
国交省が譲れない三本柱
ドローンの飛行は、許可が取れれば終わりではありません。
実務では、許可があっても現場で止まることがあります。
そのときに問われるのが、国土交通省が重視している三本柱です。
このページで分かること
許可承認の判断基準は3条件
国交省は飛行許可・承認を出すにあたって、安全基準に適合することを条件としています。
ただし、その中でも特に重要なのが、次の三つの観点です。
- 無人航空機の機能及び性能
- 無人航空機を飛行させる者の飛行経験等
- 安全を確保するために必要な体制等
「許可・承認の審査要領」の項番4「許可等に係る基本的な基準」には、次のように書かれています。
受けようとする許可等の事項にかかわらず、次に掲げる基本的な基準に適合すること。
ただし、無人航空機の機能及び性能、無人航空機を飛行させる者の飛行経験等、安全を確保するために必要な体制等とあわせて総合的に判断し、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合は、この限りでない。
ここで重要なのは、この三本柱は単なる「申請のための条件」ではないということです。
実務では、この三つが揃ってはじめて、その運用が現場で成立するかどうかが判断されます。
つまり、許可があることと、現場で止まらずに運用できることは別問題です。
機体の機能及び性能
まず一つ目は、機体そのものの機能と性能です。
これは単に「飛ぶかどうか」ではありません。第三者から見て安全が確保されていると説明できるか、異常時に操縦者が必要な情報を把握できるか、という実務上の成立性に直結する論点です。
鋭利な突起物のない構造
機体の性能・機能については比較的わかりやすく、まず鋭利な突起物のない構造であることが求められます。
不要な突起や危険な構造を備えていないことは、基本中の基本です。
位置と向きが分かる灯火・表示
次に、ドローンの位置と向きが把握できる灯火・表示等を有していることが求められます。
具体的には、機体の前後や向きを把握するためのライトなどです。

多くの機体にはLEDライトが搭載されていますが、たとえば前方が赤、後方が青緑など、夜間でも機体の向きが分かることが条件とされています。
これは形式要件ではありません。夜間や距離のある位置関係でも機体の状態を把握できることは、安全確保の前提だからです。
燃料またはバッテリー状態を確認できること
さらに、操縦者が燃料またはバッテリーの状態を確認できることも重要です。
DJIの機体であれば、手元でバッテリー残量などが表示される構造になっています。

ただし、航空局の標準機体として扱われない機体や、個別に説明が必要な機体については、このあたりをしっかり説明できなければ許可承認は下りにくくなります。
それだけ、当局にとって譲れない機能です。
そして実務上も、こうした情報が確認できない機体は、現場で安全を説明できない運用になりやすいという点に注意が必要です。
操縦者の飛行技量
二つ目は、操縦者の飛行経験・知識・技能です。
ここも誤解されがちですが、単なる申請上の数字合わせではありません。
想定外の状況が起きたときに、操縦者が安全に対応できるかどうかを見る観点です。
10時間以上の飛行経歴
まず、10時間以上の飛行経歴を、ドローンの種類別に有することが要件とされています。

DIPS2.0より
ここで誤解しやすいのが、「種類別」を“機種別”と勘違いしてしまうことです。
たとえば、ファントムならファントムだけで10時間、マビックならマビックだけで10時間、という意味ではありません。
ここでいう「種類」とは、航空法上の区分です。たとえば回転翼航空機、滑空機、飛行船などの区分を指します。
したがって、同じ種類に属する回転翼航空機であれば、異なる機体でも合算してカウントできます。
目視外飛行・夜間飛行の経験
加えて、目視外飛行や夜間飛行を行う場合には、それぞれの経験が必要です。
現時点では具体的な時間数が細かく定められているわけではありませんが、夜間飛行・目視外飛行の経験自体は求められています。
実際に安全に飛行できる技術があることが前提です。
なお、細かな実務上の話として、DIPS上は0.5時間のような入力ができないため、1時間未満であっても1時間として入力する運用がされています。
物件投下
物件投下についても、許可承認のためには経験が必要です。
具体的には5回の経験が求められます。
散布の講習などを受けていれば超えることが多く、それほど高いハードルではありません。
練習の飛行許可が不要な環境
夜間飛行・目視外飛行・物件投下は、そもそも練習飛行そのものに事前の許可が必要となる場合があります。
「許可をもらうための練習に、許可が必要なのか」と思われるかもしれませんが、基本的には許可が不要な場所や環境で経験を積むことが前提になります。
その代表が屋内です。

実際には、こうした経験は屋内で積んでから申請に進むケースが多くなっています。
稀に、屋外で風の影響を受けながら実践的な練習をしたいという方もいます。その場合は、練習飛行のための許可承認を取得する方法もあります。
ただし、許可申請を重ねることになり、一般的な進め方とは言えません。
このため、実務ではやはり屋内練習が中心です。
整理すると、ドローンで10時間以上の飛行経歴が必要であり、夜間・目視外についてはそれぞれDIPS上1時間以上の経験として記載し、物件投下は5回以上の経験が必要です。
さらに、航空法の関係法令や安全飛行に関する知識が備わっていることも前提になります。
ここも単なる申請条件ではありません。経験や知識が不足している状態では、許可があっても現場で適切な判断ができず、結果として止まる運用になりやすいのです。
安全確保の体制
三つ目は、安全確保の体制です。
これについては、申請書の記載内容や飛行マニュアルの安全対策の内容を中心に審査されます。
ところが実務では、この部分を十分に理解しないまま申請してしまっているケースが少なくありません。
たとえば、自ら提出した飛行マニュアルには禁止事項として記載しているのに、実際の飛行ではその禁止行為を行ってしまっている、ということがあります。
これは完全な虚偽申請・虚偽運用の問題になり得ます。
システム上も、虚偽申請は当然ながらNGです。

国交省は、申請システムに入力された内容が正しいことを前提として受け付けます。
いわば性善説のもとで処理されているわけです。
建設業許可などでは、注文書や契約書、実務経験を示す資料など、多くの裏付け資料が求められます。
しかしドローンの飛行許可承認では、現時点ではそこまでの証拠提出が求められていない場面もあります。
だからこそ、申請書や飛行マニュアルに書いた内容を、自分で理解していることが重要です。
安全確保の体制は、申請を通すための文章ではありません。
第三者管理をどうするのか、誰がどの場面で中止判断をするのか、異常時にどう対応するのか、関係者にどう説明するのか。
そうした運用設計が抜けたままでは、許可があっても現場で止まる、あるいは事故時に説明不能となるリスクがあります。
行政書士に依頼した場合には、必要事項をヒアリングし、承認後の運用との整合も含めて整理できます。その結果、申請者自身が虚偽申請のリスクを負う可能性を下げることができます。
三本柱は「許可のため」ではなく「止まらないため」の条件です
以上の三つの観点から、国交省は飛行許可申請を総合的に判断しています。
ただ、ここで重要なのは、これらを「審査のための知識」として終わらせないことです。
申請内容や飛行マニュアルを理解しないままオンライン申請し、そのまま許可承認を取得してしまう方は少なくありません。
無許可飛行はもちろん論外ですが、承認を取得していても違反や事故を起こしている事例は現実にあります。
つまり、許可取得と安全運用はイコールではないということです。
三本柱を満たしていない運用は、現場で止まる可能性があります
許可申請だけを前提に整理すると、次のような実務上の論点が抜け落ちることがあります。
- 第三者管理が実際に成立しているか
- 逸脱時や異常時の中止判断が設計されているか
- 関係者に対して、なぜその運用で安全と言えるのかを説明できるか
当事務所では、「飛ばせるか」ではなく「現場で止まらず、事後に説明できるか」という観点で、案件ごとの整理・検討を行っています。
事故は報告件数だけでは見えません
国交省には毎年100件以上の事故報告があります。
国交省ホームページの事故統計や記録を見ると、許可承認を取得していても事故を起こしている事例が一定数あります。
無人航空機に係る事故等報告一覧(令和4年12月5日以降に報告のあったもの)
さらに言えば、報告されていない軽微な事故やヒヤリ・ハットは、この数の何倍もあると考えるのが自然です。
許可を取ったから終わりではなく、その後の運用をどう成立させるかまで見ておく必要があります。
四十七都道府県別ドローン規制と飛行許可申請手続き