
イエローゾーン拡大後に見えた基地案件の実務|矢野事務所
小型無人機等飛行禁止法のイエローゾーンがおよそ1kmへ拡大されてから、矢野事務所では初めて基地周辺案件の運航管理を支援しました。
今回の案件で見えたのは、単に規制対象となる範囲が広がったという事実だけではありません。
実際の運航では、誰へ通報し、何を共有し、当日までどの状態を維持するのかという判断事項が増えています。
イエローゾーンに入っているから直ちに飛行できないわけではありません。
航空法上の許可があるから、そのまま運航として成立するわけでもありません。
問われるのは、基地周辺という環境を踏まえた確認、通報、現地管理、中止判断までを一つの運航として設計できているかです。
このページで分かること
変わったのは飛行方法ではなく確認構造
今回の飛行場所は、航空自衛隊府中基地に係るイエローゾーン内に位置していました。
飛行高度は通常対地25m程度であり、最大でも50mです。
飛行範囲も、撮影対象となる敷地内に限定されていました。
使用する機体や飛行方法だけを見れば、特別に高高度で飛行する案件ではありません。
しかし、飛行場所が府中基地周辺地域に入るため、小型無人機等飛行禁止法に基づく通報が必要となりました。
ここで重要なのは、飛行方法が難しくなったことではありません。
運航開始までに確認しなければならない相手と、説明しなければならない事項が増えたことです。
包括許可があっても基地への通報は別に考える
今回の案件では、人口集中地区での飛行等に対応する航空法上の包括許可・承認が取得されていました。
しかし、包括許可があることと、基地周辺での運航が成立することは同じではありません。
航空法上の許可・承認は、航空法に基づく飛行条件を整理するものです。
一方で、重要施設周辺地域における通報は、小型無人機等飛行禁止法に基づく別の手続です。
つまり、包括許可があるから基地への通報が不要になるわけではありません。
基地への通報を済ませたから、第三者管理や土地管理者との調整が不要になるわけでもありません。
制度ごとに確認事項を切り分け、それらを一つの運航計画へ統合する必要があります。
基地への通報は提出して終わりではない
今回の案件では、府中基地司令あての通報書を提出し、受理されたことまで確認しました。
さらに、基地側から飛行当日に電話連絡を行うよう求められました。
書類を提出して受理されたから、あとは予定どおり飛ばせばよいという構造ではありません。
飛行当日の実施状況を基地側と共有できる状態まで維持する必要がありました。
電話連絡だけを見れば、小さな対応に見えるかもしれません。
しかし、この連絡には、予定していた飛行を実際に行うこと、飛行時刻や運航状況を共有すること、基地側との認識を一致させることという意味があります。
形式的な通報書の提出ではなく、当日の運航までつながる連絡体制が求められたということです。
基地・駐屯地・重要施設周辺のドローン飛行
イエローゾーン拡大後の手続・通報・運航成立性を整理します
基地周辺では、航空法上の許可だけで運航が成立するとは限りません。
矢野事務所では、必要な手続の整理に加え、現地で運航を成立させ、後から説明できる状態まで支援します。
対象区域か分からない段階でもご相談いただけます
警察と基地は同じ通報先ではない
基地周辺での通報を考える際には、基地へ連絡すればすべて終わるという理解にも要注意です。
今回の案件では、府中基地への通報と併せて飛行範囲の管轄である府中警察署への通報を行いました。
基地側の受理確認と、警察側で必要となる手続は、それぞれ別の必須事項として定められています。
一方の機関が了承したことを理由に、もう一方への通報が不要になることはありません。
誰に、どの根拠で、いつまでに、何を提出するのかを分けて手続きする必要があります。
イエローゾーン拡大後は、これまで基地周辺案件を扱ったことがない事業者にも、この手続きが必要となる可能性が出て来たということです。
現地で問われる第三者状態の維持
基地や警察への通報が完了していても、現地で第三者との分離状態が維持できなければ、運航は成立しません。
今回の飛行場所は住宅地に位置し、周囲には通行人や一般来訪者が存在することを前提にする必要がありました。
そのため、飛行範囲を対象敷地内に限定し、補助者が第三者の接近を常時監視する体制を設けました。
第三者が飛行経路下へ進入した場合だけでなく、進入するおそれが生じた段階で飛行を中止する設計です。
重要なのは、飛行開始時に第三者がいないことだけではありません。
飛行中を通じて、第三者が飛行範囲へ混入しない状態を維持できるかです。
FPV飛行では補助者の機能が変わる
今回の案件では、通常の撮影機体に加え、FPV飛行を行う機体の使用も予定されていました。
FPV飛行では、操縦者がゴーグル等を使用するため、周囲を直接確認する能力が制限されます。
この場合、補助者は単に現場に立っているだけでは足りません。
機体の外部監視、第三者の接近監視、操縦者への即時通報を継続して行う必要があります。
さらに、飛行を継続できる状態かどうかについて、操縦者の判断を支援する機能も求められます。
補助者を一名配置したという人数の説明ではなく、必要な監視機能が維持されているかが焦点です。
基地周辺環境を中止条件へ接続する
基地周辺案件では、基地や警察への通報を済ませるだけでなく、基地の運用へ影響を与える可能性を中止条件へ接続する必要があります。
今回の運航計画では、基地の運用に影響を与えるおそれがあると判断した場合を中止条件の一つとしました。
これは、実際に基地から中止命令が出るまで飛行を続けるという意味ではありません。
周辺の航空状況、基地側からの連絡、現地で確認された変化などから、運航継続の説明が難しくなった段階で停止側へ移るための条件です。
誰が止めるのか。
何を確認したら止めるのか。
基地側から連絡があった場合に誰が対応するのか。
これらが決まっていなければ、通報書が受理されていても、現場で判断できる状態にはなりません。
中止条件は異常発生後の対応ではない
今回の案件では、第三者の接近、補助者による監視不能、基地運用への影響、GNSS異常、通信異常、気象悪化、機体異常などを中止条件として整理しました。
中止条件は、問題が発生してから考えるためのものではありません。
飛行を開始する前に、どの状態が崩れたら運航を継続しないのかを決めておくためのものです。
第三者との分離状態が崩れた。
補助者が監視を続けられなくなった。
基地側との情報共有が維持できなくなった。
通信や測位の状態が不安定になった。
このような変化を、操縦者の感覚だけに任せず、停止判断へ接続する必要があります。
イエローゾーン拡大後の本当の変化
イエローゾーンの拡大によって、ドローンの操縦方法が変わったわけではありません。
飛行性能が変わったわけでもありません。
変わったのは、基地周辺案件として整理しなければならない飛行場所が広がったことです。
従来は基地から距離があるとして、小型無人機等飛行禁止法との関係を強く意識していなかった場所でも、現在地と区域との関係を確認する必要が生じます。
対象地域に入っている場合には、基地や警察への通報、当日連絡、現地管理、中止条件を一つの運航として設計しなければなりません。
規制区域が広がったという理解だけでは、実際の案件を動かすことはできません。
誰への確認が追加されるのか。
どの段階まで確認すれば飛行準備が整ったと言えるのか。
現地で何が崩れたら中止するのか。
後から何を説明できなければならないのか。
ここまで整理して、初めて制度改正を実務へ落とし込んだことになります。
許可取得ではなく運航成立性を評価する
今回の案件は、航空法上の許可・承認だけを根拠として実施するものではありませんでした。
航空局の許可・承認。
基地への通報と受理確認。
警察への通報。
土地管理者の同意。
飛行範囲の限定。
第三者との分離状態の維持。
補助者機能の確保。
当日の基地への連絡。
中止条件と緊急連絡体制。
これらを総合して、運航として成立するかを評価しています。
一つの許可があるから成立するのではありません。
複数の条件が飛行中まで維持され、その状態が崩れた場合に止められるから、運航成立性を説明できます。
基地案件で必要になる判断設計
イエローゾーン内に入っているかを調べるだけでは、基地案件の判断は終わりません。
区域に入っている場合には、通報先、提出時期、受理確認、当日連絡の有無を確認します。
現地では、土地管理者の同意、飛行範囲、第三者との分離、補助者の機能を整理します。
さらに、それらの状態が崩れた場合に誰が止めるのかを決めます。
重要なのは、制度上の手続を並べることではありません。
それぞれの手続や措置が、なぜ運航成立の条件になるのかを説明できる状態にすることです。
今回の案件は、イエローゾーン拡大後の基地周辺運航が、単なる通報手続ではなく、運航全体の判断設計を必要とすることを示す実例となりました。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています
