ドローン「自己責任飛行」時代の説明責任:矢野事務所

ドローン「自己責任飛行」時代の説明責任

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。

ドローン産業が成熟するにつれて、その運用を支える安全管理の仕組みも変化しています。

特に、許可・承認手続きの簡素化が進む中で「自己責任飛行」という概念が業界の背骨となっていくことは間違いありません。

この「自己責任飛行」には、単に自らの行動に責任を持つだけでなく、その「説明責任」という重要な含意が込められていると私は感じています。

かつては、国土交通大臣からの飛行許可書という「錦の御旗」が、ドローンの飛行の適法性を保証するものでした。

しかし、許可不要となる飛行が増える現代では、その「錦の御旗」は無くなり、運航者は自らの責任で「この飛行の適法性」を説明する立場となります。

これは、申請業務だけでなく、日々の運用における意識を根本から変えるべき、大きな変化です。

「自己責任飛行」が問うもの

ドローンの「自己責任飛行」とは、型式認証を受けた機体と国家資格を持つ操縦者の組み合わせなど、特定の条件を満たすことで、一部の特定飛行において事前の許可・承認が不要となる運用形態を指します。

行政による事前の審査が省略される分、運航者自身が安全確保の全責任を負う、という考え方がその根底にあります。

この構図の背景には、国が「高品位な機体と運航者であれば、個別の審査をせずとも自らの責任で安全を確保できるはず」という信頼を置いていることがあります。

しかし、この信頼は、運航者がその信頼に応えるだけの「説明責任」を果たせるかどうかにかかっています。

「錦の御旗」なき説明責任

従来の飛行許可制度では、許可書という公的な書類が、その飛行が法令に適合していることの主な証明でした。

しかし、許可不要となる飛行が増えることで、その「錦の御旗」はなくなります。

代わりに求められるのが、運航者自身の「この飛行の適法性」を説明する能力です。

万が一、警察や関係機関からの問い合わせがあった場合、あるいは事故やトラブルが発生した場合に、以下の点を明確に説明できなければなりません。

  • なぜ、この飛行は許可が不要なのか。
  • 航空法上の安全基準をどのように満たしているのか。
  • 飛行マニュアルに則って、どのように安全を確保したのか。
  • 具体的な立入管理措置や緊急時対応はどうしていたのか。

これらの説明を、根拠となる資料(飛行マニュアル、点検記録、操縦者の技能証明など)を提示しながら、的確に行う責任が運航者に課せられるのです。

審査案件における「攻め」の姿勢

審査が必要な案件であっても、「さあ漏れがあったらどうぞ指摘を」くらいの姿勢が必要かもしれません。

これは、単に許可を得るための受動的な申請ではなく、自らが策定した飛行計画と安全管理体制に絶対的な自信を持ち、審査官からの質問や指摘を積極的に受け止めるという、プロフェッショナルとしての「攻め」の姿勢を示すという意味です。

この姿勢は、運航者が自身の安全管理体制に徹底的に自信を持っていることの表れであり、審査官との対話を通じて、より強固な信頼関係を築くことに繋がります。

審査のプロセスは、行政からのチェックであると同時に、運航者自身の安全管理能力を再確認し、さらに高める機会でもあるのです。

究極は自己監査

そうなれば、ドローン運航事業者に求められる自己管理能力の究極形は「自己監査」だと思います。

これは、単に法律を守るだけでなく、自らの組織や飛行運用が、第三者(例えば監査団体や行政)から監査を受けたとしても、一切の不備がないと胸を張って言えるレベルにまで、安全管理体制を構築・維持するということです。

「自己責任飛行」が主流となる時代において、この「監査ができるレベル」の自己管理能力は、運航事業者の競争力と信頼性を大きく左右する要素となるでしょう。

飛行マニュアルの作成・運用はもちろん、リスクアセスメントの徹底、スタッフ教育、機体整備記録の厳格な管理など、あらゆる面でプロフェッショナルとしての徹底が求められます。

まとめ

ドローン産業の「自己責任飛行」への移行は、運航者にとって利便性をもたらす一方で、「説明責任」という新たな、そして重い責務を課します。

飛行許可という「錦の御旗」がなくなる中で、運航者は自らの責任で飛行の適法性を説明し安全性を証明する立場となります。

審査案件においても、自らの安全管理体制に絶対的な自信を持ち、「どうぞ指摘を」という「攻め」の姿勢で臨むことが求められます。

そして、最終的には、自らの運用が「監査ができるレベル」に達するまで、安全管理能力を高めていくことが、ドローン事業者の「高モラル」と「プロフェッショナル」としての真価を示すことになるでしょう。

この「説明責任」を果たし、高い自己管理能力を持つことが、ドローンが社会に広く受け入れられ、安全に空を飛び交う未来を築くための鍵となります。

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