レベル3.5申請は初回設計で決まる|矢野事務所
レベル3.5飛行の申請は、通常の包括申請や個別申請とは大きく異なります。
特に初回申請では、単にDIPSへ入力すれば終わるものではありません。
事前相談、運航概要宣言書、運航条件設定、追加基準、管理番号、地方航空局への申請という流れを経て、ようやく許可承認の審査へ進みます。
つまり、レベル3.5申請で問われるのは、申請書を作る力だけではありません。
補助者なし目視外飛行を、どの運航条件で成立させるのかを説明できる設計力です。
このページで分かること
レベル3.5申請は事前相談から始まる
レベル3.5飛行では、最初に国土交通省航空局への事前相談が必要になります。
飛行目的、飛行場所、飛行経路、使用機体、補助者の有無、時期、運航体制などを整理し、計画概要として示します。
ここで重要なのは、「レベル3.5で申請したい」という意思表示だけでは足りないことです。
航空局側が確認したいのは、その飛行が補助者なし目視外飛行として成立する構造になっているかです。
特に飛行経路図、地上設備、カメラ映像、通信装置、第三者立入確認、映像伝送不良時の対応、通信不良時の対応が重要になります。
つまり、事前相談の段階から、すでに運航設計が問われています。
運航概要宣言書は単なる様式ではない
事前相談後には、運航概要宣言書や運航条件設定、指定マニュアルなどの資料作成に進みます。
運航概要宣言書は、どのような事業者が、どのような目的で、どの機体を使い、どの条件でレベル3.5飛行を行うのかを示す資料です。
これは単なる宣誓様式ではありません。
自社の運航がレベル3.5の要件を理解し、その要件に従って管理できることを示す資料です。
ここで整理が浅いと、その後の追加基準や地方航空局申請でも説明が弱くなります。
運航条件設定で問われること
レベル3.5申請では、運航条件設定が非常に重要になります。
ここでは、補助者を置かない目視外飛行を、どの条件で成立させるのかを具体的に示す必要があります。
- 飛行経路直下に第三者がいないことをどう確認するか
- 機上カメラでどの範囲を確認できるか
- 映像伝送不良時にどう判断するか
- 通信不良時にどの条件で中止するか
- 道路等上空通過時の決心点をどう設定するか
- 緊急時の帰還・着陸判断をどう行うか
これらは、申請書の記載項目ではありません。
実際に現場で運航を維持するための条件です。
レベル3.5申請では、「制度上可能か」よりも、その運航条件を現場で維持できるかが問われます。
指定マニュアルを理解して運用する必要がある
レベル3.5飛行では、指定された飛行マニュアルを前提に運航を組み立てます。
マニュアルを受け取るだけでは足りません。
そのマニュアルに書かれている条件を、自社の飛行計画、機体、通信環境、監視方法、緊急時対応に落とし込む必要があります。
マニュアルは、申請に添付する書類ではなく、運航中に守るべき基準です。
したがって、マニュアルに書かれた条件と実際の運航がずれていると、許可を取得しても運航としては成立しません。
この点は、ドローンは操縦でなく運航管理|矢野事務所でも整理している考え方と同じです。
初回申請では追加基準の説明が重くなる
レベル3.5の初回申請では、追加基準への適合状況を具体的に説明する必要があります。
機体の機能・性能、飛行形態、監視方法、通信、異常時対応、運航管理体制などについて、資料として示すことになります。
ここで求められるのは、「対応しています」という一文ではありません。
どの装置で確認するのか。
どの情報を見て判断するのか。
どの状態になったら中止するのか。
誰が運航判断を持つのか。
これらを説明できる資料が必要になります。
つまり、追加基準は申請の負担ではなく、レベル3.5運航を成立させるための判断構造そのものです。
紙申請が大変なのではなく、整理すべき論点が多い
レベル3.5申請では、初回にメールや紙資料でのやり取りが多く発生します。
そのため、「紙申請が大変」という印象を持ちやすくなります。
しかし、本当に大変なのは紙であることではありません。
補助者なし目視外飛行を成立させるために、整理すべき論点が多いことです。
- 飛行経路
- 第三者立入確認
- 機上カメラの確認範囲
- 通信不良時の対応
- 映像伝送不良時の対応
- 道路等上空通過の判断
- 中止条件
- 運航管理体制
これらを曖昧にしたままでは、DIPS化されても申請は簡単になりません。
システムの問題ではなく、運航設計の問題です。
地方航空局申請は最後の工程にすぎない
運航概要宣言書や追加基準の整理が進むと、管理番号が付与され、地方航空局への申請に移ります。
この段階では、通常の許可申請に近い形で進むことがあります。
ただし、地方航空局への申請は、レベル3.5申請の本体ではありません。
本体は、その前段階で行う運航条件の整理です。
管理番号が付与されるまでに、どこまで運航条件を説明できる状態にしているか。
そこが初回申請の分かれ目です。
初回申請で作るべきものは実績になる
レベル3.5申請は、初回が最も重くなります。
なぜなら、初回では、事業者としてレベル3.5運航を理解し、必要な条件を整理できることを示す必要があるからです。
一方で、初回で整理した運航概要、運航条件、追加基準、マニュアル運用、判断構造は、その後の申請や運航の基礎になります。
つまり、初回申請は単なる一回限りの手続きではありません。
今後のレベル3.5運航を支える標準設計になります。
だからこそ、初回申請では、単に許可を取るのではなく、次回以降にも使える運航条件を設計する必要があります。
記録化しなければ次回以降に活かせない
レベル3.5では、申請時の資料だけでなく、運航後の記録も重要です。
どの条件で飛行したのか。
機上カメラによる確認は機能したのか。
通信不良や映像伝送不良はなかったのか。
第三者立入確認はどのように行われたのか。
中止判断に該当する場面はなかったのか。
これらを記録しておかなければ、次回以降の運航改善に活かせません。
運航記録と文書化については、ドローン運航は『文書化』で成立する|矢野事務所でも整理しています。
飛行日誌はレベル3.5運航の説明資料になる
レベル3.5のような高難度運航では、飛行後に説明できる状態を残しておく必要があります。
飛行日誌は、単なる飛行時間の記録ではありません。
運航条件に従って飛行したこと。
異常がなかったこと。
停止条件に該当しなかったこと。
必要な確認を行ったこと。
これらを後から説明するための証拠になります。
飛行日誌については、飛行日誌は『事後説明』の証拠|矢野事務所でも整理しています。
レベル3.5全体像との接続
レベル3.5申請は、手順だけを追っても理解しにくい制度です。
なぜなら、申請手順、操縦者要件、機体要件、運航条件、第三者確認、中止判断が一体で関係するからです。
全体像については、レベル3.5の整理(全体まとめページ)も参照してください。
また、レベル3.5の操縦者要件については、レベル3.5は操縦者要件で決まる|矢野事務所でも整理しています。
まとめ
レベル3.5申請は、通常の許可申請とは異なります。
特に初回申請では、事前相談、運航概要宣言書、運航条件設定、追加基準、管理番号、地方航空局申請という流れを理解する必要があります。
しかし、重要なのは手順そのものではありません。
補助者なし目視外飛行を、どの条件で成立させるのか。
第三者立入をどう確認するのか。
映像伝送不良や通信不良時にどう判断するのか。
どの状態で中止するのか。
これらを説明できる運航条件として設計することです。
レベル3.5申請は、初回の設計でその後の運航が決まります。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
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