ドローン登録だけでは飛ばせない!安全への壁:矢野事務所

ドローン登録だけでは飛ばせない!安全への壁

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。


ドローンの普及が進む中で、多くの方がドローンを手に取るようになりました。

しかし、ドローンの運用には「機体登録」と「飛行許可」という二つの重要な手続きが関わっており、この区別について誤解されているケースが少なくありません。

特に、「機体登録さえ済ませれば、どこでも自由に飛ばせる」という誤った認識は、重大な事故や法令違反につながる危険性をはらんでいます。

先日、私自身の経験としてXでも触れましたが、「機体登録だけで飛ばせる」と誤解されていた83歳の方からご相談を受けたことがありました。

包括申請をご希望でしたが、安全の観点から「凶器に変わります。猛勉猛練された後に」と、不遜にも厳しい諫言をいたしました。

結果として、包括申請は辞退されましたが、その方の判断は「ご立派でした」と心から感じています。

「登録」と「許可」の大きな違い

まず、ドローンの運用における「機体登録」と「飛行許可」の違いを明確に理解することが重要です。

  • 機体登録
    2022年6月20日から義務化された制度です。重量100g以上のドローンは、その飛行方法や場所にかかわらず、必ず所有者・使用者の情報を国に登録しなければなりません。これは、ドローンを識別し、事故発生時の所有者特定を迅速に行うためのものです。自動車でいうナンバープレートのような役割を果たします。
  • 飛行許可・承認
    特定の空域や飛行方法でドローンを飛行させる場合に、国土交通大臣から事前に受ける「行為許可」です。例えば、人口集中地区(DID)、夜間、目視外、人や物件から30m未満の距離、高度150m以上といった「特定飛行」を行う際には、この許可が必須となります。

つまり、機体登録はドローンを「所有・使用する権利」に関するものであり、飛行許可はドローンを「特定の場所・方法で飛行させる権利」に関するものです。

機体登録だけを済ませても、これらの「特定飛行」を行うことはできません。

ドローンは「凶器」に変わり得る

「機体登録だけで飛ばせる」という誤解のまま、安易にドローンを飛行させることは、極めて危険です。

なぜなら、ドローンは、操縦者の知識や技能が不足していれば、「凶器」に変わり得る潜在的な危険性を秘めているからです。

  • 人身事故のリスク
    制御を失ったドローンが人に衝突すれば、重傷を負わせる可能性があり、最悪の場合、人命に関わる事故につながることもあります。
  • 財物損壊のリスク
    建物や車、送電線などの物件に衝突し、損害を与える可能性があります。
  • 法的責任
    無許可飛行や安全対策の不備による事故は、航空法違反(罰則:懲役または罰金)に加え、民事上の損害賠償責任も発生します。

ドローンは「小さな航空機」であり、その運航には、航空機を操縦するのと同じくらいの責任が伴うという認識が必要です。

「猛勉猛練」の必要性

ドローンを安全かつ適法に操縦するためには、決して楽な道はありません。

「猛勉猛練」という言葉に込められているのは、ドローンの潜在的危険性を理解し、それを制御するための広範な知識と高度な技能の習得です。

  • 座学の重要性
    航空法、電波法、気象学、航空力学、機体構造、リスクアセスメント、安全管理など、ドローンを取り巻く多岐にわたる知識を体系的に学ぶ必要があります。
  • 実技の反復練習
    基本的な離着陸、ホバリング、移動といった操縦技術はもちろん、緊急時の対応、強風下での操縦、目視外飛行のシミュレーションなど、様々な状況を想定した実践的な訓練を積み重ねる必要があります。

ドローンスクールでの体系的な学習や、経験豊富な指導者による訓練を受けることは、安全な操縦者となるための最も効率的かつ確実な方法です。

高齢操縦者の適性
ドローンを操縦する上で、年齢制限はありません。しかし、加齢に伴う身体的・認知的な能力の変化(視力、聴力、反射神経、判断力など)は避けられない現実です。安全を最優先するためには、ご自身の身体能力を冷静に判断し、無理のない範囲での飛行計画を立てること、そして必要であれば定期的な身体能力チェックや専門医の意見を仰ぐことも、真剣に検討すべきです。

専門家として「諫言」したい

お客様の希望を叶えることが行政書士の使命ですが、安全確保のためには時に厳しい忠言も必要となります。

私の「不遜にも諫言」という言葉は、まさにその責任感から出たものです。

「ほろ苦い出来事ではありましたが、ご立派でした」という結びの言葉は、その方が安全を最優先し、包括申請を辞退するという、非常に賢明な判断を下されたことへの敬意を表したつもりです。

まとめ

ドローンの「機体登録」は義務ですが、それだけで自由に飛ばせるわけではありません。

特定の空域や方法で飛行するには「飛行許可」が必須であり、その背後にはドローンが「凶器」に変わり得る潜在的危険性が存在します。

安全なドローン運航のためには、法令を正しく理解し、知識と技能を習得するための「猛勉猛練」が不可欠です。

特に高齢の操縦者においては、自身の身体的・認知的な適性を冷静に判断し、決して無理のない範囲で、安全を最優先する姿勢が求められます。

我々ドローン関係者は、プロフェッショナルとして、安全確保のためには時に厳しい忠言も辞さない覚悟を持ち、法令遵守と高い安全意識を徹底することが、事故を防ぎ、ドローンが社会に広く受け入れられる未来を築くための鍵となることを強く訴えていきます。

申請事例&ブログ一覧はこちら

行政書士矢野法務事務所は「個別申請を専門とする事務所」です。

全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。

 

【免責事項】
○当サイトのコンテンツや情報において可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、 誤情報が入り込んだり古くなったりすることもあり必ずしもその内容の正確性および完全性を保証するものではございません。当該情報に基づいて被ったいかなる損害について、一切責任を負うものではございませんのであらかじめご了承ください。
○当サイトから移動された先のホームページは、当サイトが管理、運営するものではございません。移動先サイトで提供される情報の真偽、サービス等につきましても一切の責任も負いませんのでご了承ください。なお、予告なしに内容が変更または廃止される場合がございます。