が法令上認められる例外に該当するかを確認します。
業務目的だから認められるとは限りません。
対象区域内だから、すべての飛行が一律に認められないと決まるわけでもありません。
飛行目的、飛行主体、土地または施設との関係を確認し、例外該当性を整理します。
そのうえで、必要に応じて空港管理者の同意を得ます。
さらに、飛行禁止の例外として飛行する場合でも、原則として飛行開始の48時間前までに、飛行場所を管轄する警察署を経由して、関係する公安委員会へ通報する必要があります。
羽田空港の対象施設周辺地域は、東京都側だけでなく、神奈川県川崎市側に及ぶ可能性があります。
飛行範囲が東京都と神奈川県の双方に関係する場合は、実際の飛行地点と飛行経路に基づき、それぞれの公安委員会と警察署への通報要否を確認する必要があります。
また、対象施設周辺地域に海域を含む場合は、海上保安庁への通報の要否も確認します。
空港管理者の同意、警察や海上保安庁への通報は、航空法上の飛行許可そのものではありません。
航空法上の手続、空港側との調整、離着陸場所の管理者確認も、それぞれ別に整理します。
高さ制限を超える場合の空港側調整
飛行高度が、その地点に適用される高さ制限を超える場合は、航空関係機関との調整が前提になります。
この段階では、次の事項を具体的に説明できる状態にする必要があります。
- 飛行地点と飛行範囲
- 最高飛行高度
- 飛行日時と時間帯
- 飛行目的
- 使用する機体と飛行性能
- 航空機を監視する方法
- 航空機接近時の中止方法
- 空港側からの連絡を受ける責任者
- 飛行中止後の安全確保方法
飛行場所や高度が曖昧なままでは、航空機運航への影響を判断できません。
問われるのは、申請書を提出したかではありません。
飛行条件を具体化し、なぜ航空機運航へ影響を与えないと判断できるのかを説明する必要があります。
空港管理者と空港事務所の役割
羽田空港周辺での飛行では、確認先の役割を混同しないことが重要です。
実務上は、主に次の関係先を整理します。
- 空港管理者・空港運営側
- 空港事務所・航空行政側
- 飛行場所を管轄する警察署
- 海域が関係する場合の海上保安庁
- 離着陸場所の土地・施設管理者
- 河川、道路、港湾、公園などの管理者
空港管理者と空港事務所は、同じ役割を担うものではありません。
空港管理者への同意確認を行ったからといって、航空法上の許可承認が完了するわけではありません。
空港事務所へ相談したからといって、小型無人機等飛行禁止法上の警察通報が不要になるわけでもありません。
どこへ、何を、どの順番で説明するのかを整理し、関係先ごとに必要な情報を提示する必要があります。
東京都側と神奈川県側の確認
羽田空港周辺では、飛行範囲によって東京都側と神奈川県側の双方が関係する可能性があります。
空港の所在地だけを見て、東京都側の手続だけで足りると判断することはできません。
確認するのは、実際の飛行地点、飛行経路、離着陸地点です。
飛行範囲が神奈川県川崎市側へ及ぶ場合は、神奈川県側の警察署や公安委員会への通報要否も確認します。
一方で、県境に近いという理由だけで、常に両都県への通報が必要になるわけではありません。
対象区域図と飛行範囲を重ね、どの公安委員会と警察署が関係するのかを個別に整理する必要があります。
東京湾・多摩川・港湾が関係する場合
羽田空港周辺では、東京湾、多摩川、港湾区域、岸壁、河川敷などが飛行場所や離着陸場所に関係することがあります。
この場合、小型無人機等飛行禁止法と航空法だけを確認しても、運航全体は成立しません。
実務では、次の管理関係を確認します。
- 河川敷や堤防の管理者
- 港湾区域や岸壁の管理者
- 海域を利用する場合の関係機関
- 道路や歩道を利用する場合の道路管理者
- 民有地や事業所敷地の所有者・管理者
- 船舶や港湾作業との関係
海域が対象施設周辺地域に含まれる場合は、海上保安庁への通報要否も確認します。
飛行経路が陸上のみであっても、離着陸場所や緊急着陸地点が河川・港湾・海岸に関係する場合は、別の管理者確認が必要になることがあります。
羽田空港周辺で見落としやすい論点
羽田空港周辺では、航空機運航、都市部の第三者管理、都県境、海域・河川管理が同時に関係する可能性があります。
実務では、次のような点が見落とされやすくなります。
- 高さ制限だけを確認し、イエローゾーンを確認していない
- 空港管理者と空港事務所の役割を混同している
- 東京都側だけを見て、神奈川県側の区域を確認していない
- 海域が関係しているのに海上保安庁への通報を確認していない
- 河川敷や港湾区域を離着陸場所として使う管理者確認がない
- 第三者や車両の流入経路が整理されていない
- 航空機接近時の中止条件が明確でない
焦点は、申請書を提出したかどうかではありません。
複数の制度と管理関係を分けたうえで、現地で安全側へ移行できる運航体制になっているかが問われます。
第三者状態と補助者機能
羽田空港周辺では、航空機との関係だけでなく、地上の第三者との分離状態を維持する必要があります。
都市部、道路、河川敷、港湾、事業所、空港関連施設では、次の第三者や車両が飛行範囲へ接近する可能性があります。
- 歩行者
- 自転車利用者
- 一般車両
- 施設関係者
- 港湾・河川作業関係者
- 船舶利用者
- 周辺事業所の従業員
第三者や車両が接近した場合、誰が発見するのか。
誰が操縦者へ伝えるのか。
どの段階で飛行を中止するのか。
この流れを飛行開始前に決めておく必要があります。
補助者は、配置した人数で評価するものではありません。
監視、連絡、誘導、航空機の接近把握、第三者の流入把握、中止判断の補助という機能が、実際の飛行場所で成立していることが重要です。
中止条件と運航体制
羽田空港周辺での飛行では、飛行開始前に中止条件を明確にする必要があります。
中止条件は、天候や風速だけではありません。
- 航空機の接近
- 空港管理者や航空関係機関からの要請
- 警察または海上保安庁からの確認
- 第三者、車両、船舶の接近
- 無線または映像伝送状態の悪化
- 補助者との連絡不能
- 事前に設定した飛行範囲からの逸脱
- 飛行可能な高さを維持できない状態
- 第三者との分離状態の崩壊
- 空港側へ説明した飛行条件からの変更
誰が中止を判断するのか。
誰が操縦者へ伝えるのか。
誰が空港側、警察、発注者へ説明するのか。
誰が飛行再開の可否を判断するのか。
この責任分担まで決めておく必要があります。
羽田空港周辺で生じやすい誤解
羽田空港周辺では、次のような誤解が生じやすくなります。
- 高さ制限未満なら、空港周辺の確認はすべて不要である
- 空港敷地の外側なら、小型無人機等飛行禁止法に関係しない
- 航空法上の許可承認があれば、空港管理者の同意は不要である
- 警察へ通報すれば、空港側との調整も完了する
- 東京都側の確認だけで足りる
- 陸上を飛行するため、海上保安庁は関係しない
- 補助者を置けば第三者管理は成立する
これらは、制度や関係先の役割を混同した整理です。
羽田空港周辺では、航空法、小型無人機等飛行禁止法、空港側調整、警察通報、海域・港湾・河川管理、現地運航管理を分けて確認する必要があります。
羽田空港周辺で残しておきたい資料
羽田空港周辺の案件では、許可書や通報書だけでなく、判断と調整の経過を後から説明できる資料を残すことが重要です。
実務上は、次の資料を整理します。
- 飛行地点、飛行経路、離着陸地点を示す図面
- 飛行高度と空港周辺空域の関係を示す資料
- 高さ制限の確認記録
- レッドゾーン・イエローゾーンとの位置関係
- 空港管理者や航空関係機関との調整記録
- 東京都・神奈川県の警察への通報記録
- 海上保安庁への通報記録
- 河川・港湾・土地管理者との確認記録
- 第三者との分離状態を維持する方法
- 補助者の配置と役割分担
- 航空機の接近を含む中止条件
- 指揮命令系統と緊急連絡体制
資料を増やすこと自体が目的ではありません。
なぜその飛行地点、高度、体制、中止条件で運航が成立すると判断したのかを説明できる状態にすることが目的です。
羽田空港周辺で飛行を検討する場合
羽田空港周辺でのドローン飛行は、まず飛行地点と高さ制限を確認することから始まります。
ただし、高さ制限未満だから、それだけで運航が成立するわけではありません。
羽田空港は小型無人機等飛行禁止法上の対象空港であり、レッドゾーンと、その周囲おおむね1,000メートルのイエローゾーンへの該当性を別に確認する必要があります。
そのうえで、次の事項を一体として整理します。
- 航空法上の空港周辺空域
- その地点に適用される高さ制限
- 小型無人機等飛行禁止法上の対象区域
- 空港管理者との調整
- 東京都・神奈川県の警察への通報
- 海上保安庁への通報
- 河川・港湾・離着陸場所の管理
- 第三者との分離状態
- 補助者機能
- 中止条件と判断権限
許可があるかだけでは足りません。
なぜこの場所で飛行するのか。
なぜこの高度を選んだのか。
なぜこの体制で第三者との分離状態を維持できるのか。
どの状態が崩れたら中止するのか。
誰が中止と再開を判断するのか。
羽田空港周辺では、これらを後から説明できる判断構造を、飛行前に設計しておくことが重要です。
空港周辺飛行の総合整理
空港周辺のドローン飛行は、空港ごとに対象区域、調整先、警察署管轄、周辺環境が異なります。
羽田空港だけでなく、対象8空港に共通する航空法、小型無人機等飛行禁止法、イエローゾーン、空港管理者との調整、警察への通報の基本構造は、次の記事で整理しています。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています

