
【実務事例】100g未満でも止まる道路上空FPV飛行:矢野事務所
「申請不要」と言われたので、そのまま飛ばせると思っていませんか。
本件は、100g未満のマイクロドローンによるFPV飛行でした。
このような条件であれば、
- 小さい機体だから安全
- 100g未満だから問題ない
- 申請不要だからそのまま飛ばせる
と考えられがちです。
しかし実務では、こうした案件ほど止まります。
道路上空でのドローン飛行は、「申請不要」と判断されるケースでも、そのままでは実施できないことがあります。
本件でも、形式上は申請不要と整理された案件でしたが、現場では成立しない可能性がある状態でした。
本記事では、道路上空におけるドローン飛行について、どのように整理し、どのように成立させたかを実務ベースで解説します。
つまり本件は、「申請不要なのに止まる典型例」であり、許可の有無ではなく「運航成立性」で判断すべき案件でした。
この構造は、より高難度な案件でも同じです。
DID上空や道路横断を含む飛行でも、許可の有無ではなく「成立条件をどう設計するか」が問われます。
このページで分かること
案件概要
- 都市部の道路上空でのドローン飛行
- 100g未満のマイクロドローンによるFPV飛行
- 周辺に教育機関・施設が存在
- 短時間の限定的な飛行計画
一見すると「軽い案件」に見えますが、実際には行政判断が分かれる典型的なケースでした。
問題は、機体の大きさそのものよりも、どこで、どのように、誰に影響し得る状態で飛ばすのかにありました。
この案件は、「制度上は問題ない」と判断した時点で、そのまま現場に入ってしまうと高確率で止まるタイプの案件でした。
どこで止まる可能性があったか
この案件が難しかったのは、道路上空を飛ばすこと自体が直ちに禁止されていたからではありません。
むしろ問題だったのは、制度上は「許可を出す枠組み」がないのに、現場では安全確保が必要になるという点でした。
まず前提として、本件は道路の上空をドローンが通過する計画でしたが、道路上で工事をしたり、道路を占用したり、通行を規制して作業したりする際に必要となる案件ではありませんでした。
そのため、警察との関係では、「道路使用許可」の対象ではなく、警察に申請して許可を取る案件ではないという整理になります。
ここは誤解しやすいところですが、警察が「許可不要」と言うのは、自由に飛ばしてよいという意味ではありません。
警察の立場は、あくまで
- 道路使用許可の対象ではない
- したがって、警察が許可を出す案件ではない
- しかし、車両を強制的に排除したり停止させたりすることはできない
- 安全確保は、現場での補助者配置や運用で対応すべき
というものでした。
一方で、自治体側にも、この飛行について独自に許可を出す制度や判断の枠組みはありませんでした。
つまり自治体としては、自分たちが「許可する」「許可しない」を決める立場ではないとされ、最終的には警察の見解に委ねるという整理になります。
案件が止まりやすくなるのは、こういうところです。
なぜなら、
- 警察は「申請不要」と言う
- 自治体は「自分たちは許可できない」と言う
- しかし、現場での安全確保責任だけは消えない(求められる)
という状態になるからです。
つまり、形式上は申請不要でも、そのまま飛ばせる状態にはなっていないのです。
特に本件で問題になったのは、
- 通行車両を制度的に止められないこと
- 第三者の進入を許可の力で排除できないこと
- FPV飛行である以上、現場の監視体制をどう補うかが必要になること
- 100g未満であっても、人や車両の近くでの飛行がそのまま正当化されるわけではないこと
でした。
この案件の本当の難しさは、許可の有無ではなく、「申請不要」という整理の上で、なお安全に実施できる構造をどう作るかにありました。
行政の判断構造をどう理解したか
本件では、警察と自治体の役割を混同すると、判断を誤ります。
そこでまず、それぞれが何を判断していて、何を判断していないのかを整理しました。
① 警察が判断していたこと
警察が見ていたのは、主に道路使用許可の要否と、道路交通への影響です。
その結果、本件については、
- 道路使用許可の対象ではない
- したがって警察として許可は出さない
- ただし安全確保は必要である
- 補助者配置などで対応すべきである(求める)
という判断になりました。
つまり警察は、「制度上の許可権者ではないが、安全上の懸念は残る」という立場です。
② 自治体が判断していたこと
自治体側は、道路上空のドローン飛行について独自の許可制度を持っていませんでした。
そのため、自治体としては、
- 自分たちが飛行を許可する立場にはない
- 判断は警察の見解に委ねる
- ただし安全に実施されること自体は必要である
という整理になります。
つまり自治体は、制度上の許可主体ではないが、無関係でもないという位置にいました。
③ 実務上こちらが引き受けるしかない部分
このように整理すると、最終的に残るのは、現場の安全設計を誰が引き受けるのかという問題です。
本件では、警察も自治体も「ここまでやれば実施できる」という完成形を与えてくれるわけではありません。
したがってこちらで、
- どの範囲を飛ぶのか
- 車両接近時にどう止めるのか
- 補助者をどこに置くのか
- どの時点で中止するのか
を具体化し、行政の判断を現場運用に翻訳する必要がありました。
この案件では、許可を取ることよりも、行政の判断構造を正確に読み、その空白部分を運用設計で埋めることが重要だったのです。
実際に整理したこと
① 法令の整理
- 航空法上の許可不要の確認
- 小型無人機等飛行禁止法の非該当確認
- 道路使用との関係整理
制度ごとに分けて整理しました。
ここで重要なのは、100g未満であること自体が免罪符ではないと押さえることでした。
機体が小さいことは一要素に過ぎず、道路上空・第三者・通行車両の問題は別に残ります。
② リスクの可視化
- 車両通行リスク
- 第三者侵入リスク
- FPV飛行に伴う監視補完の必要性
- 予期せぬ状況変化
現場で起こり得る事象を洗い出しました。
「軽い機体だから大丈夫」という感覚ではなく、現場で何が起き得るかを先に整理しました。
③ 現地運用の設計
- 補助者の配置
- 車両接近時の一時停止運用
- 飛行範囲の限定
- 即時中止判断の明確化
「止まらない設計」ではなく「止められる設計」を構築しました。
どう成立させたか
- 強制排除を前提としない運用設計
- 安全確保を人の配置で担保
- FPV飛行に伴う監視の弱点を現場体制で補完
- 中止判断を明文化
制度ではなく、現場で説明できる運用構造を作りました。
つまり、「100g未満だから飛ばせる」ではなく、「この条件なら成立すると説明できる」状態に持っていったのです。
なぜ成立したのか
- 行政判断の前提条件を満たしている
- 100g未満・FPVという条件を過信しなかった
- リスクに対する対応が具体化されている
- 現地で再現可能な設計になっている
つまり、「軽い機体だから」ではなく、「条件付き判断を運用に落とし込んだこと」が成立理由です。
よくある誤解
- 申請不要なら自由に飛ばせる
- 警察がOKなら問題ない
- 小規模案件なら安全である
- 100g未満なら自由に飛ばせる
- マイクロドローンなら問題にならない
いずれも、そのままでは実務に耐えません。
特に道路上空のような共有空間では、機体の大きさよりも、第三者・車両・現場運用をどう制御するかが問われます。
なお、このような「申請不要でも止まる」構造は、道路上空に限った話ではありません。
申請不要と整理される案件でも、「成立条件」を詰めなければ現場で止まるケースは多数あります。
これは個別の特殊事例ではなく、今後のドローン運航全体に共通する問題です。
→ 管理者が分からない場所でドローンは飛ばせる?判断の進め方はこちら
より高難度な実例(DID上空×道路横断)
本記事は100g未満・申請不要という条件下での「成立設計」の事例ですが、同じ構造はより高難度な案件でも発生します。
例えば、DID上空・目視外・道路横断を含む飛行では、形式上の許可取得に加えて、第三者管理・補助者配置・経路設計を含めた運航成立性の設計が不可欠になります。
まとめ
100g未満のマイクロドローンによるFPV飛行であっても、道路上空ではそのまま実施できるとは限りません。
道路上空でのドローン飛行は、
- 法令上の整理
- 行政判断の理解
- 現地運用設計
を一体で考える必要があります。
重要なのは、「なぜ実施できるのか」を説明できる状態を作ることです。
許可の有無で判断している限り、この問題は避けられません。
必要なのは、「成立する条件」を設計することです。
この種の案件は「許可」ではなく「成立条件」の整理が必要です
道路上空のように、制度上は申請不要でも、現場では
・第三者管理
・補助者配置
・中止判断
・関係者との調整
を詰めなければ成立しない案件があります。
当事務所では、「飛ばせるか」ではなく「現場で止まらず、事後に説明できるか」という観点で、案件ごとの整理・検討を行っています。