ドローン改造申請の壁を突破する実務ガイド:矢野事務所

ドローン改造申請の壁を突破する実務ガイド

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。

ドローンの「改造」とは何か?

ドローンの技術は日進月歩で進化し、用途に合わせて様々なカスタマイズや機能追加が行われています。

しかし、ドローンに手を加える「改造」は、航空法上の厳しいルールに則って行わなければなりません。

なぜなら、改造によって機体の安全性や飛行性能が変化し、予期せぬ事故につながる可能性があるからです。

ここで言う「改造」とは、機体の重量、重心、空力特性、飛行安定性などに影響を与える可能性のある変更は、すべて「改造」と見なされる可能性があります。

例えば、新たなセンサーの追加、バッテリー容量の変更、プロペラの大型化、あるいは特定のペイロード(積載物)を搭載するためのアタッチメントの装着などがこれに該当します。

これらの改造を行ったドローンで特定飛行を行う場合、国土交通大臣の許可・承認が「再度」必要となるケースがほとんどです。

つまり、改造前の許可がそのまま適用されるわけではない、という点に注意が必要です。

なぜ改造申請が必要なのか?

改造によって機体の性能や特性が変わることは、以下のようなリスクを生じさせるといわれます。

  • 飛行性能の変化
    改造により、本来の飛行安定性が損なわれたり、バッテリー消費が増加して飛行時間が短縮されたりする可能性があります。
  • 安全性の低下
    部品の強度不足、重心のずれ、プロペラ不適合等が、飛行中の破損や墜落につながるリスクを高めます。
  • 周囲への影響
    改造によって騒音が増大したり、落下物の危険性が増したりするなど、周囲の環境や人々に悪影響を及ぼす可能性もあります。

これらのリスクを未然に防ぎ、安全なドローン運用を保証するために、改造後の機体が航空法の安全基準を満たしているかを改めて確認する「改造申請」が求められます。

改造申請の実務:申請書の書き方と審査のポイント

申請書には改造内容とその影響を詳細に記載し安全性が確保されていることを明確に示す必要があります。

申請書に記載すべき主な項目

改造申請においては以下の項目が重要です。

これらの情報を具体的に、かつ正確に記述することが、審査をスムーズに進めるポイントとなります。

  • 用途目的
    改造後のドローンをどのような目的で使用するのかを明確に記載します。
    例】「高精度な点検作業のため、特定の熱画像カメラを搭載する。」「長距離飛行のため、補助バッテリーシステムを装着する。」
  • 製品名・製造者
    改造によって追加または変更される部品や装置の製品名と製造者名を記載します。
    例】「〇〇社製サーマルカメラ『モデル名X』」「△△社製拡張バッテリーパック『タイプY』」
  • 材質
    追加・変更される部品の主な材質(例:アルミニウム合金、カーボンファイバー、樹脂等)を記載します。
  • 高・幅・奥行
    改造によって機体の外形寸法がどのように変化するかを、具体的な数値(例:高さが5cm増加、幅が2cm拡大など)で示します。改造前後の比較があるとさらに分かりやすいでしょう。
  • 装着法
    改造部品が機体にどのように装着されるのかを詳細に説明します。
    例】「機体下部に専用ブラケットを介してボルト固定」「既存のバッテリーコンパートメントに専用アダプターで接続」など。必要に応じて、固定部の強度計算書や図面を添付することもあります。
  • 取外し可否
    改造部品が容易に取外し可能かどうかを記載します。取外し可能な場合はその方法も簡潔に説明します。
    例】「六角レンチでボルトを緩めることで取り外し可能」
  • 飛行への影響
    最も重要な項目の一つです。改造が機体の飛行性能や安全性にどのような影響を与えるかを具体的に記載し、問題がないことを示します。
    例】「ペイロード増加に伴い、最大離陸重量が〇g増加するが、モーター出力に十分な余裕があることを試験データで確認済み。」「重心位置がわずかに下方へ移動するが、飛行安定性に影響がないことを検証済み。」「バッテリー容量増加により飛行時間が〇分延長するが、機体温度上昇は許容範囲内である。」

審査におけるポイントと準備

改造申請の審査では、特に以下の点がチェックされます。

  1. 安全性確保
    改造によって機体の構造的強度、バッテリーの安全性、電波の干渉などが損なわれないか。
  2. 飛行性能への影響
    改造によって飛行安定性、制御性、飛行時間、最大離陸重量などが適切に維持されているか。
  3. 技術基準適合性
    改造後の機体が、電波法やその他関連法令の技術基準に適合しているか。

これらの点をクリアするために、申請時には以下のような資料の提出を求められることがあります。

  • 改造部分の図面や写真
    改造箇所の詳細が分かるように、図面や複数の角度からの写真を用意します。
  • 重量・重心計算書
    改造による重量増加や重心位置の移動を正確に計算し、機体の安定性に問題がないことを示します。
  • 飛行試験データ
    改造後の機体を実際に飛行させ、安定性、制御性、異常の有無などを確認した飛行試験のデータや記録。
  • メーカーの見解書
    改造部品のメーカーから、当該部品をドローンに装着した場合の安全性や適合性に関する見解書が得られる場合は、信頼性が高まります。

LTEモジュール搭載と機体登録のケース

先日、LTEモジュールをドローンに搭載する改造申請を行った際、この申請は「飛行許可申請」の中で行われ、別途の「機体登録」は不要でした。

これは多くの方が疑問に思う点かもしれません。

LTEモジュールは通信機能を追加するもので、機体の主要な構造や飛行性能そのものを大きく変えるものではないため、既存の機体登録情報(機体識別番号など)に変更が生じるわけではありません。

しかし、通信方式の変更や機体重量・重心のわずかな変化は発生するため、飛行の安全に影響を与える可能性のある「改造」とみなされ、飛行許可申請の際にその旨を申告し、安全性が確保されていることを示す必要があったということです。

今後、LTE通信を利用したドローンの長距離・目視外飛行が増加すれば、このようなLTEモジュール搭載のための改造申請も一般的になっていくでしょう。

その際には、電波法の観点からの適合性もより厳しく問われる可能性があります。

改造を検討する方

ドローンの改造は、可能性を広げる一方で、適切な手続きを踏まなければ重大なリスクを伴います。

ご自身のドローンに何らかの改造を施す場合は、まずそれが航空法上の「改造」に該当するかどうかを判断し、必要であれば専門家である行政書士に相談してください。

行政書士は、改造申請に必要な書類作成のサポート、法規制の解釈、審査のポイント、安全管理体制の構築に至るまで、あなたのドローン運用を多角的にサポート致します。

行政書士矢野法務事務所は「高難度の申請を専門とする事務所」です。

全国の運航事業者やテレビ局、映像会社から「スポーツ中継・高高度・花火大会・空港周辺・ドローンショー・レベル3.5飛行、レベル3飛行、その実証実験等々」包括申請では飛ばせない様々な個別案件の申請をお引き受けしています。期限の決まっている飛行などは特に当事務所にご依頼頂き確実な飛行許可申請をなさってください。

 

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