
現行300mでも止まる現場の共通点:矢野事務所
イエローゾーンが約1kmに拡大される方向が示されたことで、実務担当者の関心はどうしても「これからどう変わるか」に向きがちです。
しかし、ここで見落としてはいけないことがあります。
現行のおおむね300mであっても、すでに実務では止まる案件がある
ということです。
つまり、これからの1km時代を考える前に、まず
「なぜ現行300mでも成立しない案件があるのか」
を押さえておく必要があります。
このページで分かること
問題は距離そのものではない
小型無人機等飛行禁止法のイエローゾーンは、対象施設の周囲おおむね300mの上空での飛行を原則として禁止し、例外的な飛行だけを認める仕組みです。
ここで誤解が起きやすいのは、
「300mならまだ軽い」
という感覚です。
しかし実務では、300mか1kmかという数字だけで案件は決まりません。
問題になるのは、
その現場で、「本来は禁止されているイエローゾーン内の飛行を成立させるために整理した条件」を本当に維持できるかどうか
です。
現行300mでも止まる典型場面
現行300mでも止まる案件は、抽象論ではなく、かなり具体的な場面で発生します。
施設管理者の同意は取れても、現場条件が閉じていない
対象施設管理者の同意が得られれば、それで前に進めると思われがちです。
しかし実際には、
- 飛行区画の外から第三者が入り得る
- 警戒線や立入管理が一時的にしか機能しない
- 搬入・搬出動線と飛行動線が交差している
といった現場では、同意があっても成立しません。
なぜなら、例外飛行として組んだ条件が、飛行中に維持できないからです。
警察通報や施設側調整は済んでいても、現地の運用変更で前提が崩れる
これも多いパターンです。
例えば、
- 当日になって施設側の運用が変わる
- 予定していなかった出入口が開く
- 関係者の動きが増える
といった変化です。
書類上は成立していても、
その現場で予定していた管理状態が維持できないなら、実務上は止めるしかありません。
近接飛行が必要な案件で、外に逃がすと業務目的が消える
現行300mでも、対象施設近傍での点検や撮影、確認業務では、外に逃がすと仕事にならないことがあります。
例えば、
- 施設外周の近接確認
- 対象設備を含む状況撮影
- 近接での異常箇所確認
といった業務です。
この場合、
形式的には外にずらせても、業務目的が消えれば案件は成立しません。
つまり、現行300mでもすでに「距離で逃げればよい」とは言えない場面があります。
異常時設定が現場条件と噛み合っていない
机上では、異常時に自動着陸や停止で整理している案件でも、現場ではその設定がそのまま安全とは限りません。
例えば、
- 自動着陸させる場所が実質的に確保されていない
- 上昇や移行動作が屋外側のリスクを呼び込む
- 異常時の停止措置が現場の人流と衝突する
といった場合です。
このような案件では、
異常時の安全構造が机上では成立していても、現場では成立していない
ということになります。
共通しているのは「条件の維持」に失敗していること
ここまでの場面は、一見すると別々の問題に見えます。
しかし共通点は一つです。
開始時点では条件を満たしていても、その条件を維持できない
ということです。
つまり、止まる案件の本質は、
「許可がない」
ではなく、
「成立条件が運航中に崩れる」
ところにあります。
だから現行300mでも「成立するか」を見なければならない
ここで重要なのは、今回の話が1km拡大後の未来の話ではないということです。
現行300mの制度下でも、すでに
- 条件を維持できない案件
- 外に逃がせば目的が消える案件
- 調整済みでも現場で崩れる案件
は存在しています。
だから実務では、
「飛ばせるか」ではなく「その運航が最後まで成立するか」
を先に見なければなりません。
まとめ
現行300mのイエローゾーンでも止まる案件はあります。
その理由は、距離が短いから軽い、という話ではありません。
本当に問題になるのは、
本来は禁止されているイエローゾーン内の飛行を成立させるために整理した条件を、現場で維持できるかどうか
です。
したがって、現行制度の段階から、
許可の有無だけではなく、成立条件の維持可能性まで含めて案件を選別する必要があります。
◆ ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する ◆
